懐石

 先日、お雑煮をいただく機会がありました。そのときに、話題になったのは、各家庭に伝わる雑煮の味付けと、具の内容でした。雑煮は、正月に餅をついて、そのほかの産物とともに歳神様に供え、そのお下がりを煮て、一年の無事を祈り、お正月に食べる伝統的な日本料理です。ただし、沖縄だけは余り食べないようです。具の中で、餅も地方によって丸餅と、角型の切り餅があるようです。汁はすまし汁仕立てか味噌仕立てが一般的です。
日本文化は、食においても美意識があります。その代表的なものに、懐石料理があります。各種偽装問題が発覚して話題になった「船場吉兆」も、もともとは茶懐石が基本になっています。そのイメージからすると、高級料理とか、随分値段が高い料理の印象がありますが、「懐石」の名前は、禅寺で修行僧が温かい石を懐(ふところ)に入れて空腹をまぎらわせた、その程度の軽い食事という意味からきていますので、懐石は、豪華な高級料理ではないのです。
懐石料理とは、茶道におけるおもてなし「茶事(ちゃじ)」のなかで、お茶をたてる前に供する料理をいい、茶事の主催者(亭主)が一皿ずつ運んで給仕をします。まず、折敷(おしき)という足のついていない正方形の塗り盆に、一口ほどのご飯を入れた「飯椀」、汁の実を入れ、味噌汁を少し張った「汁椀」、酒の肴を入れた「向付」を三角に置いたものを亭主が運び、客はこの折敷を亭主から受け取り、畳において、添えられた利休箸で食事をします。向付とは、最初の酒の肴で、飯椀汁椀の向こうに付ける(置く)ので、向付といいます。これを食べきって、空になった器をその後の取皿として使います。
そのあと亭主が一皿ずつ運ぶ料理には次のような物があります。まず、煮物椀、椀盛は、椀種を入れて、すまし汁を張った吸物のことで、懐石のメインディッシュとされます。そして、焼物として、魚の切身などを焼いて、人数分を一皿に盛り付けます。ここまでの料理を、「一汁三菜」といいます。
懐石料理だけでなく、昔ながらの日本型の食事は、一汁三菜が基本になっています。普通は、一汁三菜とは、ご飯に汁もの、おかず3種(主菜1品、副菜2品)で構成された献立のことを言います。この組み合わせは、ご飯でエネルギー源となる炭水化物を、汁もので水分を、おかずでその他の栄養をバランスよくとることができるのです。また、それらの栄養素が交互に胃に入って混ざり合うことで、消化や吸収がよくなり、余分な脂肪や糖分、塩分を排出したりします。
一汁三菜は、合わせると4品になりますが、料理の品数が「4品」になることを嫌い、一汁三菜という分割した呼び方にしています。また、一汁五菜、二汁五菜、三汁七菜などもっと種類を置く並べるときでも、菜の数は、かならず、奇数にするのは、日本において、奇数を陽とし、偶数を陰とする思想があり、奇数をめでたいものとすることによっています。
懐石料理には、このほかに、「預鉢・炊き合せ」という野菜など数種類の素材を別々に炊いて、人数分を盛り合わせたものを出しますが、この名前は、給仕をしていた亭主が、この一品を出したあと、自分も別室で相伴(しょうばん)するので、客に鉢を預けておく意味からついた名前です。
なんとなく知っているものでも、きちんと知ることによって、文化の深さを感じることが出来ますね。

懐石” への4件のコメント

  1. 一汁三菜とはいきませんが、今の時期は大根や白菜が食卓に並ぶだけで、もう満足です。ご飯とその時期に美味しいものがあれば十分だと思えるようになってきました。昔の日本の食事はまさにそういう形だったと思います。ご飯、そのとき採れるもの、知恵の詰まった保存食。そんな食事から生まれてきた文化もたくさんあると思います。子どもたちにはそんな豊かな食を伝えていかなければいけないと思っています。ブログの内容からずいぶんと離れてしまいました。

  2.  懐石料理と聞くだけで高価で高級料理で、また料理の飾り付けなど、日本にしかない繊細で美しいイメージがあったので、ブログを読んで全くの逆だと知って本当に驚きです。しかし由来を読んで、お茶を飲む前の料理だから全体的な量を少なくし、その分、材料や味付け、飾り付け等を凝ったものにしようとしたために高級料理というイメージがついたのかな?と勝手に思いました。しかし、そんな高級料理でも日本の基本的な料理の型「一汁三菜」を崩さずに守り続けていることは、とても大事な事だと思います。
     「懐石料理」の由来など今回深く知る事ができ本当に良かったです。今後、食べる機会があればブログを思い出しながら食べたいと思います。

  3. 「懐石は豪華な高級料理ではない」というお話は、目から鱗ですね。禅寺での質素な食事の習慣が、茶道のもてなし料理に形を変えて今に伝えられたのですね。物事のいわれや始まりを調べてみることはおもしろいと思います。今、教育の世界でも、食育の重要性が言われていますが、案外、一汁三菜という日本料理の原型が、栄養バランスや消化の点からいってもとても参考になるような気がします。以前、テレビで徳川家康の食べていた食事の再現を見ましたが、麦飯に具だくさんの味噌汁と決して豪華ではありませんが、よく考えられたメニューでしたね。高級料理だからといって長寿食とは限らないようです。

  4. 今日のブログのテーマ「懐石」にはとんと縁がないようで、最近ほとんど口にすることがありません。「懐石」料理にはヘルシー感が漂います。ところが相変わらず若者メニューが好きでいけません。「懐石」料理のカロリーがどれだけかはよく知りませんが、「若者メニュー」に比べると少ないのでしょう。そろそろ「低脂肪低カロリー」な食生活に切り替えないと「たいへんなことになりますよ~~~」と言われそうです。それから「なんとなく知っているものでも、きちんと知ることによって、文化の深さを感じることが出来ますね。」、全くその通りだと思います。そして当臥竜塾ブログは「なんとなく知っているもの」の真の姿を浮き彫りにしてくれる日本文化学習資料です。今月も一日一日ブログを楽しみにしております。

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