シクラメン

 先日の講演の後に、壇上に飾られていた「シクラメン」をいただきました。シクラメンといえば、真っ赤な色のものを思い浮かべますが、いただいた色は、紫の芯を持った真綿色をしています。
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というと、当然、1975(昭和50)年に布施明が歌って大ヒットした小椋佳・作曲/作詞「シクラメンのかほり」の出だしの歌詞「真綿色したシクラメンほど?」を連想します。ですから、実際に見るシクラメンは真紅のものが多いのに、シクラメンといえば真綿色と思っていました。しかし、シクラメンの歌の歌詞の1番は真綿色ですが、2、3番は違うのです。「1、真綿色した シクラメンほど 清(すが)しいものはない 出逢いの時の 君のようです」真綿色は、出会いを感じるようです。そして、恋をするようになると、その色は赤くなります。「2、うす紅色(べにいろ)の シクラメンほど まぶしいものはない 恋する時の 君のようです」しかし、恋も長くは続きません。別れが来ます。すると紫に変わっていきます。「3、うす紫の シクラメンほど 淋しいものはない 後ろ姿の 君のようです」歌詞をじっくり詠むと、シクラメンという花がどんなイメージがあり、その花言葉も納得します。花言葉は、「内気・はにかみ・恥ずかしがり屋・遠慮・切ない私の愛を受けて下さい・純潔・嫉妬・猜疑心・過ぎ去った喜び」とあります。これらは、その花の色からの連想でしょうが、花の名前は、その形から来ています。もともとのCyclamen(シクラメン)の語源は、ギリシャ語の「kiklos(円)」(英語では、サイクルCycle)で、塊根が丸い球形のようなところからきています。また、和名では、花の形が、ひっくりかえったような形であるところから、篝火を連想して、「篝火花」(かがりびばな)と呼ばれることもありますが、これは、シクラメンを見たある日本の貴婦人(九条武子だといわれている)が「これはかがり火の様な花ですね」と言ったのを聞いた牧野富太郎が名づけたといわれています。また、「豚の饅頭」という和名は、シクラメンの原産地であるトルコやイスラエルの方で、野生の豚がシクラメンの球根を食べたことから、豚にとっては饅頭がわりということで「雌豚のパンsow bread」という英名を、ある植物学者が日本語に翻訳した名まえですが、この名前はかわいそうですね。しかし、豚だけでなく、人間も食べていました。塊茎の澱粉を注目され、サポニン配糖体を含む有毒にもかかわらず「アルプスのスミレ」などの美称があり、食用とされていたのですが、大航海時代以後ジャガイモがもたらされると、食用にする習慣はなくなりました。シクラメンに関する伝説で、草花好きだったソロモン王が王冠に何か花のデザインを取り入れようと思い様々な花と交渉するが断られ、唯一承諾してくれたシクラメンに感謝すると、シクラメンはそれまで上を向いていたのを、恥ずかしさと嬉しさのあまりにうつむいてしまった。と言うものがあります。ですから、花言葉に「恥ずかしがり」というのがあるのですね。日本には明治時代に伝わり、日本での本格的な栽培は、岐阜県恵那市で始まりました。シクラメンは高温多湿の日本の気候に合いませんでしたが、戦後、急速に普及し、日本での品種改良も進められ、花色も黄色や二色、フリンジ咲き、八重咲きなどが登場して、いまや日本における鉢植え植物では生産量はトップクラスで、冬の鉢植えの代表格として、またクリスマスの季節とあいまって定着しています。花には、その花の名前の意味から、形から、色から、成分から、深い背景があるのですね。