今日、ドイツから成田に帰ってきました。と言っても、時差の関係で、ミュンヘンを飛び立ったのは、土曜日の午後ですので、このブログを書き始めたのは土曜日の朝でした。
ツアー最後の見学は金曜日でした。午前中の見学先は、初めて訪れる「キンダークリッペ」という社会局の管轄である0歳児から3歳児までの園です。ドイツでは、キンダーガーデンという3歳から6歳児までの施設と、最近0歳から6歳までの「コープ」という園の管轄は学校局であり、毎年このツアーをコーディネートしてくれるのは学校局ですので、キンダークリッペを見るのはとても珍しいことです。
今回の見学先の園は、定員が63名で、毎年の入園可能数が25名に対して入園希望者は500名ほどいるそうです。年齢的には低年齢児だけですが、事情や内容は日本の保育園に似ているものがあります。待機児が多く、ミュンヘン市では、2013年までに定員を2000人増加する計画のようです。それに伴って、保育士もかなり増員しなければなりません。たぶん、場所の確保も問題ですが、どうするのでしょう。日本では、乳児一人あたり3.3㎡、幼児一人あたり1.98㎡が最低基準として決められていますが、ミュンヘンのキンダークリッペでは、寝室として一人あたり2㎡、遊ぶ場として一人当たり3.5㎡、合計5.5㎡が最低基準のようです。
この施設では、コープなどと違って、食材や食育も大切にしています。ですから、ほとんど冷凍食品のキンダーガーデンと違って、出来るだけ地産地消の食材を使い、すべての料理は手作りで、アレルギー児にも対応しているそうです。多いアレルギーは、ミルク、トマト、魚だそうです。清潔そうで、働きやすそうな調理室ですが、私たちの見学のための立ち入りは自由ですし、床は土足で、日本とは感覚が違いますね。
同様に日本と違う感覚なものに、水遊びがあります。まず、キンダーガーデンを含めて、夏の日本の園の定番であるプールがありません。もしプールに入る場合は、業務委託で、希望者だけ費用を払って週1回連れて行ってもらうそうです。乳幼児期は、泳ぐことができるようになるというよりも、水と楽しくふれあい、感触、科学を体験するために水遊びをします。しかし、驚くのは、この写真の右側のほうの子が、その水を飲もうとしています。他の子でも、チューブから水を飲んでいた子がいました。しかし、保育者は止めようともしません。後の質問で、「水の中に薬か何かを入れないのですか?」の答えに、「何かを入れるときは、意図するときです。」と言ったのは、私たちの質問の意図が伝わらず、泡などの体験をさせるために、泡が立つものを入れることがあるということで、塩素などによる消毒という概念はないようです。
また、ドイツの園の園庭は、芝生が敷き詰められ、大木が多く、広々としているのですが、植物と同時にどの園にもあるのが大きな石です。この3歳までの乳児園でも、園庭の中心に大きな石の山がありました。その石の山の頂上から水が出るようになっていて、その水が石の間を縫って流れ落ち、下の砂場に流れ込みます。この石の山に、まだ歩くのもおぼつかない乳児一人で登って行きます。「危なくないのですか?」という質問に、「最初は、職員がみんな危ないのではないかと反対しましたが、様子を見ていたところ、子どもは、自分の能力に沿って登り方や、登る場所や、高さを調整しています。ですから、そのまま見守ることにしたところ、5年間一度も事故はありません。」
そこには、保育者の話し合い、理念、目指す保育があるだけで、保護者の苦情によってなどという言葉は出てきませんでした。
ドイツでの研修、お疲れ様でした。日々、ドイツからの報告は新鮮で楽しみでした。
キンダークリッペの環境は日本では考えられないことがたくさんです。根本的な考え方が違うのもあるかもしれませんが、調理室に見学者が普通に入っていいことや、プールには塩素消毒はしないなど日本ではあり得ないです。園庭にある石の山はとても面白そうです。それよりも、その石の山を子ども達は自分の能力に合わせて登るとは、子どもはちゃんと分かっているのですね。日本みたいに危ないからすぐに撤去するなどしないで、まずは子どもが遊んでいる様子を見守ってから決めるというのが「さすがだな」と思いました。保護者の苦情も来ないのは保護者もしっかりと理解しているというのもあるような気がします。その点から日本も保護者へと、自分たちの保育の意図をしっかりと伝える事が必要だと思いました。
今日の3枚の写真はどれも日本とドイツの保育に対する考え方の違いをよく表しています。ドイツの給食室を日本の保健所の人が見たらたぶん指導の連発でしょうね(笑)。日本の保健所は、できれば無菌状態で保育して欲しいと思っている節があります。(自分たちに責任が及ばないように)プールを使わないドイツの水遊びは、あくまでも子どもに水に親しませることが目的なんでしょうね。最後の園庭の石の丘にはさすがに「目がテン」になりました。これは絶対に日本では無理だ!子どもの発達を保障するためには、子どもの発達を信じて見守ることが大事なんですね。ドイツの保育の凄さを感じる写真です。
お帰りなさい。今回のドイツ研修でも多くの気づきがあったようです。そして、今回も、私たち日本にいる関係者への問いかけの多い現地からのブログレポートでした。クリッペの様子を拝見するにつけ、日本の保育者がその環境に置かれたら、一体どうなることか、と思ってしまいます。そして、実感したことは、子どもに対して全幅の信頼をドイツの保育者が持っていることです。プールの水を飲んでもOK、岩石が多い園庭があってもOK、私たちは木陰でお茶でも飲みながら、子どもたちを観ていましょう。「専門家」としての「保育者」の姿をそこに感じました。日本の「保育者」はカリカリイライラしています。よって、保育のことについて語り合う余裕などありません。そして結末は責任の擦り付け合いです。それは人格のことや能力の優劣、理解度の高低、に関することです。なんとかしなければなりません。
長いドイツ研修、お疲れ様でした。そして毎日の報告、ありがとうございます。私は今回のブログのドイツ報告をまだ消化できていないので、もうしばらく何度も読み返すことになりそうです。
最低基準ですが、ドイツの場合は寝室と遊び場を分けて設定しているところがいいですね。キンダークリッペの寝室より狭かったりする日本の基準はいったいどうなっているんでしょうか。
水遊びもかなり違いますね。絵を描くことなんかも似ていると思いますが、上手に泳げたり絵を上手に描けることを目的にするようなことはないんだろうと思います。その子が必要としている体験を遊びを通して楽しんで体験させることを大切にしているんでしょう。スタート地点がしっかりしていると、活動や環境が豊かになるように感じています。