ドイツの少子化対策

 ドイツでの少子化対策がなかなか成果が上がらないのは、国の金銭的援助よりも託児サービスの充実が遅れているという点のようです。日本同様に公立保育所(これは、日本で言う公立保育園ということではなく、公的資金援助を受けている園というような意味で、その職員は、必ずしも公務員ではないようです)は待機児が多く、民間の保育所は空いていても、保育料が月1人900ユーロもかかるようです。また、労働局のウェブサイトからベビーシッターを頼んでも、月1000ユーロかかるようです。ですから、仕事との両立は子どもを預かってくれる祖父母が身近にいるかにかかっているというように日本と同じ状況です。
  もうひとつ、日本同様な状況に、「子育ては母親が一番」という風潮がまだ占めていることもあるような気がします。ドイツでの知り合いの方が、3月に三年間の育児休業があけて働き始めたのですが、何で3年間も育児休業を取ったかというと、それよりも早く職場に復帰すると、「よほど財政的に大変なんだね」といわれてしまうからというのも大きな理由だそうです。職場の観点からみると、早く職場復帰を果たす理由に、企業側から、専門職の女性が育児で職場を離れることになると、その補充要員の雇用に伴うコストの高くなるということと、親の立場から、めまぐるしく変化する企業環境の中で、専門知識をフォローアップできず、遅れを取り戻せなくなる危険性があるとするだけでなく、子どもにとって少子社会においては、乳児から子ども集団体験も必要であるということを社会的に認知してもらう必要がある気がします。ただ、今の日本のように、10時間も、12時間も園に預けざるを得ない社会はおかしいと思いますが。
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  北欧4カ国は合計特殊出生率1.7以上と欧州で最も高いレベルにあります。マックスプランク人口研究所の調査報告書(04年)によると、北欧の共通点は、託児および育児インフラが充実していること、仕事と育児の両立を援助する政策方針がとられていることだとしています。この両立援助は父親も対象としています。結果的にどの国も女性の就労率が約80%(20、30代)と高く、例えばデンマークでは1?3歳児の親の8割が保育所を利用しており、育児か仕事かの二者択一の必要がない環境にあるようです。
ですから、私たちがうらやましいと思う「親手当て」は、余り効果は期待されておらず、ドイツ経営者連合は、託児施設の整備を優先するべきだとしています。そこで、保育所増設計画が始まりましたが、以前のブログでも書きましたが、早くから子どもを預けることに対して、反対は多いようです。ドイツ南部のカトリックの司教が、女性が出産直後に職場復帰を果たさなければならなくなるのは、女性から育児の機会を奪うことになり、「女性を『産む機械』におとしめるものだ」と批判したことは以前に書きましたが、この発言は、出産・育児をめぐる女性の役割へと議論を巻き起こしているようです。「シュピーゲル」(電子版)誌では、ドイツ社会に根強く残る「育児は女性の仕事」という伝統的な性役割認識を改める必要があると主張しています。女性が各分野で活躍している国は出生率も高いとして、アイスランド、スウェーデン、ノルウェーを取り上げ、これらの国では仕事と育児を両立できる環境が整備されていると指摘しています。
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 しかし、私はもっと、子どもにとっての乳児保育の研究を進めて欲しい気がします。やはり、女性は出産をする体であり、育児は母親の役割が大きい気がします。だからといって、母親だけで育てればよい訳ではありません。また、社会は、権利ではなく、男女両性がいてこそ作られていくものです。少子化は、育児のあり方、社会のあり方を問う問題です。

ドイツの少子化対策” への7件のコメント

  1. これまで乳児保育の重要性は、それなりに認識されていたとは思いますが、藤森先生のおっしゃるように『乳児からこども集団体験の必要性』はほとんど研究されてこなかったように思います。それはたぶん、従来の保育がおしなべて母性の保育であり、乳児保育はあくまでも母親の子育ての「代替」と考えられていたからだと思います。しかし本来子育ての主役であるべき母親(あるいは家庭)の養育力が低下している現在、保育所での乳児保育がより質の高いものになる必要があるようですね。ドイツの乳児保育ではどのような工夫がなされているか知りたいところです。

  2. ドイツの託児サービスが遅れているというのは意外な気がします。その国なりに悩みはあるんですね。保育料が月1人900ユーロというのもちょっと驚きです。
    ドイツ経営者連合の託児施設の整備を優先するべきだという意見は、日本でも似たような話を聞いたことがあります。企業側のこうした意見、逆の立場からの働き方に対しての意見、社会の子育て観など、バランスがとれた状態にどう近づいていくかは、とても重要なところだと思います。変わっていくのは時間がかかることでしょうが、少子化である今の現状をきちんと受け止めて、日本もいい方向に変わっていかなければいけないですね。

  3.  確かに乳幼児期において子ども集団を体験させるのはとても大切なことです。それを、社会に認めてもらい、企業でも小さな子どもがいる家庭は何かと優先できる環境の方が親は安心して仕事ができ、企業にとってもその方が業績があがるような気もします。その辺りが厳しいため、子どもをもつと大変というイメージがついて少子化が進んでいるのもある気がします。先生が言われるように乳児保育をもっと研究してほしいですね。そして子育てというのは、夫婦でするもので女性だけがするものでないという当たり前の考えが広まないといけないと思いました。

  4. この間ドイツからやってきた指導者研修参加者と話し合いの機会を持ちました。彼らの一人が関心を示していたのが「認定こども園」でした。わが国の保育園制度と幼稚園制度の違いを百も承知していました。政府サイドの説明を聞いてきたドイツの皆さんは「こども園」が有する課題を私たち保育園サイドから聞くことによって大きく頷きました。それもそのはずです。ドイツは約20年前までは東ドイツと西ドイツの二つの政治経済教育体制に分かれていました。そしてその分裂による影響は今日なお根深くドイツ連邦各地に残っているそうです。今回紹介されている「少子化対策」も北と南、そして西と東では異なるようです。さまざまに悩ましい問題を抱えているのも日独の共通点でしょう。

  5. 少子化の背景には、育児や社会の在り方を問われているということがあるのですね。逆に、人類がここで修正を加える機会・時期でもあるということでしょうか。ここで、対応策や誤った方向に進んでしまうと、取り返しのつかないことにもなってしまうのでしょうか。また、ドイツの公立保育所の保育料が900ユーロとか、ベビーシッターが月に月1000ユーロもかかるというのにも驚きました。それくらいをまかなえる手当があるということなのでしょうが、育児とか子育てに向ける、力の入れ方が金額という面からでも伺えますね。質というものを置いておくとしても、そのような目に見える社会的価値を感じながらドイツでは生活しているのですね。

  6. ドイツでは子どもが母親が育てるものだという風潮が強いとあり、驚きました。先生も言われていましたが、3年も育休があると、確かに家庭で母子だけで過ごしていて、さて次の子を産もうかという意識にはなかなかならないように思いました。乳児の頃からの子ども集団の大切さをもって世界が認知していくといいなと思います。また「子どもにとっての乳児保育の研究を進めて欲しい気がします」とありました。本当にそうですね。保育所の整備、少子化対策、増設などなど子どもをとりまく保育、子育ての話にはなりますが、最新の研究が政策に反映されていないですし、そのことを知らない人が多いというのが日本の現状なのかなと思います。本当の意味での保育の充実、少子化対策はなんなのかということを当事者である私たちも意識しなければいけませんね。

  7. 古来男性は狩りを行い一家を養ってきた、その観点から言えば自然女性は家を守る立場となり、子どもを直接的に育てる役割を担ったのでしょう。時代を経て、現代に残すべきものと変えるべきものとを精査出来る程に研究が進んだ今、「子どもにとっての乳児保育の研究」によって、子育ての本質、保育の本質、またヒトの織り成す社会の本質が見えてくるようです。

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