寒川

 7月29日と30日の二日続けて、朝日新聞の社説は、「水」を取り上げていました。
29日は、「らちの明かない議論を「水掛け論」と言うが、水争いから生まれた言葉ともされる。農家にとって水は命である。かんがい施設の整う以前は、日照りが続くと、水をめぐるいさかいが頻発した」という書き出しから、きびしい「水争い」がいま、アジア各地で起きている事情について書かれています。そして、地球は水の惑星であるが、ほとんどは海水で、淡水は2.5%にすぎず、水を安定的に得るのが困難な人たちは、いま世界で約25億人にのぼっていると書かれています。それが、今世紀半ばには約40億人に増えるそうです。現在の石油高騰による困難さは、将来、食糧輸入の多い日本は、農畜産物を育てるための膨大な水を、実は外国に頼っているということから、わが食卓が世界の水につながっていることを、忘れまいと警告しています。
30日の社説では、水のありがたさから、一転して、神戸市の都賀川での水難自己の恐ろしさを取り上げています。「明治の初めに来日したオランダの治水技師ヨハネス・デレーケは、富山県の常願寺川を見て「これは川ではない。滝だ」と驚いたそうだ。高い山から海へと急ぐ姿に、欧州の平野をゆったり流れる川とは違う厳しさを見たのだろう」そうした河川が、山がちな日本には多いということから、「自然に親しむ機会の多い夏休みである。大いに楽しみながらも、秘めたる「牙」への用心はゆめゆめ忘れぬよう」と警告を発しています。
 講演で訪れている水俣で、少しの時間の合間を見つけて、久木野地区寒川集落に連れて行ってもらいました。この集落は、水俣市の東部の山村で、水俣川の源流部に位置する集落です。この集落内においしい水が1日に3000トン湧く「寒川水源」があります。
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標高約900メートルの大関山に降った雨が幾層もの地下水で浄化され、標高約310メートルの寒川地区にわき出るもので、水温は、四季を通じて14℃を保ち、夏場も水が冷たいことが地名の由来となりました。「熊本名水百選」にも選ばれ、夏の避暑地として県内外に知られており、そうめん流しの場としても有名です。
ここから下流に3km続く日本でも有数の地元から出た石を積んだ見事な棚田があります。
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この久木野地区の棚田は約100ha、その中で寒川の棚田には30haの広さに700枚ほどの田が広がって、これだけの面積の棚田は日本でも有数のものだそうです。ここは、夏の昼間は平地よりわずかに涼しい程度ですが、夜の気温がぐんと下がり、昼夜の寒暖差が大きいため、おいしい米が取れることで評判です。この寒川の棚田は「日本の棚田100選」や「くまもと景観賞」に選ばれていて、今は、稲が青々と育っていますが、田植えの前後は、水面にまわりの景色が映ってきれいに見えるそうです。梅雨時は、菖蒲や紫陽花の花が咲き、お盆のころには、稲に花が咲きます。9月下旬は、稲が黄色くなって、畦には彼岸花が咲き、冬の間は、稲刈りを終えた後の棚田の石垣をじっくり見ることができるそうで、四季折々美しい姿を見せてくれるようです。
しかし、棚田は、降った雨を一時的にためる働き、生き物を育てる働き、周囲の空気を冷やす働きなど「農地の公益的な機能」を持っています。農地が減ってきたということは、自給率の低下というだけでなく、二日にわたる社説の問題にも関係してくるのです。