以前ブログで書いたナウマンゾウの発見は、野尻湖畔の旅館の主人が、野尻湖底でナウマンゾウの臼歯を発見したことから始まりました。その形からして「湯たんぼ」だと思って拾ったのですが、それにしては変だと思って、地元の野尻湖小学校の校長にみてもらったところ、ゾウの歯ではないかといわれ、とっておいたのが発端でした。草食動物であるゾウにとって、ものをすりつぶす臼歯の役目はとても重要です。ですから、臼歯は次から次へおくからできてきて、古い歯を前に押し出し、それが落ちていくのです。
現在、人間の体のあらゆる部分も次から次へと入れ替わっていくことがわかってきています。皮膚や髪や爪などは入れ替わっていくことを実感することができますが、硬い骨や歯も入れ替わっているそうです。もちろん、歯は、1度入れ替わることは誰でも知っていますが、そうではなく、一生絶え間なく入れ替わっているのです。それは、その中身です。体のすべての分子は食べ物の分子と絶え間なく入れ替わり、全体として流れているそうです。これが「動的平衡」というようですが、岩波ブックレット「生命と食」(福岡伸一著)の中で説明されています。
すべてのものが入れ替わるために、食が大切なのです。食は、動くときのエネルギーをうみだすことで必要とされ、それに、子どものころは成長するために必要だと思われています。しかし、実は、それだけでなく、「食べ物は体の中に入って、体の一部に変わるけれど、もともとそこにあった分子は分解され、体の外に捨てられた、ということが考えられます。つまり、食べ物の分子は、単にエネルギー源として燃やされるだけでなく、体のすべての材料となって、体の中に溶け込んでいき、それと同時に、体を構成していた分子は、外へ出て行くということです。」(「生命と食」より)
簡単に言うと、へんな食べ物を食べると、すぐに気持ち悪くなるとか、体に変調をきたすだけでなく、次第にそれが体の部分を構成していってしまうのです。ですから、食べたものが消費されなくとも、その食べ物の重さ分だけ体重は増えないのです。飲み込むという作業を、どんな精密機械よりも精密に行う人間の体は、さまざまな部分でも行われているのです。
私の園に毎週来てくれる嘱託医の小児科の先生は、いつもガムをかんでいます。どうしてかと聞いてみると、風邪予防だといいます。これもブログで書きましたが、物をかむことの大切さのひとつに、「唾液の分泌を促進する」ということがあります。唾液の中には身体に有利に働く様々な酵素やホルモンが含まれています。アミラーゼという酵素はデンプンをデキストリンや麦芽糖に分解し消化、吸収を助けます。作用は胃の中でも持続し、胃酸で停止します。そのほかに、細菌の増殖を抑制し、また、直接殺菌する働きを持つ酵素が含まれています。さらに、かむことによって、耳下腺・顎舌腺からホルモンが分泌され、骨や歯の発育を促進し、加齢現象を抑えます。また、人間の記憶力は、ガムを噛む前より、噛んだ後の方が高いことは様々な研究で証明されているそうです。
人間の歯や、あご、そのほか様々なパーツはそれぞれ関連しながらどれも大切なものです。これらを作り、その内部の分子を入れ替える「食」は、新ためて見直されなければいけない大切ことです。

” への5件のコメント

  1. 4年くらい偏った食事をとっていたら体質が変わってしまったとしか思えないくらいよく病気になる時期がありました。これはいけないと思い、そこから食事を大切にするようにしたら、3年くらい経ったころから体調が安定してきました。そのことで、食が体を作っているんだと考えるようになったこともあり、今回の内容はすごく納得できます。人間の体についてはまだまだ分かっていないことがたくさんあるんでしょうが、こういう話を聞くたびに、そのすごさに驚かされます。唾液の働きもすごいですね。いったん体から出てしまえば思わず汚いもの扱いをしていたのを反省しました。

  2.  私は基本的にガムは口の中をスッキリさせたい時や、気分転換に食べますが、まさか風邪の予防で噛むとは思ってもいませんでした。今年も、もうすぐ風邪の時期になると思いますが、今年はマスクとガムを噛んで予防してみようと思います。
     食べた物がそのまま体重になるのでなく、食べたもの全てが体を構成する分子に変わり、そして古くなった分子が体の外に出ている、という流れが、体内で起きていたのですね。食べる事や噛むことは、栄養を取ったり、歯や顎を丈夫にするだけだと思っていましたが、それ以上にもっと重要な役割があるのですね。

  3. 人間の体は6兆個もの細胞でできていると言いますが、、大体6年周期で大きく入れ替わっているという話を本で読んだことがあります。ということは、私は50歳を超えていますので、生まれてからこれまで8回は体のパーツが新しくなっていることになります。車は部品を全部取り換えると違う車になるのに、人間はこれだけ細胞が更新されても「私」という人間には変わりありません。こんな当たり前のことをとても不思議に思います。肉体と心、それをつかさどる何か自分を自分たらしめているもの、生命の「我」のような存在がありそうな気がします。

  4. 福岡伸一さんの「生物と無生物とのあいだで」(講談社現代新書)というよく売れた本に「動的平衡」(dynamic equilibrium)ということが書かれてあり、「絶え間なく入れ替わり、全体として流れている」生命の神秘に驚きを超えて感動すら覚えました。手紙の時候の挨拶に「その後お変わりはありませんか?」という一節がありますが、「動的平衡」の観点から答えると「はい、いつも変わっております。」あるいは「変わらないためにいつも変わっています。」ということになりそうです。摂食及び咀嚼、嚥下の大切さについてブログで知ることができましたが、つまり「変えてはならないもの」(=生、主体性・関係性)を維持するために「私たちは変わる」(=摂食及び人モノ空間という環境)という大基本に則って全てが存在する、ことがわかったような気がします。

  5. 「へんな食べ物を食べると、すぐに気持ち悪くなるとか、体に変調をきたすだけでなく、次第にそれが体の部分を構成していってしまう」と聞いて、自分の体は今どうなっているのかを知りたくなりました。添加物というものを意識していかなくてはいけないと思いながらも、時間を優先させてしまい、簡易的な即席食に頼ってしまうことが多いです。改めて、食を見直さなければいけませんね。

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