ミュンヘンには、オペラハウスをはじめとして、多くのコンサートホールや劇場や、博物館などがあります。中でも有名な美術館にノイエ・ピナコテークというゴッホのひまわりの絵があるところがあり、一昨日は、週1日だけ夜まで開館しているということで、幼児施設見学が終わって夕方5時からみんなで見に行きました。また、今回は時間がとれずに行けなかったのですが、いつもはオペラを見に行く参加者もいます。オペラや劇を見るときに、その質の高さを感じるのは、もちろんそれを演じる人が重要ですが、その演技を際立たせるような舞台という「空間」が重要です。そして、その舞台での演技をより具体的に表すための大道具や小道具という「もの」も重要です。それらの質の高さが、そこで演じられる内容を高めて行きます。そこで起きる出来事が観客の心を動かして行きます。
建物が保育するというのは、どのような舞台を用意するかということに似ています。そして、園長は、その舞台の演出家であり、ディレクターでなければなりません。もしかしたら、デザイナーかもしれません。それには、演目をよく知り、演じ手をよく知らなければなりませんし、舞台を照らす照明や、音響や、色彩を計画しなければなりません。
このように、保育にも建物の外部の景観、内部の照明、色彩、空間構成などが重要な要素として必要になってきます。このことをきちんと実現している園の見学を昨日しました。それは、オーストリアのザルツブルグにあるシュタイナー園です。
ミュンヘンの町のなかにある多くの建物の玄関のドアはとても大きく、いかつい色、四角に縁取られていますが、ここシュタイナー園では、やさしく子どもを包み込むかのような緩やかな曲線に形作られた入り口になっています。それは、曲線で形作られている自然界をあらわしています。
中に入ると、独特の色使いである壁は、一昨日、美術館で見たモネの睡蓮の絵のようです。
その色使いは、階段の壁面や保育室の壁だけでなく、普通は子どもの写真やマークで自分の場所をわかるようにする靴箱や、ロッカーのしるしのところにも丁寧に絵が描かれており、トイレのマークまでこだわった色使いの紙を使っています。

このように空間演出をきちんとした理念の下に行うことの大切さ同様、その空間に置く「もの」もきちんと吟味をしなければならないのです。その点においても、昨日見学したシュタイナー施設は「もの」一つ一つに意味があります。
例えば、ごっこをするときに、使われるであろう人形の顔は、目鼻がついていないことが多く、もし、ついても人形の表情を示すほどではないくらい小さく、目立ちません。それは、子どもたちの感情を人形に投影しやすいような配慮です。
また、子どもたちが様々な表現活動をするための素材も自然界のものが多くあります。
私は理念としてシュタイナー教育を知っているわけではありませんが、その理論よりも感情や意識を建物や空間、色使い、照明、そこに用意されたものなどから感じることが出来ます。見学に訪れた時間帯は、すでに子どもたちの大半が帰った後でしたが、この大きな空間が子どもを包み込んで、保育しているだろうということが容易に推測されます。
世界遺産に指定されているザルツブルグの旧市街の町並みを歩いていると、その町という空間の中を人が歩き、その空間で人が生活していることを感じます。
私の取引先の園で最近シュタイナー保育を始めた園があって、その理論に基づいて設計されたという園舎をみせてもらう機会がありました。その奇抜な造りを見て、正直言って何を意図してこのようにしたのかよく理解できませんでした。ただ「建物が保育する」というドイツの保育者の信念はよく表れていましたね。園長先生が、子どもたちの生活の舞台の演出家であり、ディレクターであり、デザイナーでもあるという藤森先生のお話には思わず「そうだ!」と膝を叩いてしまいました。新・保育指針の「園長の責務」のところに、そう書いてくれればよかったですね。
前回でしたか、ザルツブルグを訪問されてシュタイナー園について当ブログで紹介頂いておりましたが、その時も、そして今回も私の印象に残ったことが「曲線」構造、ということでした。確かに自然界には「直線」は基本的に存在しないようです。「直線」と見えるものもたいていは「曲線」のようですね。合理性を追求すると確かに「直線」のほうがいいのですが、「自然」と寄り添う、といった場合は「曲線」ということも意識の中に入れておいた方がいい、とブログを読みながら思いました。今回のドイツ研修においてもザルツブルグの市街地の散策ができたり、ミュンヘンのノイエピナコテーク訪問が可能となったり、そしてなんといっても多くの施設見学ができて、その充実ぶりが伺えます。帰国後の報告会がとても楽しみです。
保育内容だけでなく、建物や空間に置かれる「もの」も、理念に基づいていることは、子どもにとって大切なことなんだと思います。ただ装飾する、ただ「もの」をそろえるではなく、どんな考えでそれがあるのか。それが保育内容ともきちんとつながって初めて生きてくるんでしょう。それを園長が演出していくんだとしたら、なかなかやりがいのある仕事ですね。
はじめまして、いつもブログを拝見させていただいています。
世界にはこんなに素敵なデザインの建物もあるんですね。絵本に出てきそうなこの扉を、毎日あけていると、絵本の中の話も、身近なところで本当にある話のように感じられそうですね。
初めてシュタイナーの園を見ました。緩やかな曲線をイメージした入り口は本当に優しい感じがします。保育室も木が多く使っていて、自然素材のものが多く、壁の絵やトイレの看板の色も派手ではなく、落ち着いた色を使っていて、シュタイナー教育というのが知らなかった私でも何となくイメージがつきました。そして、その装飾等を考える園長先生は、藤森先生が言われ通り、ディレクターですね。そして、そのディレクターが演出したいことを理解し実行するスタッフも重要だと思いました。園長先生という仕事は本当に大変な面やりがいがある仕事なのですね。私はそんな園長先生をしっかりとサポートしていきたいと思います。