共生と新陳代謝

  先日の日曜日、今話題の「国立新美術館」に行ってきました。
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そこは、ブログで書いたアートトライアングルのひとつです。この美術館は、東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立西洋美術館、国立国際美術館に引き続く、日本で5番目の国立美術館(独立行政法人)として設立されました。規模は大きく、地下1階・地上4階建てで、展示スペースは14,000?と国内最大級の美術館になります。(同じ六本木の森美術館の展示スペースである2,000?の約7倍の大きさです。)外観は、前面を覆うガラスカーテンウォールが、波のようにうねる美しい曲線を描き、このガラスカーテンウォール越しに、青山公園など周辺の緑地にとけこむように植栽された庭園の眺めが楽しめます。透明で大波のようにうねる外壁面は、日射熱・紫外線をカットする省エネ設計でありながら、周囲の森と共生するようにできています。
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また、エントランスロビーのアトリウムは21.6mの天井高で、透明で大波のようにうねる外壁面が特徴です。
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 この美術館は、他の国立4館とは異なり、コレクションを持たないのが特徴です。作品を収集せず、国立新美術館の企画展や、新聞社などとの共催展を開催していくだけで、「常設展示」といったスペースはありません。高い所蔵品を持つよりは、いい企画展をしてもらったほうが私としてはいいと思います。
この建物の設計は、このたび知事選で強烈なキャラクターを都民に知らしめた「黒川紀章」氏です。名前だけは有名でしたが、あの独特のキャラクターは、岡本太郎につぐ存在としてマスコミに引っ張りだこだそうです。建築家としての彼は、作品の好みは別として、世界各地で、さまざまな賞を受賞しています。また、今回の「国立新美術館」の設計コンセプトにあるように、40年前から提唱している「共生」を提唱しており、時代のキーワードとして認知され、著書「新・共生の思想」の英語版とドイツ版は、海外でも大きな反響を呼んでいます。そんな彼が、最近、また違ったところで話題になっています。それは、1969〜1970年に設計された「中銀カプセルタワー」の建て替えです。
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この中銀カプセルタワービルは、世界で初めて実用化されたカプセル型の(それぞれの部屋の独立性が著しく高く、技術的には部屋=カプセルごとに交換が可能な)建築(マンション)として有名で、東京の銀座に、1972年竣工しました。この建物は、黒川の初期の代表作であるとともに、メタボリズムにとっても代表的な作品であるといわれています。鳥の巣を積み重ねたようなその特異な外見は、ユニット性のカプセル住宅(マンションであるが、事務所としても利用可能)としての機能をダイレクトに表現したもので、その評価は高い建物です。
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この建物が、竣工後30年が経過し,老朽化が問題になっているのです。黒川はカプセルの交換によって利用し続けることを求めていましったが、雨漏りの問題とか、アスベストの問題とかで、今年の4月15日に建て替えが正式に決定しました。本人は、コンセプトでもある「メタボリズム」ということで、新陳代謝、取換え、リサイクルを実現したサスティナブル建築の原型でもあることから、建て替えは望んでいないようです。この建物が、1996年Docomomo Internationalの国際委員会により、世界遺産にノミネートされています。建物は、確かに遺産としての価値もありますが、実用としての価値も重要です。この建物が良いか悪いかを別として、「共生」と「メタボリズム」の象徴しては、残してほしい気がします。