多重塔

 先週末、山口を訪れたときに瑠璃光寺に行ってみました。ここは、曹洞宗の寺院で、国宝の五重塔を中心として、境内は香山公園と呼ばれ、桜や梅の名所にもなっています。大内氏全盛期の文化を伝える寺院であり、「西の京・山口」を代表する観光名所となっています。今の時期は、うめや桜の時期ではありませんでしたが、真っ赤に紅葉したもみじと、それを映し出す池を前景としての五重塔は、澄み渡った青い空を背景としてとても美しい姿を見せてくれました。
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 この五重塔は、室町時代に建立され、屋外にある五重塔としては日本で10番目に古く、京都の醍醐寺・奈良の法隆寺のものとならび日本三名塔の一つに数えられています。高さ 31.2m で屋根は檜皮葺となっており、二層にのみ回縁がついているのが特徴で、建築様式は和様ですが、一部に禅宗様(唐様)も採り入れられています。塔身は上層ほど間を縮め、塔の胴を細く見せ、とてもすっきりみえます。これに対して初重の丈が高く、柱が太く二重目には廻縁・高欄があるので安定感が強く感じられます。全国には三重塔や五重塔など数多くの木造の塔があり、かつては七重や九重のものもあったといわれます。少し前に妻と訪れた安楽寺には、鎌倉末期の建立された国宝である八角三重塔があります。この塔は、中国の宋時代の様式で、日本で唯一の八角の塔です。
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やはり妻と訪れた薬師寺の塔も、六重に見えて三重の塔です。
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 また、奈良には法隆寺のほか、とても美しい興福寺の塔は五重塔です。
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 このように各地にある塔は、他の建物に比べて意外と古い時代に建立されたものが多く残っています。不思議なことにそれらの塔が地震で倒壊したという記録はほとんど見当たりません。1995年の阪神・淡路大震災でも、兵庫県内にある塔は一つも倒れませんでした。なぜ寺の木塔が地震に強いのでしょうか。その一つは「積み上げ構造」という建築方法であるとされています。つまり五重塔を建てる場合、重ごとに軸部や軒を組み上げ、それらを鉛筆のキャップを重ねるように順々に積み上げてあるのです。それぞれの部材は主に木材同士の特殊な切り組み方法によって接合されていて、堅固に結合していないため「柔構造」になります。「柔構造」の塔は、コンクリート造りの一体化した「剛構造」と違って、地震が起きても各重が互い違いに振動して「揺れ」を吸収します。このような、建物の揺れの効用を認め、その揺れによって地震力を吸収させる「柔構造」の理論は、近年、日本はもちろん世界の超高層建築に採用されています。伝統的な木造建築の知恵が最先端の建築技術に生かされているのです。また多くの塔の内部に立っている「心柱」は、こうした振動を減衰させる「かんぬき」のような働きをするといわれています。さらに各重の柱が長さの割に太いことや、組物がしっかり組まれ水平に変形しないことも地震に強い要因とされています。法隆寺五重塔は約1300年と長い歴史を持ち、日本を代表する木材である『ヒノキ』で造られていてい、日本で初めて世界文化遺産に登録された世界最古の木造建築群ですが、約1,300年もの長い年月、地震に耐えてきたのは、「積み上げ構造」という建築方法であるとされています。香川県善通寺の場合、塔の中心を貫く心柱が鎖でつり下げられ、礎石から約6センチ浮いた「懸垂工法」で、全国でもあまり施工例のない珍しい木造塔だといわれています。
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 時代は進んだといわれていますが、意外と進んでいないのかもしれません。

多重塔” への8件のコメント

  1.  写真の五重塔は周りの紅葉と、とても合っていて本当に綺麗ですね。色々な季節の景色がありますが、私は紅葉が一番綺麗だと思います。
     建築の用語などは詳しく分かりませんが、昔の建造物など今まで一度も崩れずに残っているということは、いかに昔の建築の技術が優れていたのかが分かります。クレーン等がある分、建物を建てる技術は進んだかもしれませんが、建物の構造は昔からの知恵を活かして考えているというのは、何か感動します。今の時代色々な建物や物がありますが、丈夫で長持ちするのは伝統的な物が多い気がします。「時代は進んだといわれていますが、意外と進んでいないのかもしれません」とはまさにその通りですね。色々な面で伝統的なものを見直す必要があるんだな。と感じました。

  2. 山口の瑠璃光寺は一度行ってみたいなと思っていた所なので、一行読んで食いつきました。写真で見て益々行きたくなりました。ぜひ実現を。日本の寺には色々な塔がありますが、やはり基礎がしっかりしているもの、時間をかけて造られたものは大きな災害にも強くいつまでも残るものだと思いました。私たちの保育も先を急ぐのではなくじっくりと子ども達と向き合い取り組み21世紀に残るような子どもを育てていかなければならないと思いました。

  3. 五重塔の写真を見ていたら、確か「金剛組」というえらい古い歴史をもった建設会社が日本にあることを
    思い出しました。ネットで調べたら、西暦578年、聖徳太子の時代の創業で、1400年以上の歴史が
    あって世界最古の企業だそうです。この会社が四天王寺や法隆寺を始め日本中の名だたる仏閣の建築や復元にあたってきたとか。今日のブログで紹介されている五重塔はたぶんすべてこの会社の宮大工の手によるものでしょうね。それにしても「柔構造」の技術はすごいですね。人間も少々のストレスで倒れないように「柔構造の心」を持ちたいと思いました。いつも楽観主義でいきたいですね。

  4. 仏教では、塔は仏陀のお骨を納める、大変重要な建物です。仏舎利(お釈迦様のお骨)を安置する場をサンスクリット語でストゥーパといいますが、この語は日本語の卒塔婆(お墓にある経文の書かれた板)になりました。仏教寺院の伽藍様式は中国朝鮮が日本の元です。お釈迦様の系譜であることを示したのが塔なのですね。三、五、七、九、共に仏教では吉数ですが、殊に地・水・火・風・空(世界構成の根本要素)を表す5重塔はそれ自体が「世界」を現すとされています。日本の塔構造は今日のブログでも紹介されていたように「柔構造」です。この「柔」という思想こそが関係性の基本となります。柔構造によって日本の「多重塔」が長年の風雪に耐えてきたことを考えれば、どうやら私たち人間の関係もまたこの「柔」を基本に据えなければならないことがわかります。関係破綻のケースの大半は「剛」が支配的になった時。昨今「マニュアル」化、ということが声高に叫ばれていますが、柔的マニュアルでないと「関係破綻」をもたらす危険性があります。気をつけたいものです。

  5. 瑠璃光寺の写真はとてもきれいですね。私の知っている瑠璃光寺とは違う感じがします。それにしても、今でも通用する昔の技術はすごいですね。地震などの揺れを吸収するという発想は、今となっては驚きませんが、初めて聞いたときはびっくりしました。地震の揺れを自らも揺れることで吸収する。こんな姿勢も身につけたいと思いました。

  6. 故郷の昔の暮らしのHPを制作しています。
    昔の住宅建築の方法を調べていると本当に驚きます。
    クレーンもない時代の建築の大変さももちろんですが、
    それ以上に当時の技術の高さに驚嘆します。

  7. 昔からある日本の建築方法はすごいですね。自然をうまく取り入れた方法であると感じました。柔構造もすごいです。どれも同じ規格の木材を使用している訳ではなく、その木、柱によってそれぞれ異なる材料に合わせた組み方をしているということがなんとも日本的だなと感じます。それぞれの個性に合わせた対応の仕方というのは建築だけではなく様々な分野にもあてはまりますね。先日、保育園周辺を下見のためにまわっていると、いつもお世話になっている地域の方がご自身で倉庫を建てている現場に出くわし、いろいろお話を聞かせてもらう機会がありました。山から柱になる木や、その他の材料を切り出してきて、まさにその木にあわせて大きな家のような倉庫を建てておられました。まさに骨組みの段階だったので、そのことがよく分かるようでした。だからこそ、長く保つことができるのですね。また、その方が「納期はないからね。時間が空いた時にやって、のんびり完成をを目指します」と言っておられたのも印象的でした。

  8. 「柔構造」や「積み上げ構造」という、一見壊れやすい印象を受ける構造が、振動の勢いを和らげる効果があるというのはすごいですね。室町時代の建築家は、いったいどのようにそうような考えに行き着いたのでしょうか。不思議です。その時代から600年以上も経過している中、その方法は東京スカイツリーにも活かされているということで、「時代は進んだといわれていますが、意外と進んでいないのかもしれません。」という言葉が頭の中を駆け巡っています。「心柱」は、画像で見てみましたが、迫力がありますね。また、六重の塔にみえて実は三階建てというのも、見かけが重要であったという事が伝わってなんか面白いです。

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