今日は、ドイツミュンヘンからDr. Eleonore Hartl-Groetch(エレオノーレ ハルトル-グレッチェ博士)氏をお呼びし、「世界の保育から観る今の子ども像」というタイトルで、新宿区の後援を得て講演会が開催されました。
彼女は、2000年より、バイエルン州都、ミュンヘン市の幼児教育施設の責任者です。今、ドイツでも幼児施設の絶対数が足りないために新設幼稚園建設の計画、実行し、2012年までに8000人分の場所が計画されています。また、幼小連携のために、バイエルン都市会議に0歳児から12歳児の代表として参加し、ミュンヘン市に0歳から12歳までの子ども時代を専門とする新しい専門高等教育機関を立ち上げ、その顧問をしています。そのバイエルン州では、今「バイエルン陶冶」というプロジェクトを立ち上げています。陶冶ということについては、2005年12月09日のブログで書きましたが、「日本や英語圏では、ケアと教育という区別の仕方をするが、ドイツ語圏では、betreuung, bildung, erziehung 保護と陶冶と教育という言い方をする」といわれています。陶冶は、「人間形成」のことをいう古い表現で、今は、「教育」とほとんど同義に使われます。しかし、教育には二通りの意味があります。ひとつは、「人間に本来備わっている能力や性質を、外部からの作用によって引き出し育て上げる」ということです。教育=educationの語源は、ラテン語のeducoの「育てる」「引き出す」からきているといわれています。もうひとつは、「人間が社会の中で、人間として生活できるように人格形成を施す」という一面です。これがビルドです。これを保育の中に具体的にどう入れるかというと、「保育者のためのミュンヘンワークブック」という冊子に書かれています。この冊子を今日いただきました。サブタイトルには、「幼児教育施設のための遊びの材料集 バイエルン陶冶-保育プランの沿って」と書かれています。この中は14章の項目に分かれ書かれています。日本語に訳していただいたのはそのうちの2章分ですが、この二つの章はとても対照的です。第5章は、「感情と社会性」ということで、「怒りは人を盲目にする?」というテーマでプロジェクト保育の内容がいくつか紹介されています。これは、人格形成との関係は見えやすい気がしますし、どの園でも取り組んでいる気がします。それに引き換えもうひとつの第8章は、「算数」です。この言葉を聴くと、日本では早期教育を思い浮かべ、人格形成と間反対にある取り組みのように考えます。この「算数」の保育をするうえでの陶冶の目的にはこう書かれています。「子どもたちは毎日の幼児教育施設に生活の流れの中で、形、数、空間、時間との付き合い方について習う。その上で数学的な問題や解決方法を口頭で伝える能力を培う。子どもたちは、算数の合法則性を把握し、日常の中で、数学的な問題解決のための手法を取り入れる。これは、次のような領域に及ぶ。「数という概念をまだ把握していない時期の領域」例:自分の体や周りのものについてのさまざまな空間―場所―位置についての体験、五感すべてを使って幾何学的な形を把握する。「数という概念を認識してからの領域」例:物体の一対一対応、数字というシンボルについて、数える能力、実際的な大きさを推測できること。「言語的、シンボル的な表現」例:概念との付き合い、数のついた言葉の使用。時間についての基本的な概念。幾何学的形の基本的な概念。とあります。いくら人格形成といっても情緒的に、心の問題として捉えるのではなく、算数の力としても捉える考え方は、ドイツらしいというか、日本には足りない部分のような気がします。
「保育者のためのミュンヘンワークブック」の「算数の保育」のお話は興味深いですね。
なんだか藤森先生の「算数のはじまり・国語のはじまり」の内容にとても近いですね。
藤森先生の保育理念と実践が、ドイツで高く評価される理由がよく理解できました。
「算数のはじまり・国語のはじまり」が一日も早く英語やドイツ語に翻訳されて
海外の人に読まれるようになったらいいのにと思いますね。
グレッチェ博士のお話はとても刺激的でした。同じことでも日本とドイツで取り組み方が違っていることや日本の当たり前がドイツから見ると全く当たり前でないことなど、あらためて確認することができました。これを受けて、私たちがどう動くかという大きな課題をもらいました。2周遅れという現実をきちんと押さえ、だからこそ丁寧に進んでいこうと思っています。
ドイツ語のBildungは日本語の「陶冶」と訳されますが、この日本語は普段あまり耳にする機会がないので今ひとつピンと来ません。にも関わらず、Bildungという概念には魅力を感じます。Bildung「全人格形成」は「教育」「養護」を包括する重要概念なのでしょう。社会文化的教授法がBildungの方法と理解することができるかもしれません。これについてはもっと勉強したいと思います。「算数」に関するドイツでの取り組みは脱帽です。保育室の中に「ザーレンラント(数の国)」があるのには驚きました。楽に「算数」が学べる環境ですね。そしてその学びが「人格形成」に結び付けて考えられています。流石、生まれながらにして学ぶ権利がある、と法律で規定している国は違います。多くを学ぶことができました。
ドイツにおける陶冶の考え方を理解することも、我々の目指す保育の一つだということを感じました。
しかしながら目指している保育についてドイツやオランダなどの保育と比べ2週遅れのサイクルだと言う事実を知り、この遅れを取り戻すためにもさらに勉強していきたいと思います。