衝立

保護者から、玄関のところに置く「衝立」をいただきました。以前から、私は欲しかったものです。よく時代劇などで、玄関先で「たのもう!」と声をかけるときに、その前に視覚を遮るかのようにデンと立てられていうものです。
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 「たのもう」は、今でいうと、「今日は」と主人に来訪を知らせることです。昔の玄関は広く、向こうまで見通しがよかったので、一度視線と、押し込みを遮るために置かれていたものと思われます。
 「衝立」は、「ついたて」と読みますが、もともとは移動できる間仕切りのことです。一般的には「衝立障子」のことをさすように、私の園でも、衝立は障子でできたものと、竹などの格子や板などでできたものがあり、洋風に言えば「パーティション」です。これを使って、昔は空間をフレキシブルに活用していました。
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しかし、私が欲しかったのは、玄関に置く衝立です。もちろん、子ども用の玄関ではなく、来客用の玄関です。風水では、これを玄関に入ってすぐのところに置くと、ツキが入ってこなくなるといわれていますが、逆を言えば、私はツキが逃げていかなくなると思うのですが。まあ、ツキが入るだけの隙間は空けて置きますが。
この玄関は、とても深い意味があります。玄関という言葉は、老子の第一章にある「玄之又玄衆妙之門」(玄の又玄なる衆の妙なる門)が出典です。玄のまた玄、衆妙の門、つまり幽玄の道の入口という意味です。「玄」は奥が深い悟りの境地を意味し、「関」は入り口のことで、玄関は玄妙な道に入ることから転じて禅学に入門すると言う意味になり、日本では書院造、禅寺の客殿や方丈などへの出入り口として造られたものです。住居用に書院造の普及しはじめた江戸時代以降に武家屋敷の式台(戸口の前の板敷きの縁)付きの入口となり、住宅に玄関が設けられるようになりました。そして、現代の住宅の入口という意味に変わってきたのです。
ここでいう「玄」はとても深い文字です。宮沢賢治の「雨にも負けず」の一節に「一日に玄米四合と味噌と少しの野菜を食べ」という中の「玄米」にも「玄」が使われていますが、この玄米を英語で言うと、Brown riceと言いますが、まだ精白されていない状態の米のことを言います。また、「玄人」という読み方は、「くろうと」と読みますが、黒よりももっと位という意味です。それは、もとは、黒い糸を束ねた形が転じて、かすかに見えるところから、天の色にあて、黒の意味を持つようになったといわれています。
また、老荘(老子、荘子)の学のことを深遠な学問という意味から「玄学」と呼ばれ、それに「易経」を加えて三玄の学ともいいます。これは、魏、晋の哲学であり、仏教の色即是空の空の解釈にも影響を与えています。
私の園の色彩計画で園のテーマカラーは紺青ですが、各階、各年齢によってテーマカラーがありますが、最上階の園長室とセミナー室は「黒」です。すべての光を受け入れ、吸収し、また、すべての色を混ぜることによって出来る色「黒」です。キトラ古墳の玄武という神獣も、玄という字がつきます。玄武は、中国の神で、北方を守護するといわれる足の長い亀に蛇が巻き付いた形をしています。ここでも玄とは黒を意味し、五行説では北方の色とされます。
 園の北にある玄関を守る衝立は玄武ではなく、猛虎ですが、子どもを見守って欲しいと思っています。

衝立” への3件のコメント

  1. 最近は洋風な建築が多くなり衝立はあまり見なくなりましたが、以前はよく見かけていました。簡単に視界を遮ることができ、しかも移動も簡単。とても便利なものですね。最近はパーテーションと言う名前でいろいろ使われていますが、写真のような衝立は見ていてなんだかほっとします。衝立の良さを見直してみようと思います。
    それと色を考えるときに黒ははずして考えてしまいますが、すべての光を受け入れ、吸収し、また、すべての色を混ぜることによって出来る色と考えると、もっと大事にしなければいけないと思うようになりました。色の話が何度もブログで紹介されていますが、なかなか理論立てて考え取り入れることが出来ていません。勉強しなければいけないことはまだまだたくさんあります。

  2.  写真の衝立の虎の絵はとても迫力がありますね。全国の保育園を見ても、こんなに立派で迫力がある衝立は無い気がします。それか、置いて無い気がします・・・。実は私の家にも衝立かどうか分かりませんが、木製で長方形型の衝立があります。普通に飾りだけの意味だと思っていましたが、視界を遮る為のものだったのですね。確かにそう言われてみると玄関を入ってすぐに物があれば、それを見てしまいます。人間の心理を使った上手な視界の遮り方というのも昔から伝わってきた技法なんですね。

  3. 園の保育室内に竹格子や障子の衝立があって空間を仕切っている、とはなかなか素敵なことだと思います。また職員・来客用玄関に虎の衝立、とはこれまた乙ですねぇ。最上階の竜画と最下階の虎の衝立。まさに「竜虎」に護られた園舎。「日本の文化」を感じさせられる環境です。また同時にsociocultural な situation が演出されているとも言えるでしょう。今日のブログには「玄関」の意味が紹介されていました。当たり前に使っている言葉でその意味さえもよくわかっていなかったことが本文を拝読してわかった次第です。「玄」についての解説からも多くのことを学ぶことができました。「玄」=クロ=「黒」。
    RGBのない状態が「黒」だそうです。なんだか仏教でいう「空」の概念を彷彿とさせます。「黒」=最上階=「空」。園舎がますます興味深くなります。この意味からも園はグローバルです。いや、ユニバーサル、と言えるでしょう。本当に楽しくなります。

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