イタリアの色彩

昨日、イタリア文化会館、株式会社学習研究社、Shiodomeitaliaクリエイティブ・センター主催による「子ども、空間、関係性 ~子どもの環境のためのメタプロジェクト~」日本語出版発表会に参加しました。会場は、東京九段下にある「イタリア文化会館」でした。この建物は、2005年、イタリアの建築家ガエ・アウレンティのコンセプトデザインによって建てられました。外観は、コンクリートとガラスによるイタリア風のデザインが、日本の城壁や石垣、格子や障子を思わせる幾何学模様と巧みな融合をみせていて、とても美しい姿を見せてくれます。ところが、この建物の真っ赤な外壁色の是非が、景観問題として話題となりました。その理由のひとつに、この建物が東京都千代田区の一角にあり、皇居に近く、皇居周辺の美観地区として景観が守られてきた場所に建てられたということがあります。
itariabunkakaikan.jpg
設計意図としては、内堀通りの広い道路を隔てて正面に学校、隣も学校とオフィスビルがあり、無彩色に近い穏やかな街並みに、格子のパターン+漆の赤色=日本のイメージによるものでした。しかし、住民アンケートによると、40%以上の人がこの色彩は問題であると答えており、日本を象徴する色として朱漆の赤に思いを込めたという色にしては、日本人から見るとかなり攻撃的なイメージを持ったようです。結局は、当初のプランより抑えた赤に変更し施行したそうです。
 色彩というものは、文化かもしれません。子どもたちの生活環境の中で大事な視点として「五感」を刺激するというものがありますが、そのひとつである視覚を刺激するものとして色彩は重要なものです。今回出版された「子どもの環境のためのメタプロジェクト」という書物では、「乳児保育所と幼児学校で蓄積された実践の批判的読解を通して、幼児期のための空間がどのような特徴を持つべきか」という課題について語られていますが、その実践は、数年前から世界的に注目されているイタリアのエミリア市レッジョ・チルドレンと、ドムス・アカデミーによる共同研究プロジェクトです。この本の中で、空間の特徴を「位置的指標とソフト・クオリティーズ(光、色彩、素材、嗅覚、音、微気候)を伴う設計上の手段に関する考察」という内容が2章で語られています。
 そこには、「子どもは生まれながら色彩が好きで、自然にそれに反応します」と書かれていますが、どの色が幼児期にふさわしいかについて、色を限定せず、より広範囲で、もっと変化に富む色彩の好みがあるとしています。「実際、植物やある種の昆虫に対する色彩の影響は科学的に照明されていますが、色彩の人間工学は、まだ人間に対する詳細状況の指標を提供し得ていません」として、「色彩の好みは文化的な現象です。厳密に生物学的心理的反応は非常に限られています」としています。
イタリアでは、あずき色的な「赤」は、至る所で見られます。役所や学校、図書館、美術館などの公共の建物の窓枠やカーテン、市内バス、公衆電話のボックス、ごみ入れ、などです。その色は、グレーやベージュの石やレンガ造りの建物にマッチして、大変落ち着いた環境を構成しています。その文化を、日本に持ってきても、風土や歴史が違うために「イタリア文化会館」の赤は、すぐには受け入れられなかったのかもしれません。

イタリアの色彩” への4件のコメント

  1. 格子のパターン+漆の赤色=日本のイメージと考え取り入れたものでも受け入れにくいというのは、面白い現象ですね。色彩の好みは風土や歴史が大きく関係しているというのがよく分かります。色彩も文化といえますね。でも不思議なのは、同じ文化でも食に関してはいまや多国籍の状態です。日本独自の食を目にすることは少なくなっていると思います。文化であることから初めは抵抗があったとしても、長い年月や上手な戦略さえあれば、文化も変わっていくのでしょうか。色にしても、日本独自の色彩感覚は薄れていく時がくるかもしれませんね。

  2. 時々訪れる美術館へ行く途中に写真の「イタリア文化会館」があります。ただ通り過ぎるだけの建物でしたが、今日のブログによって私の中の注目度が俄然増しました。近々その建物前を通り過ぎる予定があるのでその時は建物の向い側の道を歩いてみて壁面の「赤」を体験したいと思います。ところで色彩の重要性は藤森先生によって日々教えられています。仕事場で、そして美術のことで。ある時は町並みを彩る色にハッとさせられることもあります。確かに昔の日本の街並みあるいは普通の家は「無彩色」に近かった。私が生まれ育った家もそうで、それ故ディックブルナーの絵本やカラーテレビを観た時は脳の眠っていた部分が起こされたような、そんな感覚を覚えました。子どもにとって色彩がどれほど大切か。今日のブログによっても再認識することができます。いつかイタリアに行って同地の色彩を感じたいと思っています。

  3. 以前、レッジョ・エミリア市の幼児教育実践記録「子どもたちの100の言葉」という本を読んだことがあります。日本より数段優れた保育が、イタリアの田舎町で実践されているのですね。藤森先生の御著作での言を借りれば、レッジョが世界から注目を集める理由は『子どもの豊かな表現を育てる環境を通しての教育、地方自治体による組織的な保育事業体制、家庭及び地域との協力・連携、専門家チームによる指導体制』があげられます。今回の保育指針にも同じような文言があったように思います。一昨日、藤森先生を私の住む町にお迎えしてささやかな研修会を開くことができましたが、いつの日かレッジョのような町に少しでも近づけるよう先生方と一緒になって取り組んでいきたいと思います。

  4.  「イタリア文化会館」の外観が皇居周辺の美観地区として色彩が合わないことから40%の住民が問題あると解答したのはそれほどイタリア文化会館の外壁の色が合わなかったのでしょうね。それだけ日本独特の色彩というのを住民の人たちは分かっていて反対したということは、日本の色彩というのが、生きていく上で勉強しなくても自然と身についているのですね。ですが、だからと言って、いつまでも日本だけといって取り入れないで海外のいろいろな文化、とくに教育も思い切って取り入れるべきだと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">