棚田同様、森林には、木材等の林産物を供給するという役割だけでなく、さまざまな公益的機能が備わっており、これらの公益的機能は人々の生活と深くかかわっています。
この森林に入り、主として樹木を伐採することによって、木材を生産する産業を第1次産業と学生のころ習いました。しかし、この林業は、付随して、森林資源を育成したり、森林の持つ公益的機能を保持する役割も担っているのです。熊本県水俣は、林業の盛んな地域でした。それが、最近、跡継ぎがいないなどの理由で、どんどん衰退しています。また、日本の林業は国際競争の激化による木材価格の低下から競争力を失い、森林の手入れも充分ではなくなってきています。このような人工林の荒廃は、水源涵養機能や表面侵食防止機能などの公益的機能を低下させ、その損害は周辺の住民全体が被っています。
この何次産業というわけ方は、コーリン・グラント・クラークというイギリス人の経済学者が分類したもので、同時に彼は、民経済を考察するに際して、GNP概念を先駆的に用いたことでも有名です。しかし、最近はそのわけ方は古典的なものになっています。
そのときに分けた第一次産業は、自然界に働きかけて直接に富を取得する産業が分類され、第二次産業は、第一次産業が採取・生産した原材料を加工して富を作り出す産業が分類され、第三次産業には、第一次産業にも第二次産業にも分類されない産業が分類されました。しかし、最近は、農業の経営形態の新しい形として提唱された第6次産業のように、それぞれが複合的に結び合い、包括しあう色々な産業が見直されていますが、これからの時代は、この第1次産業を見直すことが大切なような気がします。
特に、日本は、国土の3分の2を森林が占める世界有数の森林国であり、森林がもつ多様な公益機能が期待されています。森林は地表の落葉や地中の根っこ等の活動により、雨水の貯留能力を増大させ、雨水等の河川への流出を平準化させています。また、その流出の過程で水質を浄化しています。そして、地中に根を張り巡らすことなどにより、土砂の崩壊や流出を防止しています。また、騒音を吸収したり風害を防いだり生活環境を守っています。また、最近人気があるのが、森林浴・ハイキング・キャンプ等のレクリエーションの場としての活用です。森林は、人に安らぎを与え、心の緊張を和らげます。
それらの中で最近特に注目を浴びているのが、地球温暖化の原因となる大気中の二酸化炭素を光合成により吸収し、幹や根などに有機物として貯蔵することにより、地球温暖化の防止に重要な役割を果たしていることです。そこで、京都議定書に基づく温室効果ガスの6%削減約束を達成していくためには、間伐等の森林整備・保全を一層加速化していくことが必要となっているのです。
先日、石油の高騰による前面漁の中止をしましたが、漁業を新たに考え直す必要があると同時に、農業とともに林業も今後考えていかなければならない問題なのでしょう。クラークは、経済発展につれて第一次産業から第二次産業、第三次産業へと産業がシフトしていくことを提示しましたが、確かに今までは、そのようにシフトしてきた観があります。しかし、自然界に働きかける第1次産業は、狭い地球の中で様々な生き物が共生していく上で、第1に考えなければいけない、とても大切な産業です。人間の一方的な利益のためだけの産業は、結局は人間にそのつけは回ってくるでしょう。
農業だけでなく林業も大切ですね。これらが注目されず一見派手な商業ばかりが守られるとしたら、明らかにバランスを欠いてしまいます。教育も同じように、どう守っていくかきちんとした方針が示されていないように思います。日本の大きな課題だと思っています。
日本政府の省庁のひとつに「農林水産省」があります。農業も漁業も林業も等しく管轄しているのでしょうが、一般の私たちには何だか「農業」のことだけ扱っているのではないか、と思えるほどです。「農業」行政の比重の大きさはわかるのですが、それにしても林・水産業施策がどうもお粗末のような気がしてなりません。杉花粉症一つをとっても、これは林野行政の失敗でしょう。世界自然遺産に指定されるような原生林は別にしても国土の圧倒的多くはこの「林野行政」管轄のもとに置かれているわけですから、植えたら植えっぱなし、後はお金がないからケアできない、というのではあまりに無責任、のような気がしてなりません。1年ほどである程度結果がわかる農業とは違って林業には何十年先を見通す力が必要な気がします。
小学校の頃に第一次産業など習いましたが、ブログに書いてある理由で分けていたとは初めて知りました。
林業というのは農業、漁業に比べて影が薄い気がしますが、林業も跡継ぎがいない、価格の低下などの理由で苦労しているのですね。木のおかげで土砂崩れを防いだり、水質浄化などの役割があるとは知っていましたが、林業の衰退で手入れが行き届かず住民に被害が及ぶのは予想できたはずだと思います。第一次産業は何のための「第一」なのか、しっかりと把握する必要があると思いました。
昨日、新居浜の別子銅山があった山域を歩いてきました。ここは、実は国内に4万haにも及ぶ社有林を持つ住友林業の発祥の地で、今でもこの周辺の山の保全管理を社業として行っています。『別子銅山によって失われた自然を取り戻す「大造林計画」を始まりとした住友林業の保続林業。』と会社のHPに紹介されていますが、第二次産業の会社が第一次産業の役割を立派に担っているんですね。1本の杉やヒノキを植えて、森を育てて、木材を商品として市場に出せるまで、どれほどの時間と労力が要ることでしょう。本当に根気のいる仕事です。こんな公共性のある会社こそもっと評価されるべきですね。