石積み

 大谷石についてブログを書いたのですが、石にはいろいろな種類があります。そして、その石はいろいろなところに使われますが、そのときにどのように使うかは、その石の特性と、使う場所によって様々な工夫がされてきました。
大谷石のように建物に使う場合のほか、庭石(にわいし・ていせき)という庭園における天然石の日本独特の利用法があります。日本庭園では必ず使用される庭園技法の肝ですが、海外では天然石を加工せずにそのままの姿で利用することは極めて稀であり、大抵、石を使う場合はなんらか加工します。それに対して、日本では、まず、天然の岩石のなかで庭の材料として用いるものとしてよいものを選び出し、加工せず庭の要所に配置します。その石はもちろん1個(1石)でも庭の景観を作るポイントになり、十分に鑑賞できるものとなります。しかし、複数組み合わせて設置する場合もあり、それを石組といいます。この庭石の材質・配置で庭園の表情が決まると言うほどで、日本ではさまざまな技法が生まれました。立石、伏石、平石、構石として使用し、大体、同系同色の石を使うのが基本です。そのほかにも、庭に石を使う場所に、飛石があり、平らな石を園路に配置して、そこを踏面とします。また、この飛石と建物の出入り口を結ぶ石として沓脱石(くつぬぎいし)があります。
 そのほかに護岸や法面などの防水・土砂流出防止を目的に石を積むことがあります。日本では有名なところでは城の石垣がありますが、この石積みのある風景は、日本だけでなく、石が採れる所ならばおそらくどこでも見られる風景でしょう。しかし、その石の積み方は、採取される石の種類や周りの環境によって異なってきます。たとえば、イギリスの石は平たく、日本の石は塊として使います。
今日訪れている近江の坂本の里は、延暦寺や日吉大社の門前町として栄えたところで、湖東、湖北から坂本港に運ばれる物資の集積地でもあり、特に北陸から京都への交通の要所でもありました。その坂本では、里坊や神社や古い民家の石塀などに、穴太衆積み(あのうしゅうづみ)と呼ばれる特異な石積みがみられる場所です。その特色は加工しない自然のままの石面を巧みに用いて石積みの面を構成し自然の美しさを保っていることです。
穴太衆とは、全国的にも有名な石工集団で、石垣のある城郭はすべて穴太衆によるものだといわれています。穴太衆は、横穴式古墳の石室作りに習熟していた渡来人の子孫であり、長い間石積みの技法を温存していました。
isidumi1.JPG
彼らの技法の祖形を、比叡山系と琵琶湖に挟まれたあたりに点在する古墳時代後期の群集墳に見ることが出来ます。その穴太衆は、比叡山麓の坂本大字「穴太」の一帯に古来から住み、その技法を持って、やはり大陸からの渡来人系である伝教大師最澄によって開創された天台宗総本山の比叡山延暦寺の坊舎の石垣や墓石、五輪塔も作りました。
isidumi3.JPG
そして、比叡山焼き討ちで、信長は穴太衆石積みの存在を知り、安土城の築城に動員したのです。その後、家康の江戸城大修築にも活躍しています。
「石積みのある門前町」としての歴史の町坂本を歩けば、石積みの石塀は苔むし、道の脇を流れる堀の水はあくまでも透き通り、焼き討ちにあった比叡山の荒々しさを忘れるほど静かな佇まいを感じました。
isidumi2.JPG

石積み” への4件のコメント

  1. 近江の坂本の里といえば、大河ドラマで歴史上の舞台としてよく紹介されるところですね。今日のブログの写真は、坂本城址公園の石組みでしょうか。日本の庭づくりや城郭の石組では、天然の石の色や形や大きさなどの特性をできるだけ生かす技法を取るというのが興味深いですね。武田信玄は、「人は石垣、人は城」という言葉を残していますが、組織における人材の配置も一人一人の個性を生かして適材適所でということですね。人を見る目を養っていかないといけませんね。

  2. 石垣は、その大きさに関わらず、見ていて圧倒されます。自然の形のまま利用するため、全体をイメージしながらその部分に適した1つを積んでいるんでしょうか。そんなことを考えながら石垣を見ていると、日本の文化の奥の深さを感じます。何もしなければただの石ですが、技や知恵が加わると感動を与えてくれるから不思議です。

  3.  私の家の庭にも色々な石があり、ブログに書いてある飛石と沓脱石があります。今回のブログを読むまで名前があるとは知りませんでした。
     日本では石を加工せずにそのままの姿で庭の景観を作るのは初耳ですし、あんなに格好が整っている石なんて絶対に加工していると思っていたので驚きです。しかし、それも日本独特の環境だからこそ取れるし、日本だからそのような石が活かされるのかな?と思いました。

  4. 記憶が錯綜して真実を伝え損ねることがしばしばあります。今日のブログを読んですぐにピンと来たのが司馬遼太郎さんの『街道を行く』「湖西のみち」です。「近江からはじめましょう」ということで始まったこのシリーズですがその中で「穴太衆積み(あのうしゅうづみ)」も取り上げられていたと記憶しています。もし間違っていたら御免なさい。「石積み」ということで言えば、休日になると散歩に出かけ、その際「皇居」周辺を歩いては「江戸城」の石垣積みを見ていることをお知らせしたくなります。非常に洗練された石垣の積み上げ方に驚きます。覇者の威厳を惜しみなく表していると感じられます。また美しい石積みです。ところで、いつか機会があれば「湖西のみち」を私も辿ってみたいと思っております。今日のブログで紹介された場所を追体験できる、そんな気がします。楽しみです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">