2008年04月27日 [地域を知る]
日本の風景
いろいろなところを訪れてみて、日本はとても美しい国だとつくづくと思います。それは、四季を巡る自然であったり、変化に富んだ海や山などの自然の景色であったり、人と自然が共生している里山であったり、人々の暮らしであったりします。
それらの美しさは、実際に展開されるだけでなく、小説や映画の世界でも展開されます。先週訪れていた庄内平野にある鶴岡市は、まさに春の盛り、藤沢周平が描いた世界と、その原作を基に黒土三男監督が映画化した世界とが微妙に重なり合って、美しい世界を表現しています。
映画「蝉しぐれ」のオープンセットが残されています。
ここは、当然架空の藩を舞台にした原作を基にして、架空の主人公の世界を残しているのですが、日本のある美を実際に見せてくれます。この「蝉しぐれ」は、藤沢周平作の長篇時代小説で、藤沢作品のなかでも代表的な小説のひとつであり、1986年から山形新聞」夕刊で連載され、その後文藝春秋社 から単行本として刊行されました。
この小説のストーリーは、幕末時代の山形県庄内地方に設定された架空の藩、海坂藩を舞台に、政変に巻きこまれて父を失い、家禄を没収された少年牧文四郎の成長を描いています。木立と清流に囲まれた組屋敷は、長屋の構造をしていて、庭は隣と繋がっています。
隣に住んでいるのは、お福という年下の女の子です。この組屋敷という長屋の構造が、主人公たちの人の付き合いを表しており、進んでいくストーリーの環境として物語に情感を与えています。小説の中で生き生きとした文体で表現される日本の自然は、映画の中でも再現されています。それは、この舞台であるひろく広がる庄内平野に整然と区画された水田、その周りにはみどりに茂る林と、長屋の周りにわずかにある木立、屋根の上に草が生えている家、その背景しての出羽三山、オープンセットを訪れると、まさに小説の世界がそこにありました。
「蝉しぐれ」の原作者藤沢周平は、その小説の中での自然描写が多く、まさに東北の小藩「海坂藩」がそこにあるように、地形、気候、生活が描かれています。ですから、読んでいてもそれがイメージでき、映画化された風景を見ても違和感がないのでしょう。それは、この文庫版の目次を見ても、如何に自然とかみ合った話であるかということがわかります。小タイトルの中で自然が入っているのをあげてみると、「朝の蛇」「夜祭り」「嵐」「雲の下」「黒風白雨」「蟻のごとく」「落葉の音」「梅雨ぐもり」「暑い夜」「秘剣村雨」「春浅くして」「行く水」そして、最後の章の「蝉しぐれ」と続きます。ここには、「朝」「夜」「しぐれ」など1日の流れ、そして「雲」「風」「雨」「嵐」「梅雨」などの天候に関するもの、「蛇」「蟻」「蝉」などの生き物、そのほか「黒」「白」、「落葉」「暑い」「浅い」「くもり」など、たったこれだけの中にずいぶんとたくさんありますね。
これらの言葉には、あるニュアンスが含まれています。それぞれの情景が思い浮かびます。この微妙さが、日本独特なものかもしれません。言わなければわからない時代に、次第にこの微妙さを感じなくなってくるかもしれません。
投稿者 fujimori : 2008年04月27日 21:33
コメント
日本独特の微妙さというけとを他の言葉でうまく言い表せませんがよくわかります。言葉にできない感覚や言葉に込められたものの奥深さといったものを感じることに、日本人の豊かさがあるようにも思います。感じると言っても、そこに言葉は必要だと思います。どれだけ体験や環境を通して言葉を獲得していくかは、もっと大切にされなければいけないと思っています。
投稿者 あいやま : 2008年04月28日 19:20
藤森先生のブログに影響されて、藤沢周平の「隠し剣秋風抄」を読み始めました。久しぶりの時代小説でなんだかわくわくしています。今日の組屋敷の写真を見ていると、小説の主人公が木戸を開けて、ひょっこり顔を出してきそうなほどリアリティーがありますね。それに、つくづく日本は美しい国だと実感させられます。映画「蝉しぐれ」は2005年公開のようですので、ビデオショップで探して観てみようと思います。小説のほうも読まないと…。このブログのおかげで本当に毎日が充実しています(笑)。
投稿者 yamaya49 : 2008年04月28日 20:54
写真の風景は本当に美しいですね。しかも、この風景が人間の手で作られているとは驚きです。時代劇をテレビでたまに見るときがありますが、そのたびに今回のブログのような写真や昔の町並みというのは自然との調和が取れていて心から美しいと思います。そして、それぞれの季節の風景を一言の言葉で表す事ができるのも日本語の素晴らしいところだと思いました。
投稿者 Sasuke : 2008年04月29日 13:04
日本は本当に美しい国だと思います。こうした「美しい国」の住人である私たちも本来的に美しいはずです。この本来的美しさを私たちはお互いのなかに見出し、おのおのの美しさをさらに美しくする為に切磋琢磨していかなければならないと思います。そうすることにより「美しい国日本」はその本来的姿を私たちの前に現してくれることでしょう。私たちの美しさとは何か?具体的にひとつひとつ意識しながらその「美しさ」の認識を深めることが今とても必要な気がします。ブログ掲載の写真を観ると「わび」「さび」の何たるかを思い知らされます。日本美の真髄を味わうことができると言っても過言ではありません。この「美しさ」を守るために、私たちは考え行動し、そして変っていかなかればならないと思った次第です。
投稿者 toshi0326 : 2008年05月01日 23:07