先日の新聞に、小中学生や高校生などの職場体験を受け入れた企業のうち、「今後も続けたい」と考えている企業は約6割にとどまることが、東京商工会議所の調査でわかったということが取り上げられていました。その理由として、学校との調整が難しいことや、企業側の負担が大きいことが背景にあるようです。
小さい頃に将来何になりたいかという夢を持つことは、大人になってその職業に必ずしもなることはできなくても、何らかの職業に就こうとする意欲につながっているように、この職場体験は、不登校の子が登校しようという意欲や、将来の就業意欲につながっているといわれています。しかし、この職場体験には、受け入れの職場が必要であり、企業の教育支援の意識が必要になります。そんな支援を毎年行ってきた企業へのアンケートでは、そのような支援を今後も継続する意向の企業は、小学生の受け入れで58・1%、中学生は66・5%となり、企業側は、どうもためらっているという結果が出たようです。
このような職場体験が注目されたのは、兵庫県と富山県の試みです。
兵庫県は、1995年の阪神・淡路大震災、1997年の神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇事件)をきっかけに、子どもたちを地域で見ていこうということで、学校、家庭、地域の3者が協力して、1998年から実施されている県内の中学2年生を対象とした五日間の職場体験です。略称は、「トライやる」といいます。また、教員にも生徒よりも期間が短い「先生のトライやる」と称する職場研修が課せられています。
平成17年11月に文部科学省から、その成果が報告され、職場体験の必要性が出されています。その中で、この職場体験が求められる背景として、次のような最近の子どもの様子を示しています。
「最近の子どもたちは、これまでの子どもたちには見られなかった柔軟な感性や遊び心、ボランティア活動等への高い参加意欲を持っているなどの積極性は見られるものの、社会性の不足、規範意識の低下、人間関係や連帯感の希薄化、集団や社会の一員としての自覚や責任感の低下などが指摘されている。そして、変化の激しい先行き不透明な社会を背景として、若者の世界に漠然とした閉塞感や無力感、あるいは、職業について考えたり、職業の選択・決定を先送りにするモラトリアム傾向やフリーター志向の広がり、高水準で推移する若年者の失業率やいわゆる「753」といわれる就職後の早期離職、また最近ではニート(NEET:Not in Education,Employment,or Training)の問題が指摘される中で、生徒の進路意識や目的意識の低下が懸念されている。」
このフリーターやニートの増加は、若者をめぐる不安定雇用が背景にあるのですが、「フリーター比率」とよばれる新卒者のうち進学も就職もしない者の比率にとても興味深いものが見られます。この比率が31.5%の沖縄をトップに全国平均15.3%に対し、富山県は5%と最も低いのです。このフリーター比率の低さと直結しているかどうかは別にして、確かに富山県では若者の職業意識を育てるために様々な試みが行われているのです。その1つが「14歳の挑戦」といって、富山県が国公立中学を対象に義務づけているもので、中学2年の生徒たちが5日間学校を離れ、地元の企業で実際に働きながら、仕事とは何かを学ぶ体験学習です。2005年度は10,028人の中学生が参加し、受け入れ事業所は3272ヶ所に達しているようです。
この事業に限らず、子どもの育児、保育、教育は、社会全体の問題として取り組まなければいけないのではないかと思います。
私も中学校のときに、家庭科のおもちゃ作りの授業の一環で職場体験したことがあります。その時に初めて保育園に行きました。ですが、自分が作った手作りおもちゃで子供と遊ぶことが目的だったので、仕事内容を学びに行ったのではありませんでした。その時に子どもと遊ぶことで色々なことが分かりました。その中で一番感じたことは、大人(その時は中学生ですが)にとっては普通の事でも子どもにとっては感動するくらい嬉しいことなんだ、と感じました。これが、将来を決めたきっかけだと思います。中学生から将来を考えるというのは、なかなか難しいことだと思います。就職まで約6年位先なので。ですが、職場体験をすることによって自分の将来の夢を発見できたり、体験した職業に就かなくても働くことに対しての考え方というのが少しは分かると思います。それが、少しは働く意欲につながれば良いと思いますが。
企業のことだけを考えると確かに負担でしょうし、短期的にみても同じだと思います。でも社会全体で教育を行うという見方をすれば、職場体験の取り組みは大切にしなければいけないんでしょうね。幸いにもわが市では積極的に子どもたちを受け入れようとする姿勢が感じられます。それぞれの立場でできる子どもたちへの関わりをひとつひとつやっていければいいですね。教育は親と学校の仕事だという考えには流れて欲しくないと思っています。
以前勤めていた園で、地元の中学・高校生による「職場体験」プログラムに参加し、中高生さんを受け入れていました。彼らの近未来における職業選択の一つに資すれば、という思いがありました。その受け入れの際には必ず園の説明や園の置かれている制度的枠組みをレクチャーしていました。そして、何よりも強調したことは、子どもが好きだから仕事ができる職場、ということではなく、子どもたちの将来を見通した上での子どもたちの関わりがどれほど大切か、ということも話しました。もっとも実際「職場体験」をした生徒たちの中には「大変さ」のほうが体験の大半を占めており、逆に自分たちの仕事の仕方について反省したことも覚えています。「職場体験」については大学短大専門学校生の「実習」も含まれると私は考えますが、このことに関しては別の機会に。