生誕80年

昨日のブログでは、江戸川乱歩の作品が歌舞伎化されるというニュースを書きましたが、今度は、手塚治虫の漫画「ブラック・ジャック」が、狂言作品として舞台化されるというニュースが昨日流れました。それは、この3日が手塚の生誕80年だったからです。企画した兵庫県宝塚市文化振興財団は「漫画と狂言のコラボレーションは全国初。『新たな古典』を発信したい」と意気込んでいます。なぜブラック・ジャックを選んだかというと、演出・出演の大蔵流狂言方、善竹隆司さんは、「最近、家族関係が社会問題や事件になって世間をにぎわせていると感じます。手塚さんが描いた普遍的な親子愛を、ヒューマンドラマである狂言で表現したい」とコメントしています。
 新聞報道によると、「ブラック・ジャック」は、無免許だが天才的な技術を持つ外科医が活躍する人間ドラマですが、今回は「勘当息子」という話を題材にするようです。寒村で誕生日を迎えた子だくさんの母を訪ねたのは結局、勘当した息子だった??という親子愛、を軸にした筋書きのようです。
 JR高田馬場駅のホームに下りると流れる曲が「鉄腕アトム」で、早稲田口を出るとのガード下に、鉄腕アトムやリボンの騎士など、手塚治虫さんの人気キャラクターを勢ぞろいさせた大型壁画が目に入ります。コンクリートむき出しの暗い印象を変えようと、地域住民や商店主でつくった地域会議が、05年から話し合いを続け、今年の4月に設置にこぎつけたものです。それは、ここ高田馬場は「アトム生誕の地」とされ、手塚プロダクションが馬場に本社を置いているからです。
 手塚作品の狂言かだけでなく、手塚治虫の生誕80年を記念して、様々な企画がされています。まず、初期作品の復刻やテーマ別の傑作選が相次いで出版されます。異形の宇宙人たちが集う宇宙空港や新型爆弾で滅びかけた地球を舞台に起こる波乱と冒険のドラマである「おもしろブック版ライオンブックス」(1、2巻、小学館発売)があります。また、初めて本格的にマンガにSFを持ち込んだといわれる1956、57年の月刊少年誌の雑誌付録12冊をカラーページやB5判の迫力そのままに復元されます。また、珍しい試みとして、代表作の最終回だけを「少年マンガ編」「青年マンガ編」の2冊に分け集めた「手塚治虫WORLD」(ゴマブックス)もあります。金の星社は絶版になった「愛蔵版手塚治虫全集」(全10巻)を復刊。このほか、小学館では、「アドルフに告ぐ」「きりひと讃歌」など大人向けの長編代表作3作を「手塚治虫の収穫」と題して刊行中のほか、小学館クリエイティブでは昭和22年発刊の長編漫画「新宝島」を来年2月末にも復刻する予定だそうです。
 手塚さんが、平成元年に60歳で亡くなるまで700以上の作品を描いていますので、まだまだ記念発刊が続きそうです。インパクトがあるシーンを1ページ全体を使って大きく表現したり、「シーン」「シャキーン」といった擬音を登場させたりするなど、数々の画期的な手法を生み出した手塚作品について、手塚プロダクションのライセンスビジネス担当部長、内藤出さんは「手塚作品は映画の手法も採り入れ、現代の日本漫画の『文法』を作った。手塚さんがいなければ、日本の漫画文化がここまで世界に普及することはなかったでしょう。世界中の人に読まれることで、平和に少しでも貢献できれば」と話しています。
 医学博士でもあった手塚さんが訴えてきた命の尊厳と平和の大切さは、いつの時代でも考えなければいけないテーマでしょう。