数 その2

 「東洋経済」に掲載されている畑村式の法則の第3は、「何でもパソコンで計算する」から「自分のアタマで計算する!」に発想を変えることです。「自分でまったく作業をせずに、出来上がった成果だけを聞いても覚えられないし身に付かない。物事を数量的にとらえるならば、安易にエクセルなどに頼らず、自分の頭と手を使って実際に計算をやってみるべきだ。」と提案をしています。先日、NHKのプロフェッショナルで、建築家隈研吾氏が、同じようなことを語っていました。パソコンなど使わないそうです。自分の中に「数」のモノサシを持つ必要がある。自分の身体感覚をベースのした「数感覚」を作ることだといいます。これは、数感覚だけではなく、いろいろなことにも言える気がします。物事を判断するときに、数値や情報などに振り回されることなく、自分の中に判断基準を持つことが必要です。「自分のアタマで判断する」ということでしょうか。法則第4は、「数は合計が大事」ということから「何でも一人当たりで見る!」と発想を変えることを提案します。この本に紹介されている事例はとても面白いです。「会社四季報」によると、ここには、トータルな数字が載っていますが、一人当たりの経常利益で比較すると、トヨタはソニーの4倍の稼ぎがあり、ヤフーはトヨタよりも5倍近く多くなります。逆に、平均年収では高い順にソニー、トヨタ、ヤフーとなります。一人当たりの数字に置き直すことで、全社ベースの数字だけではわからない、企業の違った側面が見えてくるといいます。これも、いろいろなところでも言えることです。よく、「みんなが思っている」と言うことがありますが、みんながどうということではなく、それぞれがどう思っているかが大切であり、そうしてみると、違った側面が見えてきます。最近、アンケートをとるにしても、多くのサンプルをとって集計するよりも、一人ひとりから事情を聞いたほうが参考になることが多いようです。最後の第5の法則は、「数は量で見る」ことから「数の質も見る」ということの大切さを提案します。畑村氏は、急激な数の変化が起きたときに「量的変化が質的変化をもたらしているのではないか」と意識することが重要だと指摘しています。真の経営者とは「数字の変化を表出させている条件はこれまでと同じなのか、それとも同じでないのか」をいつも徹底的に吟味できる人たちであるといいます。少子化をあらわす合計特殊出生率の数字にしても、量の変化だけを捉えるのではなく質の変化をきちんと見ていかなければなりません。単一のデータの変化だけを見ている人は、全体像が捉えられない。目先の数に一喜一憂していると、もっと大きな構造的変化を見落とす可能性があるのだといいます。こうした能力が傑出した経営者を例に出し、「彼らは、物事を数量的にとらえる力が圧倒的に強く、しかも数を静止したものとは見ていない。これまでの延長上に未来があるわけではないということを理解している。」と言っています。量的な変化ばかりを見て、数の後ろで起きている大きな質的変化を見逃した企業は競争から脱落してしまいます。「今までこれで来たのだから、これから先も同じだろうと考えたくなる。会社の経営がダメになるのは、こうした考え方を始めるときです。」という言葉は、どの世界でも当てはまることのような気がします。数字は、説得力がある反面、大切なものを見失わせる力があります。法則4,5は、そんなことをいっている気がします。