花咲かじいさん

 19日の新聞にこんな記事が掲載されていました。「植物に花を咲かせる「開花ホルモン」を、日本、ドイツの研究グループがイネとシロイヌナズナでそれぞれ特定することに成功した。開花ホルモンは、いわば“花咲かじいさんの灰”にあたる物質で、70年にわたって多くの研究者が探し求めてきた。ともに19日付の米科学誌サイエンス電子版に発表される。」というものです。花が咲く時期としては、日照時間が短くなると花をつけるものと、日照時間が長くなると花をつけるものがあります。これらの花を咲かせるたんぱく質は、見つかっているそうです。しかし、今までは、日光を受ける葉から、花芽ができる茎の先に実際にどんな物質が伝わっているのかわかっていませんでした。この開花ホルモンの特定は、開花を自由に調節できる夢の薬剤の開発につながるのではないかということで、「花咲かじいさんの灰」といわれているのです。「枯れ木に花を咲かせましょう」というわけです。この「花咲かじいさん」は、“五大昔話”(桃太郎・さるかに合戦・カチカチ山・舌きりすずめ・花さかじいさん)と言われている、昔話作品のひとつです。日本昔話の多くは、怨恨的要素が強く、暗いというイメージがありますが、この「花咲かじいさん」は、唯一、怨恨的な要素はなく、とても素直に人物が表現されています。この昔話は、日本民俗学者の柳田国男によると、舌きり雀、文福茶釜、こぶ取り爺さんなどと同じ「動物の援助」に分類されます。この話も、1901年(明治34年)につくられた唱歌(童謡)「花咲爺」は歌の歌詞を見ると、「うらのはたけで、ポチがなく」で始まりますが、ポプラ社の絵本(文/吉沢和夫)によると、その前があります。「昔ある所に、子どものいないじいさまとばあさまがおった。ある時、町へ子どもを貰いに行くことになった。町へ行く手前の松原の松の木の根元に白くて可愛い小さな犬がいて、二人に「何処へ行くのか」と話し掛けた。「二人の子どもにして欲しい」と言う子犬に「町に良い子どもがいなければ子どもにしてやろう」と約束する。結局町で子どもが見つけられず、帰りに同じ場所でいた その白い子犬を子どもにすることにした。子犬は、茶碗一杯で一杯だけ、二杯食べると二杯だけ、どんどん大きくなった。ある日のこと、犬はじいさまに 自分の背中に鞍をつけさせ、かますやくわもつけさせて無理矢理じいさまを背中に乗せて山道を登って行った。」ということで、そのあと「ここほれ!ワンワン!」となるわけです。この出だしは、福井県坂井郡の民話から取ったとの事で、作者は犬を『神の申し子』として登場させたいと考えたようです。日本の民話において白い動物は何らかの神の使いとみなされることが多く、夫婦の白犬は夫婦の心ただしい生活を祝福した神からの贈り物であったと思われています。この話に対して、「みんな違って みんないい」の作者として有名な童謡詩人の「金子みすゞ」が、こんな詩「灰」を書いています。「花さかじいさん、はいおくれ、ざるにのこったはいおくれ、わたしはいいことするんだよ。さくら、もくれん、なし、すもも、そんなものへはまきゃしない、どうせ春にはさくんだよ。一度もあかい花さかぬ、つまらなそうな、森の木に、はいのありたけまくんだよ。もしもみごとにさいたなら、どんなにその木はうれしかろ、どんなにわたしもうれしかろ。」今回、見つかった「開花ホルモン」が、こんな「花咲かじいさんの灰」であったらいいのですが。