開湯伝説

 たぬきときつねが、温泉に浸かっているのを見て、温泉を見つけたという話があるのであれば、当然他の動物が見つけた話しは全国に多いでしょう。そのように各地の温泉場には、由来すなわち源泉の発見について、古くからいろいろな興味ある伝説が残されています。たとえば、よく行く道後温泉は、白鷺の伝説があります。ですから、白鷺は道後温泉のシンボルの一つともなっており、道後温泉本館の周囲の柵にも白鷺をモチーフとした意匠がみられます。また、鷺谷という地名が残っています。「足に傷を負い苦しんでいた一羽の白鷺が岩間から噴出する温泉を見つけ、毎日飛んできてその中に足を浸していたところ、傷は完全に癒えてしまい、元気に飛び去ったというものです。これを見た人たちは大変不思議に思い、入浴してみると、爽快で疲労を回復することもでき、また、病人もいつのまにか全快したことから、盛んに利用されるようになりました。」という伝説です。このように白鷺と温泉の縁は深く、各地の温泉の発見物語に白鷺が登場します。有名な下呂温泉もそうです。「一羽の傷ついた白鷺が村人の頭上で弧を描きながら河原に舞い降りた。村人が河原の大きな岩からのぞいてみると河原に湯気が立ちのぼっていて、白鷺は温泉の中に入ってじっとしていた。村人は、これは温泉だ、白鷺は傷を治しているのだと思った。白鷺は村人を誘うように山の中腹の松の木の下で休んでいた。村人が行ってみると松の木の根元に光り輝く薬師如来像が鎮座しておられた。この薬師如来像が温泉寺の本尊である。」また、少し前、熊本に行ったときに泊まった1300年という長い歴史を誇る玉名温泉にも、傷ついた白鷺がこの温泉で傷を癒したという伝説が残っています。また、名古屋駅・米原駅発着の北陸本線エル特急には「しらさぎ」という愛称がついていますが、これは、石川県の山中温泉は、傷を負った白鷺が傷を癒しているところから発見し、あらためて掘ってみたところ温泉が湧き出たと言われています。また、同じ鳥でも、コウノトリが傷を癒した伝説があるのは、多くの文人も訪れているという兵庫県の城崎温泉です。他にもコウノトリ伝説のある温泉地がいくつかあるようです。他の鳥で多いのは、やはり「鶴」かもしれません。有名なところでは、佐賀県の嬉野温泉です。神功皇后が西征からの帰途に白鶴を見付けます。しかし、傷を負っていて心配していたところ、河原に舞い降りて湯浴みをすれば、再び元気に去っていくのを見て「あなうれしの」と感想を述べたといわれています。この「あなうれし」ということから嬉野という地名ができたといわれています。鶴といえば、やはり何回か泊まったことのある福岡県の原鶴温泉があります。その名のとおり、川原で鶴が湯浴みしているところを発見したと伝えられています。温泉の由来を調べると歴史の古い温泉ほど、動物が湯につかり傷を治していたのを見つけて発見したというものの他、神話に基づくもの、弘法大師のような高僧や武将が発見したとか、夢の中で神様のお告げがあったなど、温泉の発見についてさまざまな言い伝えがあります。神話によるものとしては、大国主命と少彦名命によるものが多く、僧侶・武将・偉人による発見は行基、一遍、弘法大師による発見などの言い伝えが各地に残っています。特に行基が発見したものは北陸をはじめ、各地に多く、東北地方では、坂上田村麻呂による発見伝説が多く残されています。私は最近、講演のときは、温泉に泊まることが多いのですが、その温泉の開湯伝説を調べてみると、また違った楽しみが生まれるかもしれません。

開湯伝説” への4件のコメント

  1.  確かに温泉などに行くときに、ただ行って温泉に入って疲れを癒す他に、その温泉の由来というものを事前に調べたり散策するのも楽しみの一つですね。それに、大体の有名な温泉というのは動物が関与しているのが多いのですかね?しかし、たぬき、きつね、白鷺など動物が温泉に浸かっていた由来など、本当にそうなのかな?と少々疑ってしまいます。猿が温泉に浸かるのはよくテレビなどで見るので特別ですが、きつねやたぬき、白鷺までいくと…やはり疑ってしまいます。私は言い伝えというのは決して解明することが出来ないことなので、多少疑ってしまっても、納得してしまうものだと思いました。

  2. 多くの伝説が残っていることから考えても、自然に湧き出てくる温かいお湯は不思議な存在だったんでしょうね。発見したときの驚きはなんとなく想像できます。温泉といえば猿が頭に浮かびますが、猿が傷を癒していたという伝説もありますね。伝説だけでなく、その土地の特徴によってお湯の種類も違いがあったりして、そういう観点から調べてみても面白そうです。

  3. 開湯伝説とはあまり関係がないのですが、今日のブログを読んでいて「足下に泉あり」という
    言葉が思い浮かんできました。だれの言葉かわかりませんが、どんな大きな事業も、一日一日の
    小さな積み重ねが大事であるという意味のようです。藤森先生がどんな地方の山間僻地の小さな講演会であっても、決して手を抜かずに全力でお話をされるのは「足下に泉あり」という精神の現れでしょうか。
    本当にありがたいことです。来週は、琴平の温泉ですね。白鷺や鶴とは何の関係のない普通の温泉で
    すいません。お会いできるのを楽しみにしています。

  4. わが国日本は環太平洋火山帯にすっぽりと入っています。今もって活動を続ける火山を多くもっています。また休んでいるだけの火山もたくさんあるようです。それゆえ、地震が多く、さらには火山噴火の脅威もあります。しかし、火山の恩恵もあります。一つは地熱発電、そしてもう一つが温泉です。今日のブログの「開湯伝説」は興味をそそられます。温泉が湧き出る地の歴史や自然的特性を知ることができます。温泉に入る楽しみと歴史や自然について造詣を深められるとはまさに一挙両得。私自身まだまだ温泉に縁がありませんが、将来、温泉につかる機会があったら私も「開湯伝説」に興じたいものです。温泉を何倍何十倍も楽しめるような気がします。

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