聴診器

5月17日の 読売新聞に、「体の音知りたい“聴診器ブック”ブーム」という特集が組まれていました。この「聴診器ブック」とは、医療現場で使われている聴診器と、一般向けの説明書をセットにしたもので、書店で販売しています。この聴診器で何の音を聞くかというと、購入した人によって様々なようですが、多くは、健康志向の高まりに加え、「お医者さんは普段、どんな音で判断しているのだろう」といった好奇心も背景にあるとかかれています。また、「飼い犬の心臓の音も聴けて面白いって聞いたので。知り合いにも頼まれ、3冊買いに来ました」とか、「夫が太ってきてメタボリック症候群が心配なので」「子どもが病気がちで、心臓や呼吸の音がどうなっているのか聴けないかなと思って」などあるようです。このセットは、3月中旬に大型書店で販売を始めたのですが、予想以上の売れ行きで、すでに1万冊を売ったそうです。実は、数年前に私は聴診器を買い求め、机の引き出しに入っています。私は、何の音を聞こうと思って買ったのかというと、気に幹の中を流れる水の音を聞きたかったからです。木の幹に聴診器を当てて聞いてみると、木が水を吸い上げる音が聞こえると何かで読んだからです。聴診器を幹に当てて聴こえる音は、木が根から水分を吸い上げる「揚水音」という音です。幹だけでなく、雑木林に出て、木や土に聴診器をあててみるといろいろな音が聞こえてきます。木から聞こえてくる音も、木によって違いますし、土の音、水の音、これらの音からは、大地の息吹を感じます。それを、「観聴」というそうです。聴診器では、他にもいろいろな音が聞けるようです。医者が使い意外で聴診器を使っている場面をテレビで見ることがあります。それは、金庫破りが聴診器を当てながら金庫のダイヤルを回している姿です。こんな聴診器ですが、このように音を聞き分けることに関して、遊びを工夫する天才である子どものほうがその原理を知っていたようです。かつて患者を診察するのに、以前は直接皮膚に耳を当て、音を聴いていました。1816年のあるとき、患者が太っていて胸部に耳を押し当てても音がよく聞き取れません。フランスの医師ルネ・ラエネクはどうしたものかと思案しつつ公園にたたずんでいました。すると、子どもたちのひとりが木の棒を釘でこすり、ひとりが耳を当てて音を聞いています。それにヒントを得て、ラエネクは病室に戻ると紙を巻いて筒をつくり、患者の胸に当ててみました。それが、聴診器の発明です。
そのほか、聴診器ではありませんが、音を聞いて異常に気がつくのは、体だけではありません。「機械の異音の発生箇所を探す」「配管の音を聴く」「卵の孵化までの情報採取」なども音から知ります。やはり今年の1月12日の 読売新聞で紹介されていた仕事は、「機関車のお医者さん」です。患者に聴診器を当てるように、小型ハンマーで機関車の節々をたたきます。わずかな音の変化を聞き分け、不具合を“診察”するのです。私が子どもころは、よく機関車のあちらこちらをたたいている人を見ました。なんでたたいているのだろうと不思議でした。その姿は、たたいて何かを聞き分けているようには見えず、ただ歩きながらなんとなくたたいているかのように無頓着に見えたのです。しかし、その音の微妙な違いで故障箇所を見つけていたのです。もっと人間の能力をあてにしていたら、あの、先日起きたジェットコースターの事故は起こらなかったかもしれません。機械は、人間の能力を衰えさせますね。

聴診器” への5件のコメント

  1. 「聴診器」というものを使った経験はあまりありませんが、健康診断等を受けるたびに聴診器をあててもらいます。体内音の異常によって病気を発見するのですね。現在はCTやMRIのような精密な機器によって病気の発見を行っているようですが、今日のブログを読んで「聴診器」もなかなかの働きをしていることがわかりました。毎週園医さんが来て子どもたちの健康をチェックしてくれます。その時も聴診器を持参します。その聴診器のお値段を尋ねたところ4万円、とのことでした。「聴診器」にもいろいろあるそうです。十数万円の聴診器になるといろいろな機能がついてくる、といった類のことも仰っておりました。できれば聴診器のお世話にならない健康体でありたい、と思うのですが、年々歳々、数病息災、を旨としなければならなくなっています。それから今日のブログの最後の「機械は、人間の能力を衰えさせます」はまさにその通りだと思います。自分自身の能力というものを意識しないといけません。機械に頼っていては漢字も忘れ、英単語も覚えられなくなります。

  2. いろいろ便利な機械ができてきているのに、何故医者は聴診器のような原始的なものを使うんだろうと不思議に思っていました。でも、不思議に思いながらも妙に安心感があるから、またまた不思議な感じです。聴診器を使った診察は医学の中でも大切なことなんだろうと思います。
    揚水音を一度聞いてみたいです。木や土の音など、知らない音がまだまだたくさんありそうです。ルパンの金庫破りを見たときと同じようにワクワクします。

  3.  古代ギリシャの哲人ゼノンの言葉に
    『人間には、二つの機能(食べる・話す)を持っている口は一つしかついていないが、一つの機能(聞く)しか持っていない耳は二つもついている。これは人間に大切な教訓を与えている。つまり〈喋る倍だけ聞け〉ということだ。』
    とあるそうです。
     先生の聴診器のお話をお聞きして、いかに喋るばっかりで聞くことのなかった自分を反省させられました。
    子どもに指示し動かそうと声を張り上げるのではなく、耳をそばだてて、聴診器を当てる思いで子どもの声を聴くことが先決なのですね。

  4. 聴診器はどこか憧れの道具でもありますね。先日、園でもその聴診器を買ってもらいました。なかなか胸の音を探るのに苦労しているようですが、普段聞こえない小さな音を探るというのはおもしろいですね。揚水音、これはぜひ聞いてみたい音です。さっそく試してみたいと思います。体の音を聞くというのは大切なことなのかもしれませんね。データや数値だけではなく、聴診器から伝わる目の前の人の情報、そして、顔色や表情という患者さん本人の何気ない様子からも病気兆候や変化が感じられるのかもしれません。そのような生の情報は大切なのかもしれませんね。

  5. 補診器の発明が、子どもの遊びが発端となっていたとは、とても面白い誕生の仕方だったのですね。昔、これは正しい行いではないのかもしれませんが、家を囲む縦の鉄状の柵に、歩きながら棒を押し当てて、「カンカンカンカン…」といった音の響きを楽しんでいました。すると、ある所だけ音が変わり、その部分を見てみると、錆びによって腐敗していたなどといった経験がたくさんあります。幼い頃、きっとこういった経験をすることによって、生まれながらにして持ち合わせている能力を、消さずに残し続けられていくのだと思いますし、そこから新しい発明や発見が生まれていくのだと感じました。

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