「さあ、こんな場所を整えました。」「こんなものを置きました。」ということで、もちろん環境が整ったわけではありません。その環境を生かす「人」がいなければなりませんし、その環境を生かすソフトが必要です。少し前に、とても貴重な体験をしました。上田電鉄別所線に乗ったときのことです。上田電鉄別所線は歴史と文化の里、信州上田と信州の鎌倉と称される塩田平を走り抜け別所温泉を結ぶ全長11.6Kmの鉄道です。ここには、かつて、窓からの景色がまるで絵画のように見える、その名の由来ともなった丸い窓を持つユニークな車両丸窓を備えた、いわゆるモハ5250(丸窓電車)という電車が走っていました。このような丸窓を持った電車は他の地域にもあったそうですが、この別所線では、昭和2年に製造され、昭和61年まで通勤・通学、観光客の足として大いに活躍しました。その車両が廃止されたあとも、とても人気が高かったことから、幸いにも3両とも解体されずに、別所温泉駅に保存されています。
そして、この地を走る車両としてもう一度丸窓電車を復活しようということになり、「別所線まるまど号」を2004年制作に着手し、翌年、土日祝日に限定し運行を開始しました。そして、その愛称を一般公募により、2005年から「まるまどリーむ号」と変更されました。その電車に乗ることができたのです。まさに、丸窓から見える塩田平の景色は、歴史を感じさせ、とても素晴らしいもので、丸窓の効果を十分と感じさせるものでした。
しかし、私と妻が乗ったこの電車は、それ以上に効果的にしたものがありました。それは、上田駅から乗り込んだ駅長さんです。観光客のような乗客一人ひとりに声をかけ、どこから来たのかとか、このあたりはどんな地域などか説明をして歩きました。そして、紙切れを出して、みんなに渡し始めたのです。その紙を見ると、いろいろな歌の歌詞が書いてあります。どうするのだろうと思っていると、なんと、「さあ、みんなで歌いましょう!」というのです。「えっ?」と思っていると、懐からハーモニカを出して吹き始めます。はじめはみんな照れくさそうでしたが、そのうちに丸窓から見える景色に誘われてか、歌いだし、車中、終点の別所温泉駅まで別所線を堪能しました。そのときに、丸窓の車両を復元して走らせただけではなく、人の歓迎する気持ちとか、もてなす気持ちがその環境をより効果的にしたことを感じました。
先日の新聞にこんな記事が掲載されていました。「旭山式 マネだけでは…」という記事です。北海道の旭山動物園の人気にまねをしてその手法を導入した各地の動物園が、導入のやり方によって明暗が分かれているというのです。旭山をそのまま模倣した施設、旭山からヒントを得て発展させた施設、独自の展示を生み出した施設など結果がそれぞれ異なっているそうです。うまくいかなかった園に対して、旭山動物園の園長は「情報化社会だから、旭山と同じことをやっても『なにマネをしているんだ』となる。地域性を生かした独自の発想をしていかないといけない」と指摘しています。一方、旭山に感化されて食事風景の公開などを取り入れたいしかわ動物園では、入園数を増やしました。その園長は、「飼育係が心をこめた取り組みこそが大事だとわかった。ソフトがある上で、ハードが整うのが一番です」と話しています。一昨日のブログの最後に書いた「ソフトと環境を交互に演出することが必要だ」ということであり、その環境の中で、「人」という大切な要素を忘れてはいけないことを再認識する経験でした。
「「人」という大切な要素を忘れてはいけない」。当たり前のことなのに何故かあらためて考えさせられる命題です。私はいわゆる「環境派」なので、いわゆる「人の心派」の人たちから良く思われません。「人の心」を重視するみなさんは「心」が変われば「環境」も変わる、という論法のようです。確かに「環境」が変わってもその変り方がおかしければ、すなわち「人」もその「環境」を構成する大事な要素なんだという認識がなければ、たとえばある「環境」を「マネ」た時「ほとけ作って魂入れず」の状態に陥る危険性があります。今日のブログで紹介された上田電鉄の取り組みはまさに「人」「モノ」「空間」という3要素が絶妙にマッチして織り成された結果を私たちに示してくれます。その3要素がそれぞれの力を出し合って初めて「環境効果」が遺憾なく発揮されるのだ、と諒解致しました。そして3要素のバランスの大切さに気づきました。
見守る保育を始めて4年目になります。まずはせいがの森保育園を目指し環境作りから入ろうということでひたすら環境作りから始めました。「環境だけでは生かされない。そこに人がいなければ」ということをブログで見てまさしくその通りだと思いました。今、自園で直面していることでもあり、日々の保育でも環境だけ与えて安心している面が見られていたので見直していかなければと思いました。
話は変わりますが、見知らぬ旅先で人から受けた喜び、親切は
嬉しいもので、その土地まで良さを感じるものです。車内では楽しい歌声とともに更に楽しい旅になったでしょうね。
本当に楽しい旅でしたね!その「まるまどりーむ号」に乗って車掌さんのハーモニカと一緒に歌ってみたいです。
全く同じ事をするだけでは確かに意味がないような気がします。全く同じにするわけではなく自分の個性を活かせる真似の仕方という力が必要だと思いました。
環境というのは奥が深いです。人や物などの環境がお互いを刺激し合ってどんどん変化していきます。ソフトとハードのどちらが大切でとかどちらが先でということではなく、両方が複雑に絡み合って欠くことのできないものと考える方が自分にはしっくりきます。やはりバランスが一番大切だと思っています。
旭山動物園をそのまま模倣した施設、旭山からヒントを得て発展させた施設、独自の展示を生み出した施設のそれぞれを見て感じてみたいです。今自分たちが進もうとしている方向を違った面から考えることもできるような気がします。