辛子蓮根

 熊本の代表的な郷土料理として有名な辛子蓮根をいただきました。
karasirenkon1.jpg
 東京生まれの私にとっては、これは奇妙な食べ物のひとつに数えられます。しかも、その食べ物を知ったのは、申し訳ないのですが、1984年、辛子蓮根による集団食中毒事件が発生、36名が中毒症状に陥ってうち11名が死亡したニュースでした。この食中毒は真空パックした商品でのみ起こりましたが、滅菌処理を怠ったためパック内に嫌気性のボツリヌス菌が繁殖し、さらに真空パックのため辛子の成分が揮発せず菌が生き続けるという悪条件が重なって発生したことが判明しています。 この事件がニュースで報道された結果、辛子蓮根は全国に知られることになったのですが、逆にそのために風評被害に会い、休業・廃業に追い込まれた業者もあリました。しかし、本当は、病弱だった細川家初代の殿様のために発明された「健康食」といわれています。熊本藩主細川忠利は生来病弱でした。ある時、前任地である豊前国耶馬溪羅漢寺の禅僧・玄宅が忠利を見舞った時に、蓮根を食べるよう勧めたのです。そこで藩の賄方であった平五郎が、加藤清正が熊本城の外堀に非常食として栽培していた蓮根の穴に和辛子粉を混ぜた麦味噌を詰め、麦粉・空豆粉・卵の黄身の衣をつけて菜種油で揚げたものを忠利に献上したところ、忠利は喜んで食べ、健康になったといわれています。蓮根は増血剤として優れている上に辛子には食欲増進作用があること、また蓮根を輪切りにした断面が細川家の家紋(九曜紋)と似ていたことから門外不出の料理とされていましたが、明治維新からは一般にも製法が伝わり、熊本名物の一つになりました。日本各地の城のお堀によく蓮が植えられているのは、非常食の目的であったと言われているように、蓮根自体とても栄養があります。意外ですが、ビタミンCなどは、みかんの1.5倍、大根の3.7倍に相当する量が含まれ、100gで1日に必要なビタミンをまかなえます。しかも、熱に弱いビタミンCに対して、蓮根はでんぷん質が多いために、加熱しても相当量のビタミンCが残ります。また、最近では、発がん物質を抑制する効果があることもわかっていますので、忘年会でタバコやお酒を飲みすぎた後は、ぜひ蓮根を食べるのを勧めます。また野菜としては珍しくビタミンB12が豊富で、貧血を予防し、肝臓の働きを助け、ペクチンなどの食物繊維も多く、便秘を解消し、大腸がんを予防し、コレステロールを下げて血圧を正常にし、動脈硬化や高血圧にも効果があります。ミネラルではカリウムや亜鉛、銅、鉄を多く含み、中国では茎の部分だけでなく、葉や実や花弁などハスのすべてを薬用に用いています。特に蓮の実は、「蓮肉」「蓮子」と呼ばれ、強壮剤として用いられ、肝臓、腎臓、心臓に良いそうです「胃もたれ、胸焼け、滋養強壮」「消炎・止血効果」「鼻つまり・鼻血予防」「むくみ」「咳止め、二日酔い」「扁桃炎、口内炎」など、あげればきりがありません。また、辛子もその香りの素として知られる有名な成分(アリルイソチオシアナート)は、わさび特有の鼻にツーンと抜けるような辛味の主成分と同じもので、殺菌作用や食欲増進などに効果があります。また、ストレスを軽減する効果もあるといわれています。このような効用のある蓮根をお正月に食べて健康になり、また、蓮根は、穴が開いていることからそれを食べると「先が見通せる」といわれていますが、子どもとかかわるためには、今がよければではなく、蓮根でも食べて、先を見通す力をつけていかなければなりませんね。