座る

最近、畳の使用が減ってきたというのは、仕事や生活における姿勢が変わってきたということにもなります。それは、椅子に座っての仕事や生活が増えたということにもなります。子どもたちも、勉強するときに、寺子屋とか藩校など江戸時代までは、畳や板の間に正座をして座卓といわれる低い机で勉強をしていました。それが、明治維新後、外国の教育制度を取り入れて、兵隊の宿舎をモデルとして学校建築が建てられ、教室内は、椅子に座って、先生の話を聞く形態になっていったのです。それ以後、現在に至るまで、その形態は変わりません。
家庭でも、私が小さかった頃は、茶の間で、裁縫やアイロンがけなどをしている母親の傍で、ちゃぶ台の前に正座して本を読んだり、勉強をしたものでした。それが、中学校になることには、子ども部屋に、いわゆる勉強机の前に椅子に座って勉強をするようになりました。何年か前にザルツブルグにあるシュタイナー学校に行って授業参観したときにびっくりしましたが、小学1年生は、座卓を机として、床に座って授業していたのです。もちろん、日本のような正座ではありませんが、尻の下に布団ようような物を入れて、ちょっと立てひざのような格好でしたが、この方が勉強に集中できるようですし、立ち歩くようなことをしないようですので、日本でも見直してもいいかもしれませんね。
しかし、このような椅子に座る生活は大人の社会でも同じです。厚生労働省の「健康づくりのための年齢別・対象別身 体活動指針」の中では、労働も含めた生活のなかで身体を動かすことの全てを「身体活動」と捉え、座る時間と立つ時間は、五分五分であることを望ましいと しています。約8万時間と言われるオフィスワーカーの生涯労働時間の中でどのように行動するかによって、オフィスにおける作業能率もワーカーの健康も多大に影響 されるようです。
とくに、オフィスの仕事では限られた感覚のみを使用して作業を進めがちであり、これが精神的疲労を招きやすいといわれています。オフィスとは働くための場であり、そのた め、リラックスするための空間は軽視されやすいのですが、実は、仕事によってストレスを感じている人が、自らの能力を十分に発揮できるようになるためには、オフィスに もストレスを軽減させるような環境作りが求められるのです。そのような環境は、人間の五感の活性化やストレスの軽減は知的生産活動に大きな効果を与えるのです。
 学校でも、最近姿勢のわるい子、上半身を背もたれにぐったりとあずけて座る「安楽姿勢」の子が増えているようです。このような姿勢では、背骨に沿っている大動脈が圧迫され、勉強の能率は上がりません。この安楽姿勢やその言葉の通り、脳からは「安楽しなさい」という指令が出るので、当然、勉強するときには不向きです。それだけでなく、姿勢が悪いと骨格・筋肉・内臓に、余計な負担がかかります。ですから、腰痛・肩こりなど、身体に悪影響が出てきます。正しい姿勢は、身体にかかる負担が少なく、内臓の働きもスムーズになります。また、背すじを伸ばすことで、全身に適度な緊張感がいきわたり、ゆるんだ筋肉を引き締めることができます。
椅子に座る生活が基本となっている現代社会では、椅座以外の姿勢と感覚刺激を加えることによって、ストレス軽減効果や作業効率も上がり、身体的にも負担が軽くなるようですので、たまには、床に座ったり、立ち歩いたり、様々な五感を刺激することを取り入れていけるような環境が必要なようです。

座る” への4件のコメント

  1. イスに座ることと床に座ることのメリットデメリットについて、少しだけ悩んでいました。子どもたちにとってはどちらがいいんだろうと、それぞれのメリットを考えながら悩んでいたのですが、どちらも大切にすればいいんですね。どちらか1つにしなければいけないわけではありませんでした。簡単なことです。でもせっかくなので、それぞれのメリットについてもうしばらく考え続けようと思います。

  2.  私は小学校の頃から習字を習っていました。その時はもちろん正座で書いていました。姿勢が悪いと気持ちが落ち着きませんし、適度な緊張がないと綺麗な字を書くことが出来ません。正しい座り方というのは字を書くだけに限らず本当に大切なことだと思います。確かに仕事や生活の中で座る姿勢が変わってきたのはそうかもしれませんが、たまには座卓位の高さの机で仕事をするのもいいと思います。保育園でも椅子に座る方が多いと思うので正座を教えるのもいいかもしれません。

  3. 今また都会では、座禅や写経がブームになっているとニュースで言っていました。どちらも宗教の修行法ですが、体から余分な力を抜いて緊張のない自分の最も自然体で、背筋はまっすぐ伸ばす、心を落ち着けて精神を集中することが大事なようですね。仏教では「色心不二」といって、心と体は相互に密接な関係性を持つと説きますが、体と心の健康のバランスを保つには、姿勢を正して「座る」ことも大事かもしれません。

  4. ブログタイトルが「座る」とありましたから、道元禅師の「只管打座」のことか・・・と思ってしまいました。妄想癖があると話の本筋から外れてしまいます。さて、現在は椅子に座る生活が多いのですが、田舎暮らしの頃は専ら畳やマット床に座布団を敷いて座って食事をしたりテレビを観たり、あるいは寺子屋まがいのことをしていましたので正座やあぐらの状態で学習のアシスタントを行ったりしていました。ザルツブルグのシュタイナーシューレのケースを紹介されていましたが、確かに床に座って学習を始めるとフラフラ立ち歩くという行為を子どもたちはしませんでした。教室スタイルで勉強をみたこともありますからその違いがよくわかります。現在暮らしているところでも一家団欒の時間は畳の上ですね。ありがたいことです。

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