りんごとザクロ

 果物の中で、よく神話などに取り上げられるものに「りんご」があります。
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だれでも知っているのが、聖書におけるりんごでしょう。しかし、旧約聖書に登場するアダムとイヴが、蛇にそそのかされて食べた善悪を知る果実がりんごであるというのは、どうも捏造のようです。そのころは、未だりんごは分布されておらず、食用に適していなかったようです。ギリシャ神話にもりんごが出てきます。「最も美しい女神に与えられる」と言われた黄金のりんごを巡って3女神が争い、遂にトロイア戦争になってしまったと伝わっています。また、ヘラクレスの12の冒険の中にも黄金のりんごをとってくる話があります。そんなこともあってか、英国のロックバンド ビートルズが1968年に設立したレコード会社は、「アップル・レコード」といいます。このりんごマークはポール・マッカートニーが所有するベルギーの画家、ルネ・マグリットの青いりんごの絵がヒントになっているそうです。また、有名なコンピュータメーカーである「アップルコンピュータ社」は、りんごを会社のロゴマークとしています。その会社のパソコンを「マッキントッシュ(マック)」といいますが、これはりんごの品種名(日本名:旭)です。
 同じように神話などに登場する果物に「ザクロ」があります。日曜日に塩山を歩いていると、庭にざくろの木が植えられているのをよく見かけました。ちょうど今、実が熟れ始めています。
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最近、ザクロジュースをよく見かけますが、実もそのまま食べられます。また、実を煎じた液でうがいをすると扁桃腺炎に効き、陰干しした花や実を煎じて飲むと下痢止めや虫下しになります。また、果実のしぼり汁で磨くと湯気でも鏡が曇らないといわれ、風呂の鏡を磨くために用いました。そこから風呂への入り口を柘榴口といいます。このザクロは、種が多いことから、アジアでは昔から子孫繁栄、豊穣のシンボルでした。また、実に残る”帽子状”のガクの部分は冠にも似ており、王冠をいただく果物として権威の象徴にもなりました。昔のソロモン王の宮殿の柱頭にはこのザクロがデザインされています。男性の中にいる唯一の女性のことを「紅一点」といいますが、これは中国の王安石が石榴の林の中に咲く花を詠んだ詩から出た言葉です。このザクロが劇的な話に登場します。その昔、インドに王舎城の夜叉神の娘で、訶梨帝母という女性がいました。彼女は、嫁して多くの子供を産みましたが、その性質は暴虐この上なく、近隣の幼児をとって食べるので、人々から恐れ憎まれました。お釈迦様は、その過ちから帝母を救うことを考えられ、その末の子を隠してしまいました。その時の帝母の嘆き悲しむ様は限りなく、お釈迦様は、千人のうちの一子を失うもかくの如し。いわんや人の一子を食らうとき、その父母の嘆きやいかん」と戒めました。そこで帝母ははじめて今までの過ちを悟ったので、お釈迦様は、柘榴の実を与え、人肉を食べないように約束させました。以後、お釈迦様に帰依し、可梨帝母は 鬼子母神として安産・子育の神となることを誓い、人々に尊崇されるようになったとされています。その像は天女のような姿をし、子供を1人抱き、右手には吉祥果(ザクロ)を持っています。また、ギリシャ神話において冥王・ハーデスにつれ攫われたペルセフォネはザクロを口にしたことで1年のうち一定期間を冥界で過すこととなり、母・デメテルはその期間嘆き悲しむことで冬となったといわれています。果物は、様々な言い伝えや劇的な物語を織り成す小道具としてよく登場しますね。