6月8日は、「バイキングの日」だそうです。なんだかこじつけのような日ですが、793年のこの日、バイキングの活動が初めて記録に現われたからだそうです。この日くらいから300年以上に渡って西ヨーロッパ沿海部を侵略したスカンディナヴィアの武装船団(海賊)を指す言葉でした。しかし、これはキリスト教徒からの一方的な見方であり、後の研究の進展により「その時代にスカンディナヴィア半島に住んでいた人々全体」を指す言葉に変容し、中世ヨーロッパの歴史に大きな影響を残しています。バイキングは海賊、交易、植民を生業としていたのではなく、故地においては農民であり、漁民であった。特に手工業に秀でており、職人としての技量は同時代においては世界最高のレベルであったということです。この「バイキング」という言葉は、日本では、食べ放題の飲食サービスを指す和製英語として使われています。昭和32年(1957年)、帝国ホテル内にオープンする新レストランをどのようなコンセプトとするかを考え続けていた当時の支配人は、新しく開設されたスカンジナビア航空の東京-コペンハーゲン航路でコペンハーゲンにわたり、宿泊地で“スモーガスボード”というスカンジナビアの伝統料理に出会いました。それはもともと友人知人が有り合わせの食べ物を持ち寄って、大勢で賞味したことから発展したもので、魚介料理や肉料理、薫製、酢漬けなどを豊富に用意し、好みの料理を自由に食べるご馳走でした。魚介類を始め日本人にもマッチする味覚、豪華なボリューム、好みのものを自由に食べるスタイルのユニークさに、日本でもこのスタイルが取り入れられないかということで、総料理長にこのスモーガスボードの研究を指示しました。そして翌年帰国して、帝国ホテル第2新館地下1階に、わが国初のスモーガスボード専門レストランが誕生させたのです。そして、北欧の海賊の名にちなんだ「インペリアル・バイキング」と名付けられたスタイルは、連日満員の人気を博しました。このときのネーミングである「バイキング」が、やがてわが国の“食べ放題”スタイルの代名詞となりました。しかし、あくまでも和製英語なので、外国ではこの言葉は通じません。早く、日本でも本来の「ビュッフェスタイル」という言い方に変えたほうがいいと思います。しかし、日本では、ビュッフェというとカウンター式の軽食堂のことをさすことが多いようです。また、外国では、ビュッフェとは、「立食:正式に食卓につかず,客がセルフサービスで食べる食事」のことを言い、食べ放題という意味はあまり強くないようです。私は、好き嫌いがまったくなく、返っていろいろな珍しいものを食べたく、量は余り食べないほうなので、このバイキング形式は余り好きではありません。先日も、宿泊先で、山菜のてんぷら盛り合わせが食卓に並びましたが、こういうほうがいいですね。しかも、黙って自分のお皿に乗せて、席に戻って黙って食べるというのも好きではありません。わたしは、このバイキングスタイルとスーパーでの買い物スタイルが人々のコミュニケーション能力を奪ってしまっている気がします。我慢をしたり、人に合わせたりすることを避け、また、他人と会話をすることを避けることを望むようになった為に、よりこのようなスタイルが好まれるようになってきたのかもしれません。わずらわしいかもしれませんが、人との会話は脳の訓練にはいいかもしれません。先日の山菜のてんぷらも、傍らで、一つ一つ何の山菜かを説明してくれました。
コシアブラ・山うど・こごみ・ぜんまいなど
山菜てんぷらの盛り合わせ、垂涎ものです。おいしそうですね。今日のブログの「バイキング」が「海賊」のことだと子どもの頃は思っていました。角のついた兜をかぶって大海原を船で進む、顔が毛むくじゃらの白人。そして骨付き肉をがぶりむしゃむしゃと食べる豪快な姿・・・。「バイキング」食事を経験する前は、その海賊の食事風景が脳裡にこびりついていて、「バイキング」とは海賊料理?のことだとずーっと思い込んでいました。そして大人になってホテルでバイキング形式の食事を摂るに及んで「黙って自分のお皿に乗せて、席に戻って黙って食べる」ことだとわかり、何だかがっかりしたことを思い出しました。
バイキングが、友人知人が有り合わせの食べ物を持ち寄って大勢で賞味したことから発展したものだとすれば、ずいぶん形が変わったんですね。洗練されたというかシンプルというか、そういうものに変わっていくときに省かれてしまうような非効率的な部分に、意外と大切なものがあるような気がします。人と人との関わりがいろんな場面で減ってきています。食事のときや買い物をするときなど、昔は当たり前のようにあった関わりが減ってきていることをあらためて実感しました。
●「帝国ホテル内にオープンする新レストランをどのようなコンセプトとするかを考え続けていた当時の支配人」とは犬丸一郎氏ですよね。同氏著の「帝国ホテルから見た現代史」の中に載っていました(本自体はエッセー風でしたが)。