小紋

 私の園がある場所は、新宿区下落合ですが、以前のブログでも紹介したように、新宿というと思い浮かべるような超高層も、飲み屋街もなく、周りは、この地域の地場産業である印刷屋さんと染物屋さんが点在しています。
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 新宿・神田川流域は、東京染小紋、江戸更紗の工房やその染の関連業種、東京手描友禅の職人さんなどが集まり、東京で一番大きな染の主産地となり、一時期、全国の染の産地と披見される場所になったのです。その江戸小紋とか江戸更紗の反物を地域の工房から分けてもらって、園の装飾に使っているのですが、私は、あまりそれらの違いや、小紋の文様などには詳しくありません。それは、最近着物を着なくなってきている日本人みんなに言えることではないでしょうか。江戸の美意識の中で、文様の美も見直すことが必要かもしれません。
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 もともと小紋というは日本の着物の種類の一つです。そして、江戸小紋のルーツは武士の裃にあります。江戸時代、各藩は、家紋同様、将軍家を筆頭にそれぞれの着物の柄をその家で決めてシンボルとしました。その柄を見ると、どこの藩かすぐにわかるようにです。しかし、その模様付けの豪華さを張り合うようになり、江戸幕府から規制を加えられます。ですから、遠くから見た場合は無地に見えるように模様を細かくするようになり、結果、あの細かい柄の小紋が生まれたようです。しかも、いかにも江戸っこらしいのですが、型紙を使って染める小紋なので、細かい柄ほど型彫りも染めも技術が高度なため、こぞって細かい柄に挑戦し技を競い合ったのです。型屋と染め屋の意地の張り合いによって完成された極々の柄こそ江戸小紋の真髄と言われているのです。
それが、江戸中期になると庶民の間でも着物や羽織に小紋を染めるのが流行り、こちらは生活用品など身近にある物を細かい模様にして洒落を楽しんだり、動植物を抽象化した柄や縁起をかついだり、語呂合わせの遊び心のある柄が数多く生まれました。
どんな柄があるかというと、別格小紋という、型付けに至難の技の要る究極の柄で、江戸小紋の中でも格別の扱いをされているものや、小紋御三家とよばれるような、錐彫りの型紙から得た柄の中で、最高級とされる三品があります。これらは、「超極毛万微塵筋」という文様の名前から見ても、日本で最も細い縞柄や、繊細な縞模様であるように、とても細かい柄です。小紋御三家といわれている文様は、紀州島津家の定柄として最も有名な柄である「極々鮫」と、斜に整然と並ぶ柄の「極々行儀」と、碁盤状の微細な柄である「極々角通し」です。これらは、江戸の美を感じる文様ですね。
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  「極々鮫」と「極々行儀」
 また、縁起を担いだり、しゃれた、やはり江戸っ子の心意気を感じる柄に、「いわれ小紋」というのがあります。例えば、「宝尽くし」という柄は、一面に縁起物を集めた柄で、金運に恵まれるとのいわれていますし、「南天の実」という柄は、難(南)が転(天)じるの語呂合わせから、縁起を担いでいます。「竹に雀」という柄は、竹林に雀は相性が良く、この柄を着ると良縁に恵まれるといわれています。
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  「宝尽くし」と「南天の実」
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  「竹に雀」
しかし、地色と柄色との二色で染め上げられる「江戸小紋」の真骨頂は、派手さではなく、極端に派手さを抑えられた職人たちが、色数を抑える一方で柄の細やかさにシノギをけずることでその「粋さ」を表現しようとしたのです。