手塚の原点

 漫画家・手塚治虫が執筆した地球環境問題を取り上げた随筆集に、「ガラスの地球を救え」があります。この本の執筆途中の1989年2月9日に死去し、未完に終わっています。この随筆集で手塚治虫は、「なんとしてでも、地球を死の惑星にはしたくない。未来に向かって、地球上のすべての生物との共存をめざし、むしろこれからが、人類のほんとうの“あけぼの”なのかもしれないとも思うのです」といっています。この訴えは、朝日放送(ABC)が2000年の開局50周年記念事業としてスタートした、地球環境問題について考えるキャンペーン企画になっています。そのキャンペーンソングはTHE BOOMの「いつもと違う場所で」という歌です。現在も放送中のABCラジオの番組「Earth Dreaming~ガラスの地球を救え!のパーソナリティーは、治虫氏の長女で地球環境運動家でもある手塚るみ子さんが務めています。そして今、このメッセージにこめられた思いを伝えるために、九段下の「昭和館」で、「手塚治虫の漫画の原点~戦争体験と描かれた戦争~」と題し、特別企画展を開催しています。
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 手塚氏が新宿にゆかりがあることもあって、それを少し前の日曜日に見に行きました。この「昭和館」は、もともと戦没者遺族をはじめとする国民が経験した戦中・戦後の国民生活上の労苦を後世代の人々に伝えていくために、厚生労働省が平成11年3月に開設した国立の施設です。その中での特別企画展は、「手塚修が生涯を通じて、子どもたち・大人たちに伝えたかったメッセージを知る機会にしていただくとともに、戦中・戦後という日本人が最も苦労した時代を、手塚治虫の直筆原稿や本人の写真を中心に振り返ります。」とあり、入場料が無料でとてもお得な展示です。
 手塚はいろいろなテーマで漫画を描きますが、1960年代に長編が生まれます。その中で、「ブラックジャック」を通してベトナム戦争や南米やヨーロッパなどの戦争を描き、「鉄腕アトム」や「ノーマン」「ビッグX」「火の鳥」の未来世界といったSF、近未来漫画でも、「どろろ」「火の鳥」の過去編といった過去の世界でも戦いと生命が失われていく様相を繰り返し描いてきました。その原画などを見ていたとき、今、実写映画でも製作された「どろろ」の漫画を懐かしく思い出しました。
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 「どろろ」は、1967年~1968年まで週刊少年サンデー(小学館)で連載され、一時中断しますが、1969年、冒険王(秋田書店)で連載再開され、ここで完結をします。この漫画を、毎回ただ読んでいたのですが、その主人公の思いに、とても意味があります。この展示から知りました。「48匹の魔物に体の部分をいくつも奪われて誕生した、百鬼丸。彼は自らの体を取り戻すため、魔物退治の旅に出た。自らの体が48箇所も足りないこと。そして、魔物に取り付かれていることにより、自分は「何もできない」と思い込む百鬼丸。ある日、百鬼丸は盲目の法師に出会う。法師は「見せたいものがある」と言う。百鬼丸が連れて行かれたのは、廃寺だった。そこには戦さで家を追われ、両親を亡くし、自らも傷を負った戦災孤児たちが身を寄せ合って暮らしていた。多くのものをなくしても尚、子ども達は一生懸命あきらめることなく暮らしていた。そんな子ども達の姿に、百鬼丸は今までの自分を恥じるのだった。」
 当時の妖怪ブームと重なり、そのころ面白く読んでいたのですが、全体にこんなメッセージがあったのですね。

手塚の原点” への2件のコメント

  1. 手塚治虫の作品は迫力があり、不思議な魅力があります。多くの作品を知っているわけではありませんが、私は子どもの頃読んだ「ブッダ」が頭に浮かんできます。お寺に置いてあったのを読んだのですが、その当時に感じたことと今感じることに違いがかなりあると思います。どんなメッセージが込められているか、久しぶりに読んでみたくなりました。

  2. 子どもの頃、テレビで漫画、今で言う、アニメーションは見ていましたが、「少年ジャンプ」や「少年マガジン」等々の漫画雑誌、あるいは漫画本、と呼ばれるものを家で読むことはあまりありませんでした。床屋さんに行って順番待ちの間に漫画雑誌を読み、週刊漫画雑誌を講読しようとしましたが、続きませんでした。「漫画」というものをマトモに読んだのは大学院の学生のときでした。初めてちゃんと読んだ「漫画」が手塚治虫氏の「火の鳥」と「ブッダ」でした。どうして読んだかというと、アルバイトをしていた塾の生徒に勧められたからです。「三つ目が通る」を勧められたのですが、自分の関心を優先させてその2作にしました。「漫画」というものをあまり評価はしていませんでしたが、その2作を読んで手塚哲学の深淵に触れ、えもいわれぬ感動を味わったものです。その後もはぎおもとさんの作品などに触れましたが、「漫画」は私の趣味とはならず今日のブログにもマトモなコメントが書けませんでした。

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