音風景

アイヌの人たちが「神々の遊ぶ庭」と呼んだ大雪山には、昨日紹介したような貴重な鳥類が生息しています。それは、険しいということで手つかずの自然がまだ残っているということです。その主峰旭岳の山麓には、いくつかの自然探勝路が設定されています。今回はそこを歩くことができませんでしたが、コマクサコース、見晴台コース、クマゲラコース、ナナカマドコースの4つの自然探勝路があります。ここを散策すると、氷河期から生息するナキウサギの声や、コマドリ、ミソサザイ、ルリビタキなど多くの野鳥の声が聞こえるそうです。自然は、見て楽しむだけでなく、音で楽しむことも出来ます。
各地には、様々な景勝地や名所などがありますが、自然と同じように、それらの地では、五感を刺激するものがあります。そのひとつが、音を聞いて楽しむ名所が各地にはあります。大雪山は貴重な生き物の鳴き声を楽しむことができます。また、先週末の最初に訪れた札幌では、時計台の鐘の音を聞くことができました。
tokeidai.JPG
この時計台は、明治11年札幌農学校(現北海道大学)演武場として建設され、以来百年以上の間、札幌のシンボルとして時を刻み、鐘の音を響かせています。石原裕次郎の歌ではありませんが「時計台の下で会って、私の恋は始まりました」というようなその外観は、洋風建築で、札幌のポスターなどにもよく取り上げられています。しかし、意外とがっかりする建物だといわれています。それは、その建物のシンボルの時計塔の背景が、真っ青な空ではなく、味わいのないビルだからです。同じように、時計台の音も、昔は、4キロ四方にわたって鳴り響いたといわれていますが、今は、ビルの間で、ほとんど周辺にだけしか聞こえなくなってしまっています。それでも、歴史的文化的音色を奏でています。
そのほかにも音を楽しむ名所旧跡があります。そんな場所が「残したい日本の音風景100選」ということで、環境省環境管理局で平成8年に選定されています。この目的は、「全国各地で人々が地域のシンボルとして大切にし、将来に残しておきたいと願っている音の聞こえる環境(音風景)を広く公募し、音環境を保全する上で特に意義があると認められたものを認定」とあります。大雪山旭岳、札幌時計台も百選に入っています。
週末訪れた八戸にもこれに選ばれた場所があり、講演の合間に訪れてみました。
kabusima.JPG
そこは、「蕪島」です。この蕪島は、島と陸地との間は現在、埋め立てられて陸続きになっており、その西側には東北有数の機能を有する八戸港があり、イカ釣り漁船が所狭しと停泊しています。この島でどんな音がするかというと、この島はウミネコの一大繁殖地で、毎年2月下旬ごろに南方から飛来し始め、島に蕪の花が咲くころは、数万羽が島にやって来て産卵します。そして成長したヒナが巣立つ7月ごろまで島と港の上空は、「ミャー、ミャー」という猫に似た鳴き声と、太平洋から寄せる波音が共鳴し合う漁業の町の音風景なのです。秋に入った今は、ほとんどのウミネコは南へ旅立ってしまい、波が打ち寄せる音しかしませんが、それでも数羽、越冬するウミネコが岩や屋根に羽を休めていました。その泣き声は、騒がしい季節から、さびしい秋を感じる声でした。
umineko.jpg
 音の聞こえる環境は、様々な観点から選ばれています。虫の音、植物の音だけでなく、祭りの音、生活の音、産業の音、交通の音などです。その地方ならではの音を楽しむのも一興かもしれません。

音風景” への4件のコメント

  1. 残したい日本の音風景100選のHPを見て各地に大切にされている音があることを知りました。音風景という表現がいいですね。その音を聞きながらみんながいろんなことを考え感じているんでしょうね。音風景100選のようなものではありませんが、音といえば必ず思い出す音があります。子どもの頃に祖母の家の近くを走っていた電車の音ですが、その音を思い出すだけで心が和みます。不思議と今でも鮮明に思い出すことができます。音って不思議ですね。

  2.  「残したい日本の音風景100選」に選ばれている大雪山の貴重な生き物の鳴き声、時計台の鐘の音、そしてさらには青森の八戸で選ばれた場所も訪れたとは本当に不思議ですね。
     その地方のシンボルとなる音を将来に残していきたいというのは素敵ですね。ですが北海道の時計台の音も4キロ四方まで響いていた音も今ではビルに挟まれほとんど聞こえなくなっているのは、せっかく選ばれているのに、なんだか残念です。
     音の環境という言葉なんだか新鮮に聞こえます。東京は人も多いし、車も多く色々な音が入りみだっていて一見うるさい音と印象があるかもしれませんが、その音は東京ならではの音なのかもしれませんね。そう考えれば、見方が変わったような気がします。

  3. 「札幌時計台」は非常に有名な建物です。私自身も見たことはありますが、「時計台の鐘の音」は聞いたことがない、というよりそもそも時を知らせる時計台であるという認識が私の中に存在しておりませんでした。どんな音色の「鐘の音」なのかとても興味があります。いつか機会があったら是非聴いてみたいものです。「残したい日本の音風景100選」についても今回のブログで知りました。私もあいやまさんのようにHPにアクセスしていろいろと音風景100選について知識を深めようと思います。八戸の「蕪島」は観光地として有名ですね。うみねこの「ミャーミャー」という声は懐かしいですね。私にとっては「原音風景」のひとつです。

  4. 確か、NHKのラジオ番組に「音の風景」~5分間のサウンドトリップというミニ番組があるのを思い出しました。HPで調べてみると、1985年にスタートして20年を超える歴史があるそうです。さすが放送のプロだけに音の収録には特にこだわって作られているようです。FMで何度か聞いたことがありますが、音だけでもその土地の情景が目に浮かんでくるから不思議です。昨年、八戸の蕪島のウミネコも紹介されたようです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">