ドイツ報告のまとめ

 毎年ドイツに行くことで、時代によっての取り組みの変化を見ることが出来ます。一昨年は、コープという新しい施設の取り組み、昨年は、就学前教育での文字、数、科学などの体験保育。今年は、少子化対策の取り組みと試行錯誤が見られました。
doituniwa.JPG
 親手当てのような金銭的に援助する仕組みと同時に、0歳児から3歳児までの保育施設の要望が年々高くなる反面、その数が足りないことに対して、まず、3歳以上の施設であったキンダーガーデンが、0歳児から預かるようにした「コープ」(コーポレーション)という施設での試みがあります。これは、学校局が管轄します。一方、0歳児から3歳児までのキンダークリッペの整備です。これは、社会局での事業です。そして、このキンダークリッペを学校局の傘下にいれようという計画があります。しかし、この計画に対して、社会局やクリッペの現場では反対しているそうです。
toirenopeint.JPG
 今回は見なかったのですが、最近試みているのは、キンダークリッペと、キンダーガーデンを同じ施設で同居しようというものです。日本での「認定子ども園」と同じです。もしまた来年ドイツに行くようでしたら。その施設を見せてもらうことを約束しました。
世界ではいろいろな保育が提案されています。
マリア・モンテッソーリは、医師時代の障害児との出会いをきっかけに、子どもを観察することによって子どものさまざまな姿を発見しました。それまで子どもは、大人によって育てられる「受け身」の存在だと考えられていましたが、モンテッソーリの観察によって、「子どもはその時期その時期に身につけるべき発達の課題とうまく出会う環境さえ整えられれば、自ら育っていく」存在だということがわかりました。
 レジオの保育についてこう書かれています。
「日本の幼稚園の制作と違うのは、「子ども主体」であることです。あくまでも制作の内容や目的などは子ども達の発想によるものなのです。ですから、完成時期もそれぞれに異なりますし、こういったこと以外にも「子ども主体」の保育がされています。」
 その形態について、「レジオのクラスでは混合クラスが主流で、年齢の上の子ども達は、下の子どもの世話を見ることが出来ます。ジャケットを着させてあげたり、靴をはかせたり、あれこれとマナーを教えることが出来ます。下の子ども達は上の子ども達に見習いながら、マナーや言葉の能力など早く覚えるようになります。今度彼らが上の立場になったときには、同じことを下の子どもにしてあげることができます。」
midorinotonneru.JPG
そのほかにも、オールタナティブと呼ばれるようなシュタイナーやフレーベル、さまざまな保育があります。今回、ドイツに行って感じることは、各国で提案されているそれぞれの保育のよいところを取り入れ、ドイツ独自の保育を作り上げていることです。しかし、それらの保育にそれぞれの特徴や違いはあるものの、どの保育についても共通のとこはあります。それは、どこでも、子ども本来自ら育つ力を持っており、それが育つために環境を用意すること、子どもを主体的に捉えること。子どもの選択を大切にすること、そして、そのために子ども集団を柔軟的に考え、生年月日による均一的な発達として捉えないことなどです。
 各国が参考にするような日本の保育があるでしょうか。どの国でも共通するべきところでさえ、怪しいものです。
doitusityosya.JPG
(今回の報告に当たって、子どもの写真はなるべく写りの悪いものとか、後ろ向きを使ったので、見にくいかもしれません)

ドイツ報告5

 今日、ドイツから成田に帰ってきました。と言っても、時差の関係で、ミュンヘンを飛び立ったのは、土曜日の午後ですので、このブログを書き始めたのは土曜日の朝でした。
 ツアー最後の見学は金曜日でした。午前中の見学先は、初めて訪れる「キンダークリッペ」という社会局の管轄である0歳児から3歳児までの園です。ドイツでは、キンダーガーデンという3歳から6歳児までの施設と、最近0歳から6歳までの「コープ」という園の管轄は学校局であり、毎年このツアーをコーディネートしてくれるのは学校局ですので、キンダークリッペを見るのはとても珍しいことです。
 今回の見学先の園は、定員が63名で、毎年の入園可能数が25名に対して入園希望者は500名ほどいるそうです。年齢的には低年齢児だけですが、事情や内容は日本の保育園に似ているものがあります。待機児が多く、ミュンヘン市では、2013年までに定員を2000人増加する計画のようです。それに伴って、保育士もかなり増員しなければなりません。たぶん、場所の確保も問題ですが、どうするのでしょう。日本では、乳児一人あたり3.3?、幼児一人あたり1.98?が最低基準として決められていますが、ミュンヘンのキンダークリッペでは、寝室として一人あたり2?、遊ぶ場として一人当たり3.5?、合計5.5?が最低基準のようです。
 この施設では、コープなどと違って、食材や食育も大切にしています。ですから、ほとんど冷凍食品のキンダーガーデンと違って、出来るだけ地産地消の食材を使い、すべての料理は手作りで、アレルギー児にも対応しているそうです。多いアレルギーは、ミルク、トマト、魚だそうです。清潔そうで、働きやすそうな調理室ですが、私たちの見学のための立ち入りは自由ですし、床は土足で、日本とは感覚が違いますね。
tyourisitu.JPG
 同様に日本と違う感覚なものに、水遊びがあります。まず、キンダーガーデンを含めて、夏の日本の園の定番であるプールがありません。もしプールに入る場合は、業務委託で、希望者だけ費用を払って週1回連れて行ってもらうそうです。乳幼児期は、泳ぐことができるようになるというよりも、水と楽しくふれあい、感触、科学を体験するために水遊びをします。しかし、驚くのは、この写真の右側のほうの子が、その水を飲もうとしています。他の子でも、チューブから水を飲んでいた子がいました。しかし、保育者は止めようともしません。後の質問で、「水の中に薬か何かを入れないのですか?」の答えに、「何かを入れるときは、意図するときです。」と言ったのは、私たちの質問の意図が伝わらず、泡などの体験をさせるために、泡が立つものを入れることがあるということで、塩素などによる消毒という概念はないようです。
mizuasobi.JPG
 また、ドイツの園の園庭は、芝生が敷き詰められ、大木が多く、広々としているのですが、植物と同時にどの園にもあるのが大きな石です。この3歳までの乳児園でも、園庭の中心に大きな石の山がありました。その石の山の頂上から水が出るようになっていて、その水が石の間を縫って流れ落ち、下の砂場に流れ込みます。この石の山に、まだ歩くのもおぼつかない乳児一人で登って行きます。「危なくないのですか?」という質問に、「最初は、職員がみんな危ないのではないかと反対しましたが、様子を見ていたところ、子どもは、自分の能力に沿って登り方や、登る場所や、高さを調整しています。ですから、そのまま見守ることにしたところ、5年間一度も事故はありません。」
isinoyama.JPG
 そこには、保育者の話し合い、理念、目指す保育があるだけで、保護者の苦情によってなどという言葉は出てきませんでした。

ドイツ報告4

 ミュンヘンには、オペラハウスをはじめとして、多くのコンサートホールや劇場や、博物館などがあります。中でも有名な美術館にノイエ・ピナコテークというゴッホのひまわりの絵があるところがあり、一昨日は、週1日だけ夜まで開館しているということで、幼児施設見学が終わって夕方5時からみんなで見に行きました。また、今回は時間がとれずに行けなかったのですが、いつもはオペラを見に行く参加者もいます。オペラや劇を見るときに、その質の高さを感じるのは、もちろんそれを演じる人が重要ですが、その演技を際立たせるような舞台という「空間」が重要です。そして、その舞台での演技をより具体的に表すための大道具や小道具という「もの」も重要です。それらの質の高さが、そこで演じられる内容を高めて行きます。そこで起きる出来事が観客の心を動かして行きます。
 建物が保育するというのは、どのような舞台を用意するかということに似ています。そして、園長は、その舞台の演出家であり、ディレクターでなければなりません。もしかしたら、デザイナーかもしれません。それには、演目をよく知り、演じ手をよく知らなければなりませんし、舞台を照らす照明や、音響や、色彩を計画しなければなりません。
このように、保育にも建物の外部の景観、内部の照明、色彩、空間構成などが重要な要素として必要になってきます。このことをきちんと実現している園の見学を昨日しました。それは、オーストリアのザルツブルグにあるシュタイナー園です。
 ミュンヘンの町のなかにある多くの建物の玄関のドアはとても大きく、いかつい色、四角に縁取られていますが、ここシュタイナー園では、やさしく子どもを包み込むかのような緩やかな曲線に形作られた入り口になっています。それは、曲線で形作られている自然界をあらわしています。
syutainagennkan.JPG
中に入ると、独特の色使いである壁は、一昨日、美術館で見たモネの睡蓮の絵のようです。
syutainanaiheki.JPG
その色使いは、階段の壁面や保育室の壁だけでなく、普通は子どもの写真やマークで自分の場所をわかるようにする靴箱や、ロッカーのしるしのところにも丁寧に絵が描かれており、トイレのマークまでこだわった色使いの紙を使っています。
syutainairo.jpg
このように空間演出をきちんとした理念の下に行うことの大切さ同様、その空間に置く「もの」もきちんと吟味をしなければならないのです。その点においても、昨日見学したシュタイナー施設は「もの」一つ一つに意味があります。
 例えば、ごっこをするときに、使われるであろう人形の顔は、目鼻がついていないことが多く、もし、ついても人形の表情を示すほどではないくらい小さく、目立ちません。それは、子どもたちの感情を人形に投影しやすいような配慮です。
syutainaningyou.JPG
また、子どもたちが様々な表現活動をするための素材も自然界のものが多くあります。
syutainasozai%20.JPG
私は理念としてシュタイナー教育を知っているわけではありませんが、その理論よりも感情や意識を建物や空間、色使い、照明、そこに用意されたものなどから感じることが出来ます。見学に訪れた時間帯は、すでに子どもたちの大半が帰った後でしたが、この大きな空間が子どもを包み込んで、保育しているだろうということが容易に推測されます。
 世界遺産に指定されているザルツブルグの旧市街の町並みを歩いていると、その町という空間の中を人が歩き、その空間で人が生活していることを感じます。

ドイツ報告3

 昨日の見学先は、午前も午後も「コープ」と呼ばれる施設です。「コープ」と呼ばれるコーポレーションとは、バイエルン州郡ミュンヘン市学校局指導の下に作られている0歳児から就学前の子どもを預かる施設です。
inenrei.JPG
いわゆる3歳以上児を預かるキンダーガーデンを管轄している学校局が0歳児から預かる施設を作ったということです。ドイツでは、0歳児から3歳児まで預かる施設として社会局が管轄するキンダークリッペという施設があるのですが、その施設をコープのように学校局の傘下に入れようという動きに対して、社会局の人たちは反対しているそうです。「子ども園」を進めようとしている日本とまったく同じようなことが起きていますね。
 午前中見学したコープは、1998年に設立された生後9週間の乳児から就学前幼児までの子どもがいる、外観に描かれている絵の通り「ちょうちょう」と呼ばれている園です。園のしおりの序文の1節「建物の外壁は『建築物への芸術』という名の下にコンテストを行い、選ばれた芸術家ステファニー氏の手によるものです。外壁を覆う木材の青色は、芸術的な提案により、きらきら光る、銀色の蝶々によりデコレーションされています。
tyoutyougaiheki.JPG
ステファニー氏は更に園の入り口に、合計30匹の様々な種類の蝶々と蝶々が絡むえさとなる植物を、色筆で描きました。彼女の、建物正面から室内、そして外の領域までにいたるコンセプトは、幼少時から動物や植物と共生するという思想上のコンセプトに見合ったものでした。
tyoutyougenkan.JPG
建物の構成は、人間が観察し、知識を得、自分の経験を通して、当たり前のようにここの仲間に入ることが出来ることを象徴しています。同じように、庭造りにおいても、蝶や青虫、賀などが集まってくるように餌場を配しており、それを通して子どもたちに自然の生命たちがどのように成長していくのか、1例を示します」というくだりは、3番目に建物が保育するという考え方が裏づけされています。ただ、面白そうな、斬新的な建物ということでなく、どのような保育を目指し、建物という空間の中で子どもたちのどのような活動が成されていくかをきちんと見ていく環境の作り方は素晴らしいですね。
 これらの建物に生命を与える存在として、136名の園児と26名のスタッフが共存の経験と、価値を発展させ、根付かせていくという考え方を持ちます。幼稚園を創設したフレーベルによって名づけられたキンダーガーデンは、まさに子どもの庭という空間であり、建物、その色彩まで意味を持たせたシュタイナー学校にもその精神が感じられます。初めて見学した人に強い印象を与える色彩、室内装飾も、教育的に意味のある働きかけをするものとして計画されます。この気持ちのよい雰囲気の中で、子どもたちは守られていることを感じ、豊かな社会的なコンタクトや発見する学びが促されると園のしおりにあります。
 次に、コープの特徴は、0歳児から6歳児まで異年齢で生活をしていることです。これについて、しおりには、「小さな子どもたちは大人からの援助を受けるだけでなく、年上の子達からも助けてもらえる。これは過小評価することの出来ないことである。子どもは、大人と他の子どもたちの二つの側面から成長の度合いを認められ、大きい子たちは小さい子を迎え、その子たちのリズムを考慮する。そして、任せられた責任を喜んで引き受け、毎日の生活の中で、小さい子たちを助けてあげる」とあります。
 午後は、建設省の建物に囲まれ、そこで働く人の子どもたちのために定員の30%余りが用意されているコープを見学しました。この園のテーマは、ジェンダーフリーでしたが、男性保育者が一人もいないことに、ちょっとがっかりしました。
kensetusyokop.JPG

ドイツ報告2

 ドイツを訪れての研修は、参加者の第一印象は、とてもハードな研修だということです。それは、日程のほとんどは、乳幼児施設見学があり、夜は毎晩1日の振り返りによる研修があるからです。しかし、その日程の中で、1日だけ参加者がフリーな夜があります。それは、私がミュンヘン市の教育局の統括責任者のグレッチェさんに食事を招待されるからです。今年は、ほかに二人誘ってもいいということで招待を受けました。昨日の見学が17時頃終わって解散した後、少しおもちゃやさんや本屋さんを見て歩いた後、約束の7時までに指定された場所に行こうとタクシーに乗りました。住所を提示し、運転手さんはナビを見ながら現地に着きましたが、どう周りを見渡してもレストランらしい店は見当たりません。しかし、住宅街にひっそりと素敵なレストランがあることがあるので、そんな店だろうと思って住所の場所に行ってみると、そこは、グレッチェさんのご自宅でした。玄関で出迎えてくれたご主人と挨拶をして中に入って、部屋を突っ切り庭に出てみると、そこに食事の用意がしてあり、庭の向こうでご主人が肉を焼きはじめました。いわゆるガーデンパーティーです。なんとも、優雅な気分になりました。
gurettyetaku.jpg
 その夜の会話の中で、グレッチェさんが、「一級の保育者が第一に保育し、二級の保育者(これは、保育助手のような資格)が第二に保育し、三番目に保育するものは建物である」と言いました。そのように、ドイツではとても建物が保育の質に影響すると思われています。昨日の見学先は、午前中に見たところも、午後に見たところも重要文化財として保存されているところでした。午前中の建物は、音楽学校と併設されており、一時は、保育者研修所としても使われていたところです。
entatemono.JPG
午後の見学先は、もと小学校として使われていたそうです。そういえば、昨年の見学先に、もと大衆浴場だったところがありました。このようにドイツでは、古い建物を改装したりしてキンダーガーデンにしたところが多くあります。
 そのほかに多いのは、遺言で幼児施設として使って欲しいと寄付された建物が多いそうです。なかには、狭すぎたり、使いにくい空間であったりすることもあるようですが、それを上手に改装し、古い建物を上手に活かしています。
 それらの見学先で、やはり参加者の気になるところは、怪我に対する保護者の苦情です。というのは、日本ではたぶん危ないと注意されるであろう箇所が多いこと、手すりなどの内側に子どもが登れる椅子が置いているなど危険防止のための配慮されていない箇所がずいぶんあるからです。そのために、保護者は怪我をさせることに対して、苦情を言わないのかという問いに対して、やはり苦情はあるそうですが、それを受けて未然に防いでしまったら、子ども自らの危機回避能力がなくなるから、怪我を余り恐れないということでした。これは、建物が保育するということのひとつの例でしょう。
enteibousi.JPG
 また、今回も驚いたことのひとつに保育者の子どもへのかかわり方です。これも何度かブログで書きましたが、園庭で遊ぶ子等は、今の日差しが強い中でも、日向で遊ぶ子が多いこと、その子が帽子をかぶっていないことが多いこと、保育者が傍で、りんごをまるかじりしたり、お茶を飲んでいたりしていて、それほど子どもと一緒に遊んでいないことが多いことにびっくりします。
otya.JPG

ドイツ報告1

 昨日のドイツ研修では、午前9時から12時まで1箇所見学、午後2時から4時まで1箇所見学をし、夜の報告研修会を2時間行いました。
 昨日の見学先は、3歳児から6歳児までのいわゆるキンダーガーデンと呼ばれる施設です。午前中の見学先は、インクルージョンがテーマの園で、障害児を含めた統合保育を行っているところで、午後は、ダンスに力を入れている園です。
 朝早く訪問したのは、朝の集会(お集まり)を見せてもらうためです。時間になると3?5歳児が円形にお集まりをはじめます。欧米では、子どもの集会を行うときには、ほとんど円形に集まります。それは、全員の顔がお互いに見えるからです。大人でも、ワークショップを行うときには円形に集まることが多いです。この日の課題は、近々行われるサマーフェスティバルでの役割を決めることです。子どもたちは、そのときに、太鼓をたたく役割、火の踊りを踊る役割、ベリーダンスを踊る役割など三つに振り分けます。
 そのようなときの方法は、必ず、子どもの意志で決めさせるということです。1日の保育の流れは、ほとんど子どもたちが何をやるかを決めることになっています。まず、保育者が、表情豊かにそれぞれの役割を演じて見せます。そのあと、自分自身で石ころに装飾したものを持って、真ん中におかれたそれぞれの役割の小道具のところに、自分のやりたい意思を、石を置くことで表します。(しゃれではありません)ほとんどの子が太鼓の場所に置いていましたが、その調整はどうするのでしょうか。
isikettei.JPG
 このような自分の決定権は、すべてのものの中で行われます。例えば、保護者へのダンスの発表会で、エンデの時間泥棒「モモ」を演じたダンスの映像を見せてもらいましたが、どのような子が演じているのかというと、年長児は全員義務だそうですが、その他の年齢の子達は、演じたい子が参加するそうです。その振り付けも、基本的には場面ごとにどんな表現が適当かを子どもたちから出してもらい、その振り付けにあった音楽をあとから選ぶそうです。音楽を保育者が決め、その曲に合わせて教えられたダンスを必死に覚え、それを披露する日本の発表会とはだいぶ違うようです。ただ、この中で、どうしてもこのような太鼓を使わせたいとか、このリズムを体験させたいということが保育者の中にある場合は、子どもたちがそれを選ぶような誘導をすることはあるようですが、そこまでのステップは、マニュアルがないようで、その質問には答えることが出来ず困っていました。
 このように、見学先でよく聞く言葉の一つが「子どもの選択」です。日本でも、「子ども主体」という言葉をよく聞きますが、同時に「保育者の主体」も行われている気がしますが、こちらでは、徹底して子ども主体です。外でバルーンを使っての保育を見たときにも、「この子達はやりたい子が集まっているのです」という保育には、障害児が入っていても気がつかないほど自然に行われている姿が見えます。
BARUN.JPG
 これを一歩進めたのが評価です。昨年、ドイツに来たときに各園の玄関に掲示されてのが、親の保育に対する評価でした。それが、今年どの園にも掲示されていたのが、子どもからの評価です。
KODOMOHYOUKA.JPG
3歳児から行うそうで、園が好きか?から始まり、どんなときにいやになるか、どんな先生が好きで嫌い家などの項目が並びます。「ストレスが溜まっていたり、いやな顔をしながら保育する先生は嫌い!」という評価は、当然ですね。

ドイツの少子化対策

 ドイツでの少子化対策がなかなか成果が上がらないのは、国の金銭的援助よりも託児サービスの充実が遅れているという点のようです。日本同様に公立保育所(これは、日本で言う公立保育園ということではなく、公的資金援助を受けている園というような意味で、その職員は、必ずしも公務員ではないようです)は待機児が多く、民間の保育所は空いていても、保育料が月1人900ユーロもかかるようです。また、労働局のウェブサイトからベビーシッターを頼んでも、月1000ユーロかかるようです。ですから、仕事との両立は子どもを預かってくれる祖父母が身近にいるかにかかっているというように日本と同じ状況です。
  もうひとつ、日本同様な状況に、「子育ては母親が一番」という風潮がまだ占めていることもあるような気がします。ドイツでの知り合いの方が、3月に三年間の育児休業があけて働き始めたのですが、何で3年間も育児休業を取ったかというと、それよりも早く職場に復帰すると、「よほど財政的に大変なんだね」といわれてしまうからというのも大きな理由だそうです。職場の観点からみると、早く職場復帰を果たす理由に、企業側から、専門職の女性が育児で職場を離れることになると、その補充要員の雇用に伴うコストの高くなるということと、親の立場から、めまぐるしく変化する企業環境の中で、専門知識をフォローアップできず、遅れを取り戻せなくなる危険性があるとするだけでなく、子どもにとって少子社会においては、乳児から子ども集団体験も必要であるということを社会的に認知してもらう必要がある気がします。ただ、今の日本のように、10時間も、12時間も園に預けざるを得ない社会はおかしいと思いますが。
doituoatumari.JPG
  北欧4カ国は合計特殊出生率1.7以上と欧州で最も高いレベルにあります。マックスプランク人口研究所の調査報告書(04年)によると、北欧の共通点は、託児および育児インフラが充実していること、仕事と育児の両立を援助する政策方針がとられていることだとしています。この両立援助は父親も対象としています。結果的にどの国も女性の就労率が約80%(20、30代)と高く、例えばデンマークでは1?3歳児の親の8割が保育所を利用しており、育児か仕事かの二者択一の必要がない環境にあるようです。
ですから、私たちがうらやましいと思う「親手当て」は、余り効果は期待されておらず、ドイツ経営者連合は、託児施設の整備を優先するべきだとしています。そこで、保育所増設計画が始まりましたが、以前のブログでも書きましたが、早くから子どもを預けることに対して、反対は多いようです。ドイツ南部のカトリックの司教が、女性が出産直後に職場復帰を果たさなければならなくなるのは、女性から育児の機会を奪うことになり、「女性を『産む機械』におとしめるものだ」と批判したことは以前に書きましたが、この発言は、出産・育児をめぐる女性の役割へと議論を巻き起こしているようです。「シュピーゲル」(電子版)誌では、ドイツ社会に根強く残る「育児は女性の仕事」という伝統的な性役割認識を改める必要があると主張しています。女性が各分野で活躍している国は出生率も高いとして、アイスランド、スウェーデン、ノルウェーを取り上げ、これらの国では仕事と育児を両立できる環境が整備されていると指摘しています。
doitusakka.JPG
 しかし、私はもっと、子どもにとっての乳児保育の研究を進めて欲しい気がします。やはり、女性は出産をする体であり、育児は母親の役割が大きい気がします。だからといって、母親だけで育てればよい訳ではありません。また、社会は、権利ではなく、男女両性がいてこそ作られていくものです。少子化は、育児のあり方、社会のあり方を問う問題です。

ドイツの少子化

 今回のドイツでのホテルは、珍しくネット環境が良いので、ブログでドイツ事情を報告しようと思います。今日は、まだ着いたばかりなので、見学先の報告はありませんが、ドイツの少子化について書きます。
各国が少子化対策をしているのですが、そのやり方は必ずしもわが国でも行えばいいのではないような気がします。なぜかというと、微妙なところで、子どもを生まない理由が違うからです。それは、その国の歴史や風土にも関係しているからです。ただ。おおむね傾向は似ているので、参考にはなります。
ドイツで高学歴の女性ほど子どもを生まない傾向があることは、日本でも同じような傾向があります。それは、ドイツでは、かなり多国籍の人が住んでいるからです。といって、多国籍の人が低いということではなく、まだまだ、その人たちを支援する体制が取れていないこともあるようです。ですから、ただ「産めや増やせ!」ではなく、将来専門能力をもつ人材の不足が懸念されるというように、どのような人材を今後確保するかという視点もあるということでしょう。そのひとつが、「親手当て」です。
Elterngeld (=親手当て)については、「Harenburg Aktuell 2007」にこのように書かれてあります。
「2007年1月1日以降に生まれた子供に適用される。親が育児のために休職する場合、または週30時間以内のパートタイム勤務をする場合、産後一年間にわたり所得に応じた金額を受給できる。受給額は月1800ユーロを上限に育児休職前の手取り所得の67%。パートナーが追加的に2カ月休職または週30時間以内の時短勤務をする場合、また片親しかいない場合は、支給期間が14カ月に延長される。失業者や無収入者には300ユーロの定額支給」
この制度についてドイツミュンヘンの教育委員会の局長さんに聞いたところ、その意図をこう話していました。今までは、親が自分の下で3年間育児を出来るように3歳まで育児休業が取れました。しかし、近年、少子社会では、OECD(経済協力開発機構)のECEC(乳幼児期における教育と養護)ではありませんが、乳児保育の重要性が見直されてきたのです。それは、乳児にとってもある時間、子ども集団の中での育ちが必要ではないかということで、少子社会では、家庭で3歳まで育てられるとしたら親子関係でしかなくなってしまうから、育児休業を減らして、その代わり1歳までの育児休業を手厚くするのだと言っていました。もちろん、これは教育委員会での見解であり、国としては女性の社会進出、育児つぃごと両立支援ということからもあるでしょう。
その流れから、数年前からキンダーガーデンといわれる幼稚園では、0歳から子どもを預かる施設が急激に増えました。そして、そのほかには、産休中の所得保障はドイツが100%、日本は60%。児童手当はドイツが子供1人月額154ユーロ(ほぼ26000円)に対し、日本は5000円。給付期間は、ドイツは原則学業修了までで、最長25歳までですが、日本は小学校修了までで、しかも、高所得者は対象外です。さらにドイツでは昨年、年間1人4000ユーロを上限に託児費用の税控除制度が導入されました。
しかし、それでもなかなか少子化は解消できないようです。日本と同様に、産まないのは、ただお金の問題だけではないようです。OECDの研究では、金銭的援助より託児サービスの充実度が出生率に与える影響力が強い、という結果がでています。もちろん、この充実は、数の問題だけではなく、質の問題ですが。

ドイツへ

 私は、毎年ドイツのミュンヘンに行っています。昨年もその研修報告を現地からお送りしました。しかし、毎年心配なのは、現地でインターネット環境が整っているかということです。毎年行っていると、その日進月歩のごとくその環境は整備されていると思いますが、印象としては、日本ほど進んでいません。日本は、携帯電話にしても、ホテルでのネット環境は年々整えられていますが、ドイツでは意外とそうでもありません。ですから、出発前に心配なのです。
 しかし、幼児教育、学校教育への取り組みは年々新しいものが見られます。特に、毎年同じ都市を訪ねて、じっくりと園や学校を視察してみると、新しい流れが見られます。それは、欧米の先進国といわれている国々に共通して見られることです。逆に日本では、なかなか変えようとしません。極端なことを言えば、明治時代に視察に来た人が、最近もう一度学校をたずれたら、たぶん変わっているのは、前のほうにあった一段高くなっている教壇がなくなっているくらいでしょう。
少子化は、先進国家に共通して見られる現象です。少子化が将来国家として大変になるという実感はどの国も同じようで、様々な施策を出しています。これは、日本でも同様です。そして、欧米では、保育、教育内容を見直して行きます。ですから、昨年よりも今年は、このように変化をしてきて、これからどのようにしようとしているのかが、わかります。日本でも、ここで、保育所保育指針と幼稚園教育要領の改訂が行われました。それに伴って、どのように現場が変わっていくのでしょうか。特に、保育所は、指針がガイドラインから最低基準として大綱化になったことで、それぞれの園がどのような創意工夫のある保育を展開するでしょうか。
ドイツ連邦統計庁によると、2006年の新生児出生数は約67万人で第2次大戦後最低を記録しました。特に旧東ドイツ地域では社会主義体制の余波で経済成長が遅れ、旧西ドイツ地域に流出する若者が続出しています。東側では90年代、合計特殊出生率が0.7?0.8台と危機的水準に達しました。06年には1・30(旧西側は1・34)まで回復しました。特に、西部デュッセルドルフや毎年私が訪れている南部ミュンヘンなど一部の富裕都市では、逆に出生数が増加しました。それによって、経済格差が少子化に反映する状況が浮き彫りになりました。
少子化は先進国共通の悩みですが、中でもドイツと日本は少子化の指標である出生率が際立って低いレベルです。同じ欧州でもフランスや北欧などが出生率を持ち直す中、世界で最も低い部類に属しています。このため、連邦政府は人口減に歯止めをかけようと、今年から少子化対策として、従来の「Erziehungsgeld(養育手当)」に代わって新たな子育て支援制度「Elterngeld」(親手当)を導入しています。親手当とは、生後間もない子どもの世話のために休職する親の収入損失を補うものです。原則的には産休前の手取り所得の67%が補償されます。従来の養育手当では、手取り年間所得が両親合わせて3万ユーロ以下の比較的低所得の人を対象とし、額も一律月300ユーロだったのに比べて、新制度は高所得者にも受給資格を与える上、高所得者ほど金額が高くなるという、公的年金や失業手当と似た仕組みです。
このような制度改革と同時に、保育内容はどのような変化をしているでしょうか。

食事と授業1

食事は、朝ごはんだけでなく、とても重要なものです。先週の日曜日に長野県小諸に講演に行ったときに控え室で同席した人がいました。その人は、別の講座で講演をした、上田市の前教育長の大塚貢さんです。上田市は、以前、非行、犯罪が絶えなかったのですが、現在、非行、犯罪ゼロ、いじめもゼロ、そして全国平均より抜きん出て学力が高いそうです。それは、「授業改善、米飯給食、花作り」によって子どもたちの心身を甦らせたからだといいます。ジャーナリストの櫻井よしこさんとある雑誌で対談をしています。
 まず、授業改善です。大塚さんが平成4年に中学の校長になったとき、学校はとても荒れていました。強盗、窃盗など非行というより犯罪も多く、学校の廊下をバイクで走ったり、窓ガラスは次から次へ割られ、全校生徒1200名の大規模校でしたが、不登校も常に60?70名はいたそうです。そこで、教室を見て回ったところ、とにかく授業がつまらない。何を教えているかも大塚さんでもちっともわからない。だから机に伏している生徒が多い。大塚さんは、民間会社にいたこともあり、そこではこんなつまらない授業をしていたら首になるだろうというレベルだったそうです。そこで徹底的に研究授業をやり、先生同士がお互いに切磋琢磨しあう。また、それぞれが教材研究や指導方法を研究していく。すると、次第に授業のレベルが上がってきたといいます。授業が面白いかどうかは、子どもの姿勢でわかるといいます。次第に、机に伏している子がほとんどいなくなり、姿勢を正して授業を聴くようになって行きました。「学級崩壊とか子どもが本気で勉強しないといいますが、99%は授業がつまらないのを子どものせいにしているだけだと思います。」と言い切ります。
 しかし、それだけでは完全に非行やいじめはなくなりません。そんな時、朝礼でバタバタ倒れたり、遅刻したり、登校しても保健室にいる子たちを見て、まだ、食育など言われなかったころでしたが、もしかしたら食と関係しているのではないかと思ったそうです。そこで、朝早くからコンビニエンスストアで張り込みをして、様子を見たのです。また、食の調査もしてみました。すると、お金だけを持たせてコンビニで好きなものを買わせる母親、朝食を食べてこない子が38%、食べてきた子でも合成保存料や着色料、合成甘味料だらけの食材、夜はハンバーグや焼肉ばかりで、カルシウムやミネラル、亜鉛、マグネシウムといった血液を柔らかくしたり、血をきれいにする栄養素は全く摂取できていないことを知ります。だから子どもたちの血液がドロドロで、自己コントロールが出来ない体になって、普段は無気力でありながら、突如自分の感情が抑えきれなくなってしまう。「これでは、いくら、非行を起こすな、いじめるな、勉強を本気でやれと言ったところで、体がついていかないのです」と大塚さんは言います。
では、母親たちに何とかバランスの良い食事を作ってくださいと呼びかけたところで、今のお母さん方には全く聞き入れてもらえなかったそうです。それが、大塚さんの他の人と違うところです。「全く、今の親は!」とか、「親がそれだから仕方がない」ではなく、「では、学校給食の改善をしよう!」ということで、取り組みを始めたのです。なるべくお腹にたまる米飯に切り替え、野菜や魚を中心にしたバランスの良い献立の給食にしようとします。しかし、それは、はじめは「子どもの好きなものを食べさせろ!」という親からだけでなく、教師からも配膳が大変になるなどと反対を受けます。(つづく)