建築用語2

 建物に関することわざとか、言い回しとかには、昨日のブログ以外にも面白いものがたくさんあります。たとえば、よく建物の外壁を、板を張って施工するときに、平たく長い板を重ねながら張っていく方法があります。これを「下見板張り」といいます。鎧のように張ることから「鎧張り」ともいいます。それに対して、重ねていかないで、板を縦とか横に平らに張ることを「羽目」と言います。この張り方ですと、もし板を1枚はずしてしまったら、隙間が出来てしまい、台無しになってしまい、役に立ちません。ですから「羽目をはずす」ということ「人の度を過ごす態度」「興に乗じて度をはずすこと」の意味するようになったのです。また、羽目をはずしてしまっては、せっかくの建築意匠が台無しになってしまう事から「苦しい羽目に陥る(破目とも書く)」といった使い方のように困った場合とか境遇を意味するようになったり、「羽目に付く」というのは、窮境に陥ることを意味したりします。ただ、「羽目をはずす」という言葉は、荒馬の口にはめる縄のことを「はめ」といい、はめをはずすと馬が暴れ出すところから転じて調子に乗った行動をすることを意味するようになったという説もあります。このほかにも「羽目に掛かる」とは、勢いに乗ること。次第に調子が出てきて、興に乗ることをいいます。次にこんなことを聞いたことがあると思います。「順調に物事が進まない」、「はかどらない」ことを「埒が明かない」といいます。この「埒」(らち)というのは、今では、主に競馬場の周囲の柵の事をさしますが、もともとは、単に「低い垣」とか「しきり」の事をさした言葉でした。ですから、「埒が明く」とは垣が取り除かれる、つまり障害物が取り除かれるという意味で、物事が片づくこと、はかどることの意味に使われます。逆に「埒が明かない」ということは、「はかどらない」ということになり、「埒も無い」は、「乱雑である」「つまらない」「順序がたたない」という時に使われます。また、「埒外」「埒内」という言葉は、垣の外、内側という事から「埒外」は物事の一定の範囲外、「埒内」は物事の一定の範囲内という意味です。ダメな人とか頭の鈍い人のことを「ボンクラ」といいますが、この言葉を漢字で書くと「盆暗」とか「盆蔵」と書きます。「盆暗」と書く場合は、「盆」は賭博の盆ござのことで、盆の事に暗い。つまりサイコロの目の動きを読んだりする事が下手な人という意味に使われていたのが、頭のにぶい人を指す言葉となりました。「盆蔵」と書く説は、盆は八月のうら盆の盆で、蔵は土蔵をさします。土蔵造りは普通寒い季節にしますが、これを夏の暑いときにすると、土の表面ばかり乾燥して、平均して乾かないので、役に立たない土蔵になってしまいます。それで盆の頃造られた蔵、つまり「盆蔵」は駄目だということから、駄目な人の事を「盆蔵」と言います。また、お寺の屋根は「瓦ぶき」に対して芝居小屋は「コケラぶき」(杉やヒノキの薄板を用いる)でした。その「コケラ」には、「木くず」という意味もあって、そのコケラをきれいに払い落として、初めて新築完成とする習わしがあり、「コケラ落とし」といえば、劇場を新築した時の披露興業を意味するようになりました。また、ヒノキで張った大変立派な舞台で演技する事から、自分の腕前を披露する晴れの舞台を「ヒノキ舞台」といいます。また、「結構」の語源は、「構えを結ぶ」ということから、家屋を構築したり、文章を組み立てたりする事を言い、建築物や文章の組立・構築が優れている時、「見事な結構」と誉め、やがて、見事、立派の意味を表すようになりました。建物に関する言葉は誰にでも馴染みがあるので、日常的に使われる言葉になっていることが多いですね。

建築用語2” への6件のコメント

  1. なじみのある言葉がこんな風に使われていることを、紹介されて初めて気づかされます。いかに注意深く言葉を使っていないかが分かってしまいます。特に興味を持ったのが、「埒があかない」という言葉です。このラチという言葉はしょっちゅう耳にしていますが、2つが結びついていませんでした。言葉の成り立ちを知っていると、間違った使い方には気づきやすくなるはずです。言葉を正しく丁寧に使うためにもこういう勉強は必要ですね。今回は建築から多くのことを学ばせてもらいました。

  2.  昨日のブログに引き続き、建築用語から色々なことわざ、言い回しがあるとは驚きです。とくに昨日のブログなんですが、「几帳面」という語源があのような理由とは納得してしまいました。何気に私は周りからは几帳面と言われているので…。
     「結構」という言葉は私の考えでは「とても」「すごく」とかそういう感じの意味であって語源も何もないと思っていましたが、ちゃんと立派な語源があったなんて「結構」という言葉に申し訳ない気持ちです。よく使う言葉なんで。
    そう考えると日常使っている言葉は建築用語が本当に多いと昨日と今日のブログで知りました。

  3. ●「埒があかない」と一人で言ってみて「フッフッフ」と笑ってしまいました●意味を知らずに言っていた昔の自分が、少し可笑しかったので…

  4. 普段使っている表現もそのルーツは?と問われると???となることがよくあります。今日のブログで紹介されている「建築用語」からくる言い回しもそうです。「羽目をはずす」「埒が明かない」などはその出自も知らずに使っていました。意味は国語の時間で学習したので覚えていました。ルーツを明らかにされて意味を教えられたら様々な表現も2倍3倍興味深く覚えられたことでしょう。年齢を重ねいろいろなことを知るにつけ、もし学生時代にこのように教えられていたら、とないものねだり的に過去を振り返る時があります。ところで「ボンクラ」とは懐かしい表現に出会いました。今時の若い人たちは知っているのでしょうか?今回のブログの内容も誠に結構でした。

  5. 普段使っている言葉の中に建築用語はいくつもあるのですね。埒や羽目というのは確かにそれだけ聞くと、どんな意味なのかわかりませんね。「埒が明かない」「羽目をはずす」という言葉そのものが、それで意味をなすものだと思っていましたが、埒にも羽目にもちゃんと意味があったのですね。普段、何気なく使っている言葉でも、疑問を持ち、どういう意味だろう?と思えると、見えてくる世界がまたおもしろくなりそうです。「結構」は結構つかいます。私の中では「結構」は相対的に見ていい方とか、想定していることを越えている時につかうものだとばかり思っていました。「結構うまくできた」なんていうのは「すごくよくできた」ではなく「まあ割といい具合にできて」という曖昧な表現の仕方でつかっていました。これからの結構の使い方に変化があるかもしれません!

  6. 建築用語が、実は日常に使用される言葉の中に多く存在するということを考えると、建築というのが、日本にとって重要であり、日常の一部でもあったということがうかがえます。「豊富な木材と、湿度の高い気候、木の性質をよく知った技術者の存在」によって、日本の木造建築を席巻し、その文化が言葉を生む過程に大きく影響していった様子が感じられました。「羽目をはずす」「埒があかない」「ぼんくら」「ひのき舞台」など、一度は聞いたことがある単語ですが、本当の意味を理解していない状態で使用していたことに気がつきました。他にもたくさんそのような言葉があるということだけでなく、当然なのですが言葉には全て意味があるということを再認識できました。

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