開く

 その年に初めて登山が許される日のことを「山開き」、海水浴場を開場する日のことを「海開き」といいます。昔から神様がいる山には夏の間しか登ることが許されなかったため、入山できる最初の日に山開きの行事を行うようになり、それにならって海開きの行事が行われるようになりました。私は、この海開き、山開きは、7月初めのころの日で、さあ、もうすぐ夏休みだと思ったものでした。
 ところが、先日講演の帰りに連れて行ってもらった奥州市江刺区伊手の阿原山高原には、「山開き」ののぼりがいたるところではためいていました。実は、ここでは5月25日に山開きが行われました。一関市大東町と隣接するこの高原は、蓬莱山と種山高原の中間にあり、標高七八〇メートルの展望舎周辺からは、北上山地や奥羽山脈などたたなずく青垣山が一望できます。というよりもできるはずでした。というのも、当日は、霧に包まれ、あたり一面真っ白でした。
 しかし、この高原は、江刺の花レンゲツツジの群生地として有名で、霧の晴れ間からは、山一面、色鮮やかな姿を見せてくれました。
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また、この高原は、放牧場としても有名で、あちこちに黒毛和牛が牧草を食んでいました。この奥州市は、前沢牛で有名な前沢町も合併されていますが、この牛は、江刺牛と呼ばれています。うたい文句として、「澄んだ空気とやさしい大地、そして、古来より家畜を朋友として農業に生きた人々のたゆまぬ努力と情熱によって改良が加えられ、陸中牛と江刺牛が生まれました。」とあります。
このように、夏の日差しが強くなる5月の終わりから7月にかけて全国各地で「山開き」「海開き」「川開き」が行われます。その中で、「山開き」が最初です。富士山では7月7日浅間神社での山開祭、木曽の御岳では7月10日、岩手山は6月15日などいろいろのようです。それに比べて、海開きは海水浴の解禁日で、地方によって異なりますが一般的には7月1日あたりが多いようです。
山開き、海開きと語呂がいいので二つ一緒に言われることが多いのですが、もうひとつ興味深いものに「川開き」があります。川開きは、もとは川遊びの解禁日ですが、川遊びといっても海水浴とは違って、川で泳ぐわけではありません。特に有名なのは、江戸時代から行われている「両国川開き」です。両国橋を中心とした隅田川の下流一帯の茶店や食べ物屋、見せ物小屋などは通常夕方までの営業でしたが、旧暦5月28日から8月28日までの納涼期間中は夜半までの営業が許可されました。その始めの合図として花火大会が行われました。現在の隅田川花火大会は7月下旬ですが、第1回の川開きは享保18年(1733)5月28日に、幕府の許可を得て両国橋畔において行われました。
このとき、横山町の鍵屋弥兵衛と両国広小路の玉屋市郎兵衛が夏の夜空に華々しい技を競いました。ですから、花火が上がるたびに叫ぶ「たまや!」「かぎや!」は、この玉屋、鍵塵から来ています。そして、最後に日は、「川じまい」という行事がありました。これが旧暦の八月二十八日で、今の暦では十月中旬です。
本来、都会の河川はレジャーの対象ではなく、水運の通路でした。ですから、川遊びの船が何艘も浮かんでいては邪魔になるので、期間が決められていたのでしょう。
 期間にしても、時間にしても、きちんと遊びと仕事のけじめが出来ていたようです。

開く” への4件のコメント

  1. 霧に覆われた高原に咲くレンゲツツジの花々。郷里の山々を思い出します。とても懐かしい風景です。湿っぽく冷たい空気が漂う中、黒毛和牛が草を食む姿にも風情を感じます。過日のブログで牛も食べないレンゲツツジを紹介して頂いていたので、その群生風景を写真で拝見できるのはまことにもって嬉しい限りです。ところで、あまり山に登らないので「山開き」というのはピンときませんが、生まれたところが海の近くなので「海開き」はとても身近に感じます。しかし「海開き」の日はまだ梅雨の頃で冷たい海風吹く中でのオープンでしたので、その日海で泳ごうという気にはなれませんでした。私の郷里の「川開き」は主に「川釣り漁」の解禁を意味していたようです。鮎釣りの開始が「川開き」の日でした。隅田川花火大会が川開きの合図とはこれまた趣き深いですね。大混雑を覚悟しながらも今年は行ってみようかと思います。

  2. ヤマ屋なのに、ここ半年以上、山を忘れて下界の暮らしに追われる毎日です。藤森先生から「山開き」なんて聞くと、嗚呼そろそろ山に行かないとと焦ってしまいます。東北の山は、レンゲツツジが見頃なんですね。ここ四国の山は、あけぼのツツジが山肌をピンクに染めてくれています。特に、新居浜市を見下ろす赤石山系の山々が、四国随一のあけぼのツツジの群生地として有名です。かつて別子銅山があったところで、山歩きをしながら往時の鉱山の歴史をたどることができます。『きちんと遊びと仕事のけじめ』をつけて、来週あたり我が家も山開きにしようと思います。

  3.  写真の風景はとても綺麗ですね。霧がかかっていて残念ですが、それもまた幻想的な風景ですね。
     山開きと海開きと言われると、海開きの方が身近に感じます。海が近いせいか暑くなると友人達と海へ行ってます。ですが個人的に海の方が好きなので山へは行かないです。今まで小学校の頃の宿泊学習で山に登った以来、登山はしたことがありません。1年中、海、山、川で遊べるのではなく時間と期間をしっかり決めて遊ぶことが大事なのですね。それでも遭難などの事故が起きるので、その期間や時間でもルール等をしっかり守ることも必要だと思いました。

  4. 山開きや海開きのように、自然とつきあっていくうえでの節目が大切にされているのはいいですね。これらの行事を通して自然と共存していく思いが少しずつでも深まっていくということもあると思います。近くの川でも川開きが行われます。海開きはもう少し先ですが、季節が変わっていっていることを感じます。

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