園の中の3、4、5歳児の保育室内に「伝承遊びゾーン」があります。そこには、子どもが子ども集団の中で古くから受け継いできた遊び道具が置いてあります。なぜ、伝承遊びの道具が置いてあるのかというと、伝承遊びといわれる遊びは、個人的に楽しむものや一人二人と徐々に仲間を増やして楽しむもの、大勢でいっしょに楽しむものなど様々な遊びがありますが、そのどれもが、遊びながら他の子どもとの関わり、他者との関係性を構築することによって、他者への理解、社会的ルール、コミュニケーションの能力などが育っていくことで、社会性が養われていきます。また、数的概念や科学的体験が入っていたり、問題解決能力や洞察力、忍耐力などが養われていきます。
そのほかにも伝承遊びのよさにはこんなことがあると言われています。まず、手や足や身体を直接使って楽しめるものが多くあります。いわば、手足を使うことによって、脳が刺激されるのです。つぎに、歌やリズムに合わせて遊ぶものが多く、リズムの楽しさを味わうだけでなく、遊んでいる子の周りのムードも楽しくなり、周りの子を仲間に入れていく効果があります。次に、遊びがとてもシンプルな物が多く、しかも、遊びの技術が次第に高度に発展していくものが多いので、同じ遊びを長く続けていても飽きることなく、チャレンジする楽しみがあります。さらに、伝承遊びというのは、長いあいだ子どもの世界で受け入れられて来たために、子どもの興味関心、発達にマッチしたものであり、また、危険性などについても長い間の実証があるので安心です。
園にある伝承遊びは主に室内遊びが多いのですが、「あやとり、折り紙、だるまおとし、糸でんわ、お手玉、はねつき、おはじき、こままわし、めんこ、けん玉」などが置かれています。
これらので伝承遊びは古くから日本で遊ばれているものなので、よく外国の幼児施設への訪問の際のお土産にする場合が多くあります。しかし、実際はその遊びのルーツは外国のものであることのほうが多いようです。今週末に訪れた長崎の宿に「長崎こと初めて」という展示が廊下にされており、その中に「けん玉」がありました。
けん玉は、江戸時代中期にシルクロードを通って、唯一、外国に開かれていた長崎に入ってきたとされています。もともと、ワイングラスと毛糸球やシカの角と木製の玉など2つのものを糸または紐で結び、一方を引き上げたり振ったりして、もう一方に乗せるとか穴を突起物にはめるような玩具は昔から世界中に存在していました。日本にけん玉が入ってきたときには、鹿の角に穴をあけた玉を結びつけた形のけん玉でした。しかし、このけん玉は、子どもの遊びではありませんでした。大人の酒の席での遊びでした。もし失敗したら酒を飲まされたという遊びだったようです。
それが、子どもの教育玩具となったの は明治9年に文部省発行の児童教育解説書に「盃および玉」という題で発表されてからです。そして、大正7年、従来のけん先と皿1つで構成された「けんに鼓」をヒントに、皿胴を組み合わせた「日月ボール」(または「明治ボール」)を広島県の江草濱次さんという人が発明し、現在のけん玉の形がほぼ完成しました。そして、1977年「けん玉ルネッサンス」といわれる爆発的な大流行となったのです。
新しいものに飛びつきやすいですが、長いあいだ人気のあるものにはそれなりの理由があるものです。
積み木のところでも書かれていましたが、子どもの力に応じて遊びが発展していくおもちゃはいいですね。子どもが長い期間熱中できる遊びは関わりも自然と増えていくので、深い遊びになっていくのが見ていてわかります。それにしても伝承遊びにはいろんな良さがあるんですね。歌やリズムが楽しいムードを作るというのも面白いです。この点も意識してみようと思います。それと長い間続いているという点は、やはりそれだけの理由があると思います。そのことを軽視していたところがあるかもしれないので、自分なりにこの意味を考えてみようと思います。
小学校の時にクラブ活動の中で「伝承クラブ」がありました。伝承と言う言葉を初めて聞いたので、何をするのかさっぱり分かりませんでした。なので体験クラブに行って、初めて伝承遊びというものを知りました。
ですが伝承遊びというのは子どもに昔の遊びを体験し、知ってもらう為だと思っていましたが、とても奥が深いですね。遊びの中で手足を使い脳を刺激し、そして周りの子どもを仲間にしていく効果があるとは思ってもいませんでした。昔の玩具と言うのはとてシンプルでありながら子どもの発達に大きな影響を与えているのですね。そして、複雑な玩具より、伝承遊びのようなシンプルの方が長く愛され続けるのですね。
以前、このコメント欄でも紹介したかもしれませんが、森昭雄先生の「ゲーム脳の恐怖」のなかに、伝承遊び、特にお手玉遊びが前頭前野の働きを活性化させると書かれています。『お手玉遊びにはかなりの集中力が要求されます。前頭前野は、三個のお手玉をどの順番に投げ上げて、次の右手は、左手は、というふうに、目と手の触覚をフル回転させなくてはなりません。時系列的な作業を考え、位置関係を考え、皮膚が刺激されて感覚野に情報が行きます。お手玉は手軽にでき、ノルアドレナリン神経系やドーパミン神経系を働かせ、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉のかなりの広範囲の連合神経回路を活性化できる、最も良い方法です。また、けんだま遊びもお手玉と同じ効果が期待できます。』伝承遊びといえば、ともすれば、お年寄りとの交流行事の遊びのようなイメージがありましたが、どうしてどうして、脳科学的に見ても子どもの発達にとてもいいようです。
「伝承遊び」の効用を今日のブログのようにまとめて頂くと単なる懐旧の念で終わりません。現代に必要な力を育むための楽しい手段であることがわかりますね。先日、園にある「伝承遊びゾーン」で子どもたちが「めんこ」を出して遊んでいました。めんこに触れるのは何と40年ぶりです。一枚手に取り、子どもたちに「めんこ遊びモデル」を示しました。私が子どもの頃「めんこ」のことを「ばった」と言っていました。おそらくめんこをバタッと投げおいた擬音から「ばった」と呼ばれたのでしょう。さて、40年ぶりにやった「ばった」でめんこがひっくり返りました。まわりにいた男の子も女の子も驚きのまなざしです。そして「ぼくも」「わたしも」とめんこに興じ始めたのでその場を立ち去りました。