本能寺

今年の8月7日の 読売新聞に、こんな記事が掲載されていました。「焼けた?瓦出土、本能寺の変「史実を裏付ける貴重な発見」戦国武将、織田信長が明智光秀に討たれた「本能寺の変」(1582年)で焼けたとみられる大量の瓦や、寺の堀跡、石垣などが京都市中京区の旧本能寺跡で見つかった。本能寺の変を巡る遺物、遺構が発見されたのは初めてで、発掘した民間調査機関「関西文化財調査会」は「史実を裏付ける貴重な発見」としている。」本能寺の変で焼けた瓦が出てきたということですが、実は、この本能寺は、なんども消失しているのです。もともと本能寺は、「本応寺」という寺号で、室町時代の1415年、京都油小路高辻と五条坊門の間に、日隆によって創建されたものですが、日隆は、妙本寺の月明と本迹勝劣をめぐって対立したため、月明の宗徒によって本応寺は破却され、日隆は河内三井・尼崎へ移りました。そして、1429年、帰洛して大檀那の小袖屋宗句の援助により、千本極楽付近の内野に本応寺を再建し、さらに1433年、如意王丸から六角大宮の西、四条坊門に土地の寄進を受け再建し、寺号を「本能寺」と改めたのです。しかし、1536年、比叡山との教義論争に端を発した天文法華の乱により堂宇はことごとく焼失し、一時堺の顕本寺に避難しました。その後、1582年6月21日、ここで信長が明智光秀率いる軍勢に包囲され自刃する事件が起き堂宇を焼失したのが、本能寺の変です。まだまだ災難にあいます。1788年の天明の大火によって、1864年の禁門の変(蛤御門の変)によって堂宇を焼失しています。現在の本能寺は区画整理によって京都市役所に近い、寺町通り商店街のすぐ横にひっそりと建っています。
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しかし、写真のとおり、本能寺の「能」の字は右側の2つの「ヒ」が「去」のような字に替えられているのは、本能寺が度重なって焼き討ちに遭っているため、「『ヒ』(火)が『去』る」という意味で字形を変えているといわれているのです。
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ところで、本能寺の変のとき、信長は幸若舞の「敦盛」を愛誦し、死に臨んでもくちずさんだといわれています。幸若舞「敦盛」は、源氏の武将熊谷次郎直実が平家の若武者平敦盛の首を討つという物語で、幸若舞太夫が物語を語りながら舞うものが幸若舞です。「思えば此の世は常の住みかにあらず、草葉に置く白露、水に宿る月よりなほあやし。金谷に花を詠じ、栄花は先立って無常の風に誘わるる。南桜の月をもてあそぶ輩も、月に先立って有為の雲に隠れり。人間五十年、化天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり。一度生を受け滅せぬ者の有るべきか。是を菩提の種と思い定めざらんは、口惜しかりし次第ぞと定め、・・・」これが、織田信長が舞った越前の幸若舞「敦盛」の曲の一部分です。「人間五十年、下天の内をくらぶれば 夢幻の如くなり。一度生をうけ、滅せぬもののあるべきか」人間の一生など世の他のものに比べればはかないものだ。これは人の寿命がたった五十年という意味でなく、下天(天界の最下層)では一日が人間世界で五十年に相当するという意味で、「一度生をうけ、滅せぬもののあるべきか。命あるものは全てかならず滅びる運命にあるものだ」ということで、「人の世界など天界感覚から一日程度のことなんだ」とは、ずいぶんポジティブな考えかたです。これに比べて明智光秀は「順逆二門無し… 五十五年の夢 覚め来て一元に帰す」(人の道は反逆も従順もない。55年の生涯も夢が覚めるように終わり本来に帰るだけだ)という辞世をのこしました。

本能寺” への2件のコメント

  1. 本能寺の能の字が火が去るという字になっていたのは知りませんでした。このことからだけでも十分に歴史を感じます。この先もいろんな遺跡や遺物が発見されては、今までの史実が裏付けられたり覆されたりするんでしょうね。歴史の話を聞くと、いろんなことが十分に分かっているようで、実はほとんどのことが分かっていないんだろうなあと、思ったりします。そう思うと、考えたり想像したりすることのおもしろさが更に増すような気がします。

  2. そうか、「人間五十年」とは人間の寿命のことではなく天界の1日が人間の五十年に相当する。なるほど。今日のブログも勉強になります。読売新聞の記事を紹介して頂きましたが、正直驚きました。「本能寺の変」を実証する遺物遺構が発見されたのは今回が初めてとは。しかも「本能寺」は何度も焼失しているとは。私たちが史実として学んできている歴史なるものについていささか考えざるを得ません。NHK大河ドラマではこれまで何度か本能寺の変を扱い、その度に炎の中で死に逝く織田信長を観てきました。何の疑問も持っていませんでした。しかし、今回の発掘があるまでは史実を裏付けるモノ(焼けた瓦など)が知られていなかったとはなんとも複雑な心境です。どうやら私たちが覚えさせられた「歴史」はいつ変るかわからないんだ、ということを思い知らされました。

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