アンカー

 今日、渋谷Bunkamuraザ・ミュージアムに、19世紀スイスの自然主義の画家「アルベルト・アンカーの回顧展」に行ってきました。彼の名前は知らなかったのですが、この展示内容に興味を惹かれました。それは、展示されている絵のモチーフと、その展示の区分が、カタログでもそうなっているのですが、「故郷の村」「静物画」「よく遊べ、よく学べ」「教育と学習」「肖像画」「アンカーと風景」「ファイアンス陶器」となっています。
アルベール・アンカー(1831-1910)は、「スイスの中央部のインス村出身の、19世紀のスイスで大変な人気を博した画家です。日本ではあまり知られていませんが、国民的画家としてスイスの人々に親しまれ、その作品は国内の多くの美術館に所蔵されており、没後100年近く経つ現代においても、その人気は衰えることがありません。」と展示のはじめに書かれているように、スイスではとても人気があるようです。今日の展示を見てもそれが納得いくような、テーマにおいてもそうですが、やさしい、暖かな視線を子どもを中心に注いでいます。
描かれている対象は、生まれ育った故郷インス村の情景です。「おじいさんが子どもたちに話をしている情景」「赤ん坊の世話をする少女」「子ども同士で遊んだり関わっているすがた」など、 村の子どもや老人などの日々の生活を題材に様々な世代が幸せに共生している姿を描いています。とくに、無垢な子どもたちの姿には、無条件で人をなごませる何かがあり、疲れた心を癒すパワーがあります。
anker.jpg
   おじいさんと二人の孫
さまざまなジャンルに才能を発揮したアンカーですが、彼が最もよく知られているのは子どもを描いた作品であり、とりわけ「遊んでいる子ども」というモチーフにこだわりました。このモチーフをここまで追求した画家もめずらしいといえます。アンカーは、晩年は「子どもの生まれた日から」というエッセイを執筆し、インスの教育行政にも積極的にかかわっていたことからも、もともと子ども好きであったことはいうまでもありませんが、展示にはこう書かれています。
「19世紀のヨーロッパは、子どもに対する教育に大きな変化が起きた時代でもありました。先駆的であったスイス人ジャン=ジャック・ルソーや、ヨハン・ハインリヒ・ペスタロッツィの人間主義的思想は、アンカーの芸術にも影響を及ぼしていたと考えることができます。ルソーは、子ども時代というものが独立した人生の一時期として価値あるものとみなし、また、ペスタロッツィは、子どもの玩具は教育的な見地からふさわしいものを与えるべきだと提唱しました。それに呼応するかの如く、アンカーは無心に遊ぶ子どもたちの姿の中に理想郷たる村の情景の中でも最高の至福を見出していたにちがいありません。
 また、アンカーは遊んでいる子どもばかりでなく、学ぶ子どもたちの様子も多く描いています。これもまた、当時のスイスにおける学校教育の変化を反映したもので、かつては採用されていた権威主義的な授業に代わって、なごんだ雰囲気の授業の様子や、楽しそうな遠足の様子などが積極的に取り上げられています。」
 どのように子どもを捉えていたか、その子どもを描いた絵画のモチーフから考えてみたいと思います。(つづく)