地域に溶け込む

 国立新美術館の設計は、六本木という町の中の建物という感じがします。そのように、建物は、その地域の町、自然、気候にマッチしたものでなければなりません。また、そこで暮らす人々の生活にマッチしたものでなければなりません。また、新しい時代、生き方を提案するものでなければなりません。各地には、それぞれ県立美術館をはじめとして、さまざまな美術館があります。県立美術館は、どの地域も、その存在を誇示するかのように立派なものが多くあります。それに比べて、ある作家の作品を集めたり、個人の所蔵作品を展示したりする美術館は、とても個性的なものが多くあります。また、海や山の囲まれた美術館には、自然を取り入れたものも多くあります。私が昨年訪れた美術館にもそんな建物がありました。その中で、印象に残っている美術館を紹介します。
 瀬戸大橋の懐にある「東山魁夷せとうち美術館」(香川県)この喫茶ルームからは、前面のガラスごしに瀬戸内海が広がり、そこには、大きく瀬戸大橋がかかっています。瀬戸内海の青と、東山の青を基調とした絵画がとてもマッチしています。
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 館内から見える風景「絵本の森美術館」(軽井沢)軽井沢は、個人美術館のメッカ。それぞれにいろいろな工夫が見えます。その建物は、外観だけでなく、室内も、窓から見える景色も、美術館にいるという気持ちよりも、軽井沢らしく、別荘にいる気分にさせます。
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 津和野の町並みに合った漆喰の白壁に瓦を葺いた酒蔵のような外観の「安野光雅美術館」津和野は、町全体がひとつのコンセプトで統一されています。その町並みに違和感なく建っている美術館です。
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 原生林の残る大自然の中にある「ウッドワン美術館」(広島県)ここを訪れたときは、秋真っ盛りで山は燃えるような赤に染まり、それを強調するかのように夕日の赤で山が照り映えています。
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 こんな地域の溶け込んだ美術館を思い出したのは、昨日、散歩していて、地域に溶け込んだ建物を見つけたからです。この建物は、私からすると意表をついたのです。それは、武道館近くにある「築土神社」です。
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 入口の鳥居とビルのマッチング感と、ビルの上にそびえる剣の意味深さ、そして参道とビル下のコンクリートの一体感、その先に鎮座する社殿と隣接するビル壁、上を覗けば意外と開けている空間。ビルとマッチした社務所を含むビル全体の外観は壮麗で、非常に神威的な空間が巧みに織り込まれたこの神社は、1995年に千代田区の都市景観賞を受賞しています。このビルは、地上8階地下1階で、ビル名は、「アイレックスビル」といいます。アイレックスとは「モチの木」を意味し、かつての鎮座地であった田安のモチの木坂に因むといいます。参道入口の鳥居の左脇には、当社の神木としてモチの木を植栽されています。築土神社は、まさに神社信仰に都心部環境を同居化させた神社で、これほどの地域に溶け込み、近代的なバランス感は、不思議な癒しを与えます。
 それにしても、小中学校は、全国どこにいっても多くは同じ形なのでしょうね。もしかしたら、学校建築は、最も遅れている建築かもしれません。また、将来を担う子どもたちが過ごす場所であるのに、その入れ物は軽視されている気がします。

地域に溶け込む” への5件のコメント

  1. 東山魁夷さんの美術館が瀬戸内海を臨む香川にあるとは知りませんでした。長野にもありますね。長野県信濃美術館の分館にあります。2年前にそこを訪れた時、東山魁夷さんは長野の出身と思い込んでいました。ところが横浜生まれです。戦後千葉県市川市に住んだことで同市に氏を記念する美術館があります。香川県の同氏の美術館創設の背景にはどのような氏と香川との関わりがあったのか、とても興味を惹かれます。ところで今日のブログのテーマ「地域に溶け込む」建築が少しずつではありますが、増えてきているように思います。それにしても、ご指摘されていたように、地域性が微塵も感じられないつくりになっている小中高舎が多いのは頷けます。その背景にある「思い」を考えると、どうやらわが国の教育認識の度合いが見えてくるような気がします。相変わらず「先生」頼みです。先生さえしっかりと子どもたちに対処すれば教育問題は発生し得ない、という風潮が為政者各位の間に厳として存在しているように思います。諸々の事例を鑑みて、どうやら問題の所在は別のところにあるような気がしてなりません。その一つが「入れ物」であることに相違はありません。

  2. 少し前に金子みすゞ記念館と安野光雅美術館を巡るツアーを家族で実施しました。どちらもなかなか見つけられずに困ったくらい、周りの風景にしっかり溶け込んでいました。きちんとしたコンセプトのある建物や周囲との調和を考えられた建物は、いろんなことを考えさせてくれるように思います。どのように使うか、どのように地域に溶け込ませるか、どのように考えを表現するか。そういったことを考えて作られた建物が増えていけば、地域だけでなく人の心にも影響を与えることができるような気がしています。

  3. 香川の東山魁夷せとうち美術館をご紹介いただいてありがとうございます。
    東山魁夷画伯の祖父が坂出市の櫃石島の出身ということが縁で、
    画伯の奥様より寄贈された絵画を中心に展示されています。
    昨年、坂出市でのセミナーの折、藤森先生を御案内することができました。
    それにしても、日本にはその地域の風景に溶け込んだ素敵な美術館がたくさんあるんですね。
    旅行の折には、必ず美術館めぐりをしてみようと思いました。

  4. 美術館は中の作品を見るのももちろんですが、それぞれに違う建築物をそこにある思いを想像しながら感じるのもおもしろそうですね。まだまだそんな美術館のおもしろさをしっかりと感じていないので、自分の世界を広げたいなと思います。美術館ではありませんが、ちょっと前に隈研吾さんがデザインした太宰府にあるコーヒー屋さんに行きました。いつかは行ってみたいと思っていた場所だったので、そこを一番の目的にした旅だったのですが、その建物を見つけた時には驚いてしまいました。木組みの特徴的なデザインであるのに、その場所にしっかり溶け込んでいて、どこにあるのか見逃してしまうよう印象を受けました。美術館をはじめ、もっと様々な建築物を自分の目で見てみたいなと思います。

  5. 何か新しいものを造形する上で、奇抜さとか斬新さとかが求められそうですが、その場所・空気などに「マッチ」しているかが、大きな要点になってくるのだろうなと感じました。「東山魁夷せとうち美術館」の、ガラス越しに見える瀬戸内海と、作品の青をマッチさせるなど、そこから見える自然も作品の一部にしてしまう方法もあるのですね。そう言った意味でも、学校建築というのは、子どもにマッチした形でなくてはならず、地域や風土によって変化する子どもの形に対応した形が必要であり、どれもこれも同じ形というのは、本来おかしいことであるというのが読み取れました。美術館からも、いろいろなことが見えてくるのですね。

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