坂上田村麻呂

 平安初期の武人で上級貴族だった坂上田村麻呂の墓を、京都大大学院文学研究科の吉川真司・准教授(日本古代史)が文献調査で特定したというニュースが先日報道されていました。1919(大正8)年に京都市山科区で発掘された「西野山古墓(こぼ)」の可能性が極めて高いといいます。田村麻呂が創建したという京都の清水寺に残る平安後期編纂の「清水寺縁起」に墓の位置が記されていたようです。新聞によると、行政の最高機関が土地を管理する民部省に送った文書で、田村麻呂の墓地に「山城国宇治郡七条咋田西里栗栖村の水田、畑、山を与える」という文言があったので、平安時代の図を基にした「山城国宇治郡山科地方図」と照合すると、今の山科区西野山岩ケ谷町にあたり、西野山古墓の場所と一致するといいます。この西野山古墓の内部から、武人の墓にふさわしい純金の装飾を施した大刀や金銀の鏡、鉄の鏃(やじり)などの副葬品が出土しています。こうした研究から時代と位置と身分が一致し、田村麻呂の墓と特定したものです。田村麻呂は、伝説が多いのですが、正三位・大納言・参議となった高官だったので、日本後紀は散逸した部分が多いものの、幸いにして田村麻呂の薨伝(こうでん)が残っています。薨伝とは、三位以上の貴族が亡くなった時に、国家が編纂した正史にその人の業績と人柄を偲んで記録された追悼文です。ここには、業績と人柄を偲んで書いているので、良く書いたり、大げさに書いたり、半ば軍神として神格化したように書いたりはしているものの、大方、その人を知ることが出来ます。そこに書かれてある風貌は、「赤ら顔で黄色の鬚のある容貌で、人には負けない力を持ち、将帥の量があった。」とあります。そのかわり「往還の間、従う者が限りなくあり、人馬を支給し難くなったことがあり、往還の路費は莫大なものであった。」というほど人望があったのでしょうか。群書類従にも、田邑麻呂伝記が収録されています。そこには、風貌がもう少し詳しく書かれています。「身の丈五尺八寸、胸の厚さ一尺二寸の堂々とした姿である。目は鷹の蒼い眸に似て、鬢は黄金の糸を繋いだように光っている。体は重い時には二百一斤、軽い時には六十四斤、その軽重は意のままであり、行動は機に応じて機敏であった。怒って眼をめぐらせれば猛獣も忽ち死ぬほどだが、笑って眉を緩めれば稚児もすぐ懐に入るようであった。」体が、重くなったり軽くなったりするのは変だと思いましたが、ここのところの原文は、「動静合機。軽重任意。」ということで、動静とは「立ち居振る舞い」のことで、それが、機(道理)に合っているということであり、軽重とは、「物事の価値判断」のことであり、その基準を意(心の中)に任(にな=とどめる)うということのようです。そして、笑うと稚児も懐に入るということは、「懐く(なつく)」ということです。それは、「丹款顕面」ということで、丹款(まごころ)は面(おもて)に顕(あら)われるということです。子どもは、それがすぐにわかるようです。しかもそれは、生まれながらのもののようです。「桃花不春而常紅。勁節持性。松色送冬而獨翠。」とあるのは、「桃の花は春ならずして常に紅いし、松の色は冬を送りて獨(ただ)翠(みどり)のように、勁節(つよい意志)は性(うまれながら)にして持っているもののようです。比較するのもおこがましいのですが、私もよく顔が怖いとか、近寄りがたいとか言われますが、子どもはすぐに寄ってきて懐いてくれます。子どもは表面よりも心の中を見て信頼してくれます。

坂上田村麻呂” への2件のコメント

  1. 今日のブログの「坂上田村麻呂」については歴史で習いました。当時の東北地方を征服し大和朝廷の版図を拡大した武人として学んだ記憶があります。東北地方に生まれたので「坂上田村麻呂」と聞くと「征服者」のイメージが強くなってあまり良い気分にはなりません。もっとも、我が先祖が昔から東北に居住していたのかどうかわかりません。もしかすると征夷大将軍坂上田村麻呂公の家来として東北地方に行ったのかもしれません。「征夷大将軍」ですから容貌風貌はかなりデフォルメされて記述されているのでしょう。それでも「笑って眉を緩めれば・・・」はさもありなん、と思ってしまいます。豪傑には本来優しい人が多いですからね。たとえば、憤怒の形相の不動明王も実は慈悲そのものです。じぃーっと観ているとやさしいまなざしに変ってきます。子どもは純粋です。その純粋さに働きかけられるような大人になりたいといつも思います。

  2. 「動静合機。軽重任意。」いい言葉ですね。立ち居振る舞いや物事の価値判断はその人の人格を表してしまうと思います。自分をよく見せようと思ってもうまくはいきません。ごまかしがききません。動静も軽重も残念ながらまだまだです。「動静合機。軽重任意。」そんな人物になりたいです。

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