そろそろ各地で紅葉情報を聞くようになって来ました。先日の黒姫では、最初に紅葉するのは、「つたうるし」などの蔦系だそうです。「つた」は、木などをつたっていくのでその名が着いたといわれますが、まだ周りが緑のうちに、真っ赤に紅葉するので目立ちます。そして、つた同様、赤く紅葉するものに「楓」があります。楓は、モミジとも呼ばれ、秋に紅葉する葉の代表格です。
「秋の夕日に 照る山もみじ こいもうすいも 数ある中に 松をいろどる かえでやつたは 山のふもとの すそもよう」と歌われるように、楓(かえで)や蔦(つた)は、濃いものや薄いものがあるので、着物のすそ模様のようにきれいです。この楓と蔦の二種類の組み合わせは、秋を表すときによく使われ、伊勢物語の第九段に「宇津の山にいたりて、わが入らむとする道は、いと暗う細きに、蔦、楓はしげり、もの心ぼそく」という中にも書かれてあります。この中の蔦や楓は、きれいというよりも、心細さを感じさせているようです。
紅葉は、もちろん葉の色が赤や黄色に変わる美しさがあるのですが、それだけではなく、それを引き立てる緑が必要です。その緑は、「もみじ」の歌では「松」ですが、そのほかの常緑樹も引き立て役を果たします。尾形光琳や俵屋宗達が同じモチーフで描かれた「槙楓図屏風」では、楓の赤を槙の緑が引き立てています。
もともとこの絵は宗達が描いたものですが、光琳がその絵を模写しました。その一対の絵が今、国立博物館で、尾形光琳生誕350周年記念「大琳派展-継承と変奏-」というイベントで公開されています。この絵画展では、琳派を代表する本阿弥光悦・俵屋宗達・尾形光琳・尾形乾山・酒井抱一・鈴木其一の六人の作品が展示されています。この間の日曜日に行ってきました。
彼ら琳派の特徴のひとつとして、先達の作品に触発され、同じ主題の作品を描いていることがあります。ここでは、「風神雷神図屏風」など、同じ主題の著名作品を同時に対比展示しています。もうひとつ印象的な作品が「槙楓図屏風」です。今回の展示では、この二作品がかぎの手に展示されているので、見比べながら観ることが出来ます。

宗達の絵は、重厚な趣を持っており、奥行きを感じさせます。力強さ、金の綺麗さ、槙の重さ、秋の草花は可憐さ、楓の赤を引き立てる槙の木は、葉だけでなく、その2本の幹も印象的です。

そして光琳の絵のほうは、枝葉を減らし、少し位置をずらして、全体をすっきりさせています。やはり、楓の赤がうまくきわ立つように、槙の緑の濃淡がリズミカルに広がり、奥行きも感じられます。同じものを描いても受ける印象は、ずい分と違ってきます。
槙は、千葉県の県木に指定されていますが、正確に言うと、「イヌマキ」という木で、その名称を単に「マキ」と改められて、そう呼ばれています。街路、公園、庭木など目によくふれる木です。種子は球形に近く、日本名マキは円木(まるき)の略したものといわれています。この木は、雌雄異株で,果実は赤紫色の花托の上に緑色の果実がつき色のコントラストと形が面白く、甘くて食べられます。
よく見る景色も、樹木も絵画を通してみるとまた違って見えてきます。
紅葉を引き立てる緑、当たり前のことですが見落としがちなことですね。月や星がきれいに見えるのも闇の深さがあるからでしょうし、こうした引き立て役の存在の重要性を感じます。それぞれに役割があって、どちらが欠けてもいけないという関係は、周りを見渡すといろいろあります。なんだかどちらも主役のように思えてきますし、やはりバランスが大事なんだろうと思います。
「松をいろどる 楓やつたは 山のふもとの裾模様」という歌詞は日本の古くからの里山の景色ですね。里山、この言葉を聞くだけでもなぜかほっとします。英語ではVillage forestになるのですが、森というよりも雑木林ですね。昔の暮らしの中では、この里山はとても大切なところでした。そこから人々は、薪を集めて焚き木にしたり、落ち葉は堆肥にしたりと生活には欠かせない存在だったんですね。ところが、近代化がすすんで、人々は里山を捨てたり、あるいは造成してニュータウンにしてしまいました。今、熊やイノシシや猿が人の住む所まで現れるようになったのは、動物たちがそれに抗議するためではないでしょうか。
確かに全国的に紅葉が始まってきましたね。近場の公園の木を見れば紅葉が始まってきたと感じるようになりました。紅葉が綺麗に見れるのは緑の植物があるからだっとは分かりませんでした。純粋に赤や黄色が混じっているものだと思っていたので、まさか緑が紅葉を引き立てていたとは予想外です。それは、よく見る風景もそういった現象がよくあるかもしれませんね。
写真の絵のように、同じ絵でも違った印象を受けたりするのは人によって感じるものが違うし、色使いも異なります。そういう自然の素晴らしさを保育で伝えてみたいと思いました。
東京国立博物館の「大琳派展」にもう行かれたのですね。私も是非観たいと思っている美術展です。なるだけ混まない頃合を見計らいたいのですが、おそらく閉館まで混んでいるのでしょうね。本阿弥光悦・俵屋宗達・尾形光琳・尾形乾山・酒井抱一・鈴木其一、いずれの作品も大好きです。西洋絵画、特に印象派の作品から絵画鑑賞の世界に足を踏み入れてきましたが、ここに来て日本人画家による絵画作品の数々にも惹かれます。宗達、光琳それぞれの「槙楓図屏風」が比較しながら観れるというのもなかなかすばらしい。一刻も早く観たくなりました。先日郷里に行ってきた家内によると北国はもう紅葉真っ盛り、ということでした。