今は、どこに行っても同じような料理が食べられますが、逆に、各地にその地方ならでは料理があります。それは、珍しい食べ物であったり、同じものでも製法が違ったり、味付けが違ったりします。それは、その地方で取れる食材の違いによるものであったり、その地方の気候によるものであったりします。ですから、そのような料理は、その地方で食べるのが本当は一番いいのでしょう。
そういう意味で、先日訪れた沖縄には独特の料理があります。ひとつは、ソウキそばに代表されるような豚肉料理です。それから、今年園でも栽培をしたゴーヤチャンプルに代表されるゴーヤを使った料理です。
そして、余り目立ちませんが、独特の食感の豆腐料理があります。沖縄では、豆腐は料理に欠かせない食材であり、消費量も全国一といわれています。冠婚葬祭の行事には必ず登場しますし、庶民料理の代表であるチャンプルやンブシー、揚げ豆腐、汁物の具やゆし豆腐、白和えなどがありますが、有名なものに「スクガラス豆腐」という酒の肴があります。カラスとは塩という意味で、つまりスク(アイゴの稚魚)の塩漬けを豆腐に載せたものです。そして、「ジーマーミー豆腐」というピーナッツ豆腐があります。沖縄では、落花生のことを「ジーマーミー」といいます。普通の豆腐は、大豆で作られますが、このジーマーミー豆腐は、落花生を使って作られます。
あと、私をとりこにしたものに「豆腐よう」があります。これは、琉球伝統の味で、和製チーズとも言われており、チーズとウニをあわせたような風味を持ち、口の中で溶けます。この豆腐は、時間をかけてゆっくりと泡盛・米麹などで漬け、熟成発酵されて作られます。
これらに使用される豆腐は、「島豆腐」といわれ、他の豆腐と決定的に違うのは、多くの豆腐が大豆を挽いた後、加熱してろ過する「煮とり製法」ですが、この豆腐は、「生搾り製法」で、水に浸した大豆を挽いた後、ろ過して豆乳を作ります。その結果、濃厚でどっしり重く栄養価の高い豆腐となります。タンパク質は本土の豆腐の1.3倍、また、リン、鉄、ナトリウム、カリウム、ビタミンB1、B2も多く含まれ、栄養が濃縮された食材です。
この島豆腐のことがANAの今月の機内誌に特集されています。その記事の中に民俗学者の柳田國男が、「海南小記」で書いた文が掲載されています。「野武士の如き剛健なる豆腐である。華麗せんさいなる都の絹ごしどもをして面をふせ気萎えしむべき豆腐である」
また、食通で知られる琉球王朝最後の王である尚泰の4男である尚順男爵が「豆腐の礼賛」という中で、「真の美味珍味なるものは、決して遠い山や海ばかりから出るものではなく、一番安価にして何よりも手に入れやすく、山間僻地、而もシケでも降りでも構わず、大抵の処にては間違いなく得られるものに最上の珍味があるのである。夫は貴賎となく吾人の毎日程も口にする豆腐である」と書かれていたのが紹介されています。
豆腐好きといえば、大村益次郎が有名ですが、彼は、酒の肴も豆腐、食事のおかずも豆腐、自宅に招待したお客にも豆腐というほどだったそうです。豆腐で接待された客に対して、「豆腐はタップリ滋養を含んでいる。豆腐さえ食べていれば、栄養的に問題はない。豆腐が喰えぬとは贅沢の極みである」と説教したそうです。
癌・高血圧・動脈硬化・心臓病・糖尿病・成人病・肥満などの発症を抑制したり、回復する効果、ボケ防止、また健康の維持に有効な成分が含まれ、長寿食といわれている豆腐は、侮れない存在です。
豆腐ようは苦手ですが豆腐は大好きです。大豆の甘みがしっかり感じられる豆腐に出会ったときには嬉しくなります。豆腐屋さんに豆腐を買いに行っていた頃が懐かしいです。
その土地の気候や風土が生んだ食べ物や味付けは、その土地で食べるのが一番だというのは同感です。旅先で食べておいしかったものを家で食べてもなんとなく物足りなく感じたりします。食べ物のおいしさはその味だけではないですね。奥の深さを感じます。
沖縄は日本一の長寿県で、100歳以上の高齢者の割合は10万人に55人で世界最高といわれています。なかでも青い海に面し緑豊かな大宜味村は、1987年に健康な高齢者の割合が日本でもっとも高い地域として「長寿の村日本一」を宣言。世界保健機構も「世界一の長寿地域」と認定したそうです。この村では、人口3500人の3分の1が65歳以上の高齢者。100歳以上も11人。長期入院している高齢者は一人もいない。老人ホームで生活する人はたったの50人で、残りの方は一人暮らしか家族の同居だそうです。沖縄看護大学のクレイグ博士によると、沖縄の人の長寿の秘訣は、「バランスのとれた生活」つまり、食事、運動、精神状態、社会環境の4つの要素が備わった生活ができているからだそうです。特に、食事はブログで紹介された豆腐料理をはじめ、野菜や穀物が中心で塩分控えめと理想的です。「ナンクルナイサー」というのは、「なんでもないよー」という沖縄方言ですが、楽天的でプラス志向な県民性も長生きにつながっているそうです。
中華料理が好きなので「豆腐」と聞けば、もちろん麻婆豆腐を連想します。他にも豆腐はお味噌汁やこれからの時期だと鍋料理など色々な料理法がありますね。
沖縄で豆腐が摂取量が一位とは驚きです。イメージでは豚肉を使った料理が多いので豚肉が多いと思っていましたがそうでもないのですね。その沖縄の豆腐料理のなかで藤森先生がはまった「豆腐よう」を食べてみたいです。色々な土地によって普段食べている物も味付けや料理法が全く違います。今回のブログの豆腐一つにしても日本だけで色々ありますし、世界中で見るとたくさん種類があると思います。こうして食品の一つから日本から世界に視野が広がるとは面白いですね。
私が生まれ育った家には複数の家業がありました。そのうちの一つが「豆腐製造業」です。実はこの「製造業」は祖母の代から始まり母の代で終焉を迎えます。つまり祖母も母も基本的には一人で携わり「豆腐配達」などは父の家業「大工」に弟子入りしていた叔父や「お兄さん」たちが行っていました。「豆腐」作りはいろいろな副産物を生み出します。豆乳やおからです。無駄なところがひとつもありません。そして、本体も副産物もそれぞれ栄養豊富。実にすばらしい食べ物を祖母や母が造っていたのだと今更ながら誇らしく思います。もっとも実家にいたころはほぼ毎日食卓に「お豆腐」が出てきました。父と私は、うんざり、という贅沢感を味わっていました。私の家内は「豆腐料理」大好きです。