2008年08月31日 [講演先にて]
唐傘
ここ数日、日本列島をゲリラ雨が襲っています。東京でも、ものすごい雷の稲妻と音とともに激しい雨が降り、傘を差していても足元はずぶぬれです。また、傘からも水滴が落ちるほど滝のように降り注ぎます。こんな雨ではなく、しとしとと降る雨ですが、そんな雨に傘を差す歌があります。今の人が思い出すのは、「雨降りくまの子」です。なかなか雨がやみそうにないので、くまの子は、傘でもかぶっていようと、頭に葉っぱを乗せるのです。
最近の子どもたちは歌うのか分かりませんが、私たちがよく歌った歌は、大正14年に北原白秋作詞、中山晋平作曲の「あめふり」です。「あめあめ ふれふれ かあさんが じゃのめで おむかい うれしいな ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン」迎えに来てくれた母親が持ってきた傘は、「蛇の目傘」です。同年、野口雨情作詞、中山晋平作曲の「雨降りお月さん」では、「雨降りお月さん 雲の蔭(かげ) お嫁にゆくときゃ 誰とゆく 一人で傘(からかさ) さしてゆく 傘(からかさ)ないときゃ 誰とゆく シャラシャラ シャンシャン 鈴つけた お馬にゆられて ぬれてゆく」一人で、唐傘を差して行きます。この頃は、傘と書いて「からかさ」と読んだように、傘といえば、蛇の目傘とか、唐傘のことを言いました。
この唐傘というのは、その字のとおり、古代に大陸から伝来したためだという説が一般的でしたが、最近の説では、て、日本で開閉式に改良したことで、開け閉めが自由にできるカラクリ細工の傘、唐繰傘(唐繰は絡繰と同義語)の略語だといわれています。東洋では、傘はまず、魔除などの目的で、貴人に差しかける天蓋(開閉できない傘)として古代中国で発明され、その後、飛鳥時代の552年に仏教の儀式用の道具として朝鮮半島(百済王)から貢物として日本に献上され、「きぬがさ」(絹笠、衣笠)と呼ばれました。平安絵巻に見られる傘は貴人に差しかける、開いたままの傘で閉じることが出来ないものです。それを改良して、現在の複雑な構造にしていったので、往時の人々が「からくり」と思ったのでしょう。
この和傘には番傘と蛇の目傘があります。蛇の目傘は、傘の中央部と縁に青い紙、その中間に白い紙を張って、開いた傘を上から見た際に蛇の目模様となるようにした物で、外側の輪を黒く塗ったり、渋を塗るなどします。一方、番傘は江戸時代から広く民衆の間で使われるようになり、昭和に入ってからも終戦前後まで日常生活で使われていました。
蛇の目傘が細身で美しい女性的な和傘であるのに対して、番傘はがっしりと丈夫にできており、素朴で独特の渋さがある男性的な和傘です。余計な装飾を施さず、素材の竹と和紙の良さが光り、質素な中にも粋な雰囲気を感じさせ、骨組みだけでなく、柄にも素材の竹をそのまま使っています。そして、傘布に柿渋、亜麻仁油、桐油等を塗って防水加工した油紙を使用しています。
昨日訪れた熊本県山鹿は、菊池川のほとりにあり、豊前街道沿いで、熊本県では熊本市についで二番目に栄えた町です。ここからは菊池川を使って米や和紙の傘などは運ばれていきました。この町で、番傘と蛇の目傘を園へのお土産として購入しました。
投稿者 fujimori : 2008年08月31日 23:46
コメント
番傘と言えば、今では日本舞踊や歌舞伎ぐらいでしか見かけなくなりましたね。そうそう、白波五人男では番傘を振り回して啖呵を切るシーンが有名です。『知らざあ言ってきかせやしょう 浜の真砂と五右衛門が歌に残せし盗人の・・・名せえゆかりの弁天小僧菊之助たあ俺がことだあ!』と諸肌脱いで言うセリフですね。かっこいいですね。それと、結婚式で新郎新婦が番傘をさして入場することがありますね。このようにセレモニーや演劇の雰囲気づくりには欠かせない番傘ですが、写真の和傘、先生の園ではどのように使われるのでしょうか。熊本の山鹿市は一度行ったことがあります。山鹿灯篭祭りが有名ですね。
投稿者 yamaya49 : 2008年09月01日 13:19
言われてみれば、傘にも女性的男性的なものがありますね。今私が使っているのは、和傘ではありませんが、どちらかと言えば女性的な傘かもしれません。和傘は素敵ですね。傘といえば雨のときに使うことが多いのかもしれませんが、和傘は太陽や光の下で使うときれいでしょうね。光が当たったときの色合いがとても柔らかな感じです。今はこのような傘を作る技術が減っているのかもしれませんが、ずっと残っていて欲しい技術です。yamaya49さんが言われるように、保育園でどんな風に使われるのか興味があります。
投稿者 あいやま : 2008年09月01日 23:03
野口雨情作詞、中山晋平作曲の「雨降りお月さん」、いいですね。四分の三拍子。殊に「傘(からかさ)ないときゃ 誰とゆく ・・・」の部分は妙に切なくて、これまたいいですね。番傘、風情があります。江戸時代の浪人武士の代名詞「傘張り」も思い起こされますし、園のブロックゾーン上にある浅草より来る番傘も思い出されます。傘布の防水加工の油の一つが「亜麻仁油」。園の床材に使用されている油で、これまた親近感を覚えます。ところで先日の集中豪雨に番傘さしたらどうなるのでしょう。何だか今度やってみたくなりました。しかし残念なことは、当の番傘、コンビにでゲット、というわけには行かないようです。それでも、どれほどの雨に堪えられるのか、試してみたいな、と思います。
投稿者 toshi0801 : 2008年09月01日 23:13
各地で洪水警報もよく出ているので、その地域にいる知り合いがとても心配になります。
それにしても写真の傘はとても綺麗に写っていますね。園へのお土産ということは装飾に使われるのでしょうか?飾られたら、ぜひ写真で拝見してみたいと思います。蛇の目傘はテレビなどで今日との舞妓さんがよく使っているイメージです。作る過程も写真で傘の骨を見る限り、とても複雑で時間がかかりそうな作業に見えます。こういう伝統的な物を見るたびに日本人というのは本当に繊細な作業が得意なんだとなと思いました。
投稿者 Sasuke : 2008年09月01日 23:36