興学私議2

小林虎三郎の教育論である「興学私議」の基本をなす考えは、「人主の学」です。いわゆる「リーダーシップ論」です。私も少し前にリーダーシップ論をある書で書いたのですが、同じようなことを言っています。彼は、人のうえに位置するすべての者は、学問や教養(教育)を身につけて、道徳心と技術力を学んでいる者でなければならないという考え方です。私は、リーダーとして次のような資質が必要だと思っています。いくつかあるうちの1、2は次のようなものだと思っています。
その1は、「人格」です。保育という仕事は、教育、医療、看護などと同様、直接人と接する仕事です。その相手に対して、人として接するわけですから、その人となりが伝わることが多くなります。ですから、人格が伝わる仕事といっても過言ではありません。保育者は、保育技術(芸)を学ぶよりも、まず、自らの人格を高める(道)必要があります。その保育者がついていってもよいと思うリーダーは、範を示せる人でなければなりません。ですから、リーダーとは、自ら人格を磨く必要があるのは当然です。
その2は、「広い見識」です。リーダーは、外部に対してものを言ったり、説明をすることが必要になるときがあります。そのときには、社会というものをよく知らなければなりません。保育・教育に携わっていると、とかく世界が狭くなりがちですし、独りよがりが通ってしまうことも多い世界です。ですから、保育・教育内容については、自己評価が必要になってきます。そのためには、客観的に自己を見つめる力、広い見識が必要になってきます。
 小林虎三郎が「興学私議」の中で、学問にあっては「道」と「芸」が体と用として不可分一体である、という考えは、その佐久間象山が、黒船が来航した時に、日本が今後採るべき道として、「東洋の道徳」を体として持ち、「西洋の芸(技術)」を用として採り入れるべきとしたことからきています。これは詩の形で書かれています。「東洋道徳西洋芸。匡廓相依り圏模を完くす。大地の周囲一万塁。還た須らく半隅を欠き得べしや無しや。」
 小林は、象山の戦略においての考え方を教育にあてはめたのです。
 「興学私議」の中では、幼児教育の重要性にも触れています。「然れども猶宜しく挙ぐべき者あり。小学是なり。夫れ長じて学ぶは、小にして之を習うの入り易きに執若ぞや。故に先王殊に小学の教えを重んず。而して近頃外蕃、幼蒙を導くの法を聞くに、又其の詳を極む。今都府に於いては、小学を建つること数所、士大夫の子弟、年78歳に至れば、皆これを此に入れ、教うるに六書の学、四子六経の文を以てし、兼ぬるに外蕃幼蒙を導く所以の者を以てす。」
 (しかしながら次のことについてない挙げておなければならないことがあります。それは、「小学」です。年齢が入ってからいろいろと学ぶ場合、小さいうちに之を習っておくと、学問の道に入り易くなります。ですから古代聖王はこの「小学」の教えを重んじたのです。ところで、最近外国に幼児を導く方法を聞いたところ、じつに詳細にわたっていました。今の江戸では、小学校を立てているところは数箇所あり、役人子弟で7,8歳になると、みんなこの小学校に入学させ、六書の学問、四子六経の文章を学びますが、これに加えて外国で行っているような幼児教育を行うと良いのです。)
 十分に現代に通じるものがありますね。

興学私議2” への5件のコメント

  1. 今までリーダーなど上に立ったこともない私が、園長になった時この私で?と思ったくらい自分に自信がなく、今日のブログに書いてあるような、リーダーに求められる資質としての人格、広い見識など今でも、私自身に課せられた大きな問題でもあります。でもそのためには常に探究心を持つと共に、自分を振り返って自己評価をしながら自己を磨き、井の中の蛙にならないよう見聞を広げなければならないと思います。私は人と接することは大好きですので大切な子供を育てていく上でも、私自身の資質向上を目指していきたいと思います。

  2.  リーダーとしての必要な資質は先生の言われる、「人格」「広い見識」は本当にその通りだと思います。とくに「人格」が必要な理由を聞いて自分自身、もう一度見つめなおす必要があると思いました。それから保育園の場合、子どもに色々な経験をさせる事が大事ですので、先生が何も知らなければ何も発展しません。この二つはリーダーとしての必要な部分も含め、保育士として必要な要素だと思います。
     私も過去に小学校と中学校の時にキャプテンを務めたことがありますが、そのときは回りに流せてばかりで、自分の意思とは反対の方向、楽な方に進んでいました。今思えば本当に情けない話ですが…。個人的にリーダーとしての必要な要素は「意思」をしっかり持つことが大事だと思います。

  3. リーダーの資質としての「人格」と「広い見識」は、未だに自信がありません。いろんな業種の人が集まった場で話をしていて、それを特に感じます。やはりそれらを意識して磨こうとし続けることしかないと思っています。1年前より今、今より来年と、少しでも違う場所に立っていられるように、出来ることをひとつずつ・・・と思っています。その姿勢を保ち続けようと思います。

  4. 新保育指針のことが保育現場でもそろそろ話題に上ってきていますが、今度の改定で特に注目されるのが、「施設長の責務」と「職員の資質向上」が明記され、園が自園の保育を自己評価した内容を公開することを求めている点かと思います。施設長には保育園をうまく経営する能力だけでなく、その方の人間性そのものが問われる時代になったのですね。こども相手の仕事ですから至極当然ですが・・・。やはり保育の世界でも、幕末の人々のように師弟関係で己の人格や見識を磨いていくことが必要かもしれません。

  5. 高校3年生の夏休みの課題(倫理の課題)で「佐久間象山」についてレポートしました。おそらく新人物往来者社『歴史読本』の影響からだと思います。何を書いたかまるっきり覚えていませんが、今日のブログで紹介されていた「東洋道徳西洋芸。匡廓相依り圏模を完くす。云々」、おそらくこのことに関する解説を読んでエラク感動し興味関心をもってレポートしたのだと思います。もともと日本史が好きだったので大学学部では「史学科」を専攻しようと思っていたのですが、ベートーベンの第九交響曲の合唱に参加していたりグレゴリオ聖歌に触れていて結局キリスト教系の大学に進学し「哲学」を専攻することになりました。しかるに近年は「東洋道徳西洋芸」という意識が強くなってきています。そして極めて唐突ですが、25歳までの学習や経験の豊かさがその後の人生に大きく関わるということをこの頃とても実感しています。

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