main.jpg 身近な自然環境を見つけようということで、森林文化協会と朝日新聞社が、「くらしが育んだ里を未来へ」ということで、人々の暮らしによって育まれてきた、すこやかで美しい里を100カ所選ぶ「にほんの里100選」選定事業を行っています。このイベントは、「里」の大切さを見つめなおし、地域の自信や活力につなげるとともに、生物多様性の確保や地球温暖化防止、自然の持続的利用に寄与する試みでもあるようです。その候補地を募集していますが、どんなところが選ばれるのでしょう。
 この対象となる「里」は集落と、その周辺の田畑や野原や草地、海辺や水辺、里山などの自然からなる地域のことです。選定基準としては、景観、生物多様性、人の営みの3要素です。「景観」とは、「暮らしが生み出した特色ある景観が、まとまりをもって見られる。あるいは、里の景観が全体として調和していて美しい。」ということで、「生物多様性」とは、「かつては里でよく見かけた動植物が今もすこやかに生きている。あるいは、そうした生き物や生育・生息環境を再生する試みなどがある。」ということで、「人の営み」とは、「景観や生き物を支え、里のめぐみを生かす暮らしや営みがある。あるいは、そうした暮らしを築き持続させようとする人々がいる。」ということです。この条件は、選定基準としてだけでなく、私たちが身の回りの環境を守るためにも大切な要因ですね。まさに、「共生」とはどういうことかを表しています。
 選定委員長である映画監督、山田洋次さんは、48作続いた「寅さん」シリーズなどで、旅情や郷愁をかきたて、ぬくもりのあるロケ地を探して各地を回り、里の景観にも詳しいそうですが、この寅さんシリーズの映画は、エコに関しても海外でとても評価が高いと聞いたことがあります。買い物には買い物籠をもって行き、風呂敷に包み、豆腐を買いに行くときになべを持っていき、醤油などはびんにつめてもらうというような庶民の生活が描かれています。この委員長を務めるにあたって、山田さんは、「寅さんの撮影は、地方の美しい景色が消えていく後を追うことに似ていた。絶望は簡単だ。だが、まだ早い。まだ美しい里はある。大事なことは、暮らし方や生き方だ。写真には写らない取り組みを取り上げたい」と話しています。
 ほかの委員では、カナダ生まれで、農山漁村に魅了され、日本の海岸線の8割を踏破しているエッセイストで宮城大准教授(環境歴史学)の、あん・まくどなるどさんは、「南北に長い日本は土地ごとの表情がある。四季を感じさせる100選になればと思う。漁村にも注目したい」と言っています。京大大学院教授(緑地学、景観生態保全論)の森本幸裕さんは、「里は全体としてまとまりのある美しさを示しており、含蓄のある言葉だ。里の中身を問い、深化させていきたい」といい、ヒトこそが、持続可能な生態系の再生に知恵を絞るべきだと訴える東大大学院教授(植物生態学、保全生態学)の鷲谷いづみさんは、「里でふつう見られた生物で、みかけなくなったものも多い。生き物へのまなざしを取り戻すきっかけにしたい」といい、 朝日新聞編集担当の粕谷卓志さんは、「食への視点もあっていい。美しさ、おいしさ、そして健康といった多様なものが人々の心に残る里100選にしたい」と抱負を述べています。
 それぞれの人の言葉の中には、環境を述べる上で参考になる考え方が入っています。

” への6件のコメント

  1.  委員の3人の言葉はとても重要な言葉だと思います。鶯谷いづみさんの「里でふつう見られた生物で、みかけなくなったものも多い。生き物へのまなざしを取り戻すきっかけにしたい」というのは実際に私の目の前で起こっている事です。他の二人の委員の言葉もとても大事な事です。せっかく「にほんの里100選」という企画があるので、しかっりと日本独特の里の良さを見直す必要があると思います。

  2. 寅さんの映画の大ファンです。寅さんが旅先で出会う人々とのシーンには必ずその土地の豊かな自然と街の風景が叙情豊かに描かれていますね。改めて日本は美しい国だと思います。いつまでも残していきたいですね。その意味で、日本の里100選は素晴らしい企画です。藤森先生は全国あちらこちら行かれていますが、お好きな里の風景はどこなんでしょうか。私は、信州の安曇野が一押しです。雄大な北アルプスを望む日本の原風景のような静かな山里です。いつかゆっくり道祖神めぐりができたらと思っています。

  3. 元々、里と言われる地域の多いところに生まれました。私が子どもの頃は、その里の家々や庭や馬小屋や周囲の田畑がその周りの山や海と調和が取れていた、という記憶があります。それがいつの頃でしょうか、昔からずっと残されてきた周囲の山や海と調和の取れない「〇〇ホーム」づくりの家屋があちこちに建ち始めました。かつてはススキが一面を覆い馬や山羊が放牧されていた地が「〇〇ニュータウン」という名前をもった一戸建て住宅が林立する住宅街に変容しました。この背景にあるのはテレビのコマーシャル等による近代的家屋像の津々浦々への浸透現象でしょう。生きることに精一杯という思いを持たせられている地方の山村漁村地域の人々は経済的生活苦のゆえ周囲の「豊かなる自然」を相対化し意識化することがなかなか難しいようです。「心に残る里100選」という企画が全国各地域の、再生ではない、新たなる創造、へのきっかけとなれば、と今日のブログを読みながら思った次第です。

  4. 里という言葉からいろんな風景を想像してみましたが、私の周りにピッタリと当てはまる地域は思いつきませんでした。景観、生物多様性、人の営みの3要素がそろうというのはなかなか難しい条件です。どれが欠けてもいけない、3つがバランスよくそろうようにというのは、環境を考える上で大切なことだと、改めて感じました。

  5. にほんの里100選というものがあるのですね。さっそく調べてみると島根県が2つありました。1つは西ノ島なので、簡単には行けそうにありませんが、もう一つは斐川町とありました。これは松江に行く時には通る地域です。ですが、最近は高速道路が出雲から松江まで出来たこともあり、基本的にそちらを通るので、斐川をゆっくり通るというのがあまりありません。ちょっと高速を降りて、その里を感じてみたいなとも思いました。あ、空港に行く時もチャンスはあるかもしれません。選定基準に「暮らしが生み出した特色ある景観が、まとまりをもって見られる。あるいは、里の景観が全体として調和していて美しい。」とありました。里山というのは人々が自然とうまく関わりながら、自分都合ばかりではなく、自然のことも考えながら作り上げてきたからこそ、それが「暮らしが生み出した特色ある景観」にもなるのですね。理屈や理論ではなく、目の前の自然との生活の歴史から生まれた里山は保育での、現場での試行錯誤から構築される理論にも繋がっていくように思います。目の前の子どもたちと向き合って、どうしたらいいかを考える現場での力というものの大切さを最近はすごく感じます。

  6. 「里」という言葉を聞いて最初に浮かんでくるのは、やはり「平成狸合戦ぽんぽこ」です。あの映画は、私の中でも衝撃でした。里がショベルカーによって瞬く間に切り開かれていく様子が、なんだか虚しく哀しい気持ちにさせていましたが、その土地や木を私たちが使うための物であると知った時は、さらにいたたまれない感情が込み上げてきました。そして、「景観や生き物を支え、里のめぐみを生かす暮らしや営みがある。あるいは、そうした暮らしを築き持続させようとする人々がいる。」という失われつつある人が紡ぎ上げてきた一つの大切な「営み」があったということを、もう一度見つめ直すことが必要なのですね。

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