定着度

 小学校における学習指導要領は、「基礎・基本を確実に身に付け、それらをもとに、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する能力を育成すること」をねらいとしています。これらを「確かな学力」ととらえていますが、実際に、これらの力が子どもたちについているでしょうか。また、この「確かな学力」をつけるために、教育計画や指導方法を工夫しているでしょうか。どうすればよいかを明らかにするために、児童・生徒の学力の定着状況を、まず把握することが必要です。そんなこともあって、私の住んでいる八王子市では、平成16年、17年に小学校第6学年児童と、中学校第1学年生徒に対して学力定着度調査(国語・算数)と学習習慣等の学習意識調査をしました。「学習定着度」とは、学習指導要領の目標、内容に照らして、基礎・基本の定着状況と自ら考え問題を解決する応用力の伸びの状況ととらえています。調査の目的は、「児童・生徒一人一人が、基礎的・基本的な学習内容に関する自らの定着度を客観的に認識することにより、確かな学力を身に付けるための目標や課題を明確にした主体的な学習習慣を身に付ける。」ことを第1においています。平成17年度の小学校における結果は、「授業は理解している」けれど「好き」「楽しみ」とは感じていない児童・生徒が多くいることがわかりました。また、小学校・中学校とも、調査では、読書を好む児童・生徒は国語の学力定着度が高い結果となりました。そこで、学校においては、授業の中で読書活動を積極的に取り入れたり、家庭と連携した読書指導を行ったりするなど、児童・生徒自らが「本を手にする」ことを提案しています。また、小学校の意識調査では、授業の進度や難易度は、学力の定着度によって大きな差があり、児童・生徒一人一人に、基礎学力の確実な定着と個性や能力の伸長を図るためには、習熟の程度に応じた指導体制を整えるなど指導体制の一層の工夫が必要だと訴えています。そのための取り組みの例として、「 少人数授業においては、習熟の程度に応じた学習集団を編成した習熟度別学習を一層充実させる。」「学年内、異学年同士の教師の連携を密にし、教科担任制の推進、ティームティーチングの充実など学校を挙げての指導体制を工夫する。」などを提案しています。
 ところが、先日、近くの小学校からもらった資料を見て、少し考えてしまいました。それは、最近、市内の小学校4年生児童に対して学力定着度調査をした結果です。市内全体の数字ですが、平均到達度が、国語では72.8%、算数が83.0%で、達成率は、国語69.0%、算数66.6%なのです。4年生で、すでに、その教科内容を達成していない子が、4分の1以上いるのです。その子達は、そのまま5年生になります。そして、4年生の学習内容に積み重ねられた内容を学習することになります。ですから、達成率があがるはずはなく、下がっていく一方です。すると、すでに小学校を卒業する時点で、小学校の内容の半分もわからなくなっているのです。先日のブログではありませんが、人生の中で、生活をする上で、重要な知識は、小学生のころに習う内容です。掛け算九九を2年生で習いますが、それをきちんとマスターしていなくても、3年生では、二桁の掛け算、4年生では、三桁の掛け算と習っていきます。(かつては、三桁の掛け算は3年生で習いました) 当然、わからなくなる一方です。きちんとそれぞれの学年の内容を定着させなくて、いつ、わかるようになると思っているのでしょうか。ですから、外国では、「ステイ」といって、確実に習得するまでその部分をやるためにその学年にとどまります。いわゆる、日本では「落第」です。落第のない日本と、どちらが、子どもの将来にとっていいのでしょうか。

定着度” への5件のコメント

  1. 藤森先生のお話で「ステイ」と「落第」についてはよく聞かせてもらいました。その度に「ステイ」という考え方の必要性を強く感じます。今回の4年生のデータをみた上でも「ステイ」という考え方は受け入れられないんでしょうか。問題点について調べたこういうデータは、もっと参考にされるべきだと思います。子どもが必要な力をつける機会を大人が奪ってしまわないように、考える必要のあることではないでしょうか。

  2. なんだかすわりの悪い積み木を積んで、ピラミッドを作っていくような話で、同じ幅で上に伸びてはいかないでしょうね。
    読書を好む児童が、国語の学力定着度が高いからといって、読書活動を増やす・家庭と連携した読書指導を行うということがそのまま成果につながるのでしょうか。日本と同じように、学力の低下が心配されるドイツでは、幼稚園や保育園が「学習コーナー」を設定し、楽しみながら数や文字、図形や立体、科学的な思考を、実体験を通して理解できるよう工夫してあったように思います。小学校の前の段階を受け持つ保育園の役目としては、子どもたちが「本を手にする」ことが「楽しい事」なんだという意欲・経験を、何とか育んでいかなければならないと思いました。また、「落第」させられたのではなく、みずから「ステイ」したといえる価値観ができてくればいいですね。

  3. 学習内容の定着については、教える側が殊に注意を払う点です。そうした観点、問題意識から「到達度テスト」や「アチーブメントテスト」が実施された、あるいは実施されています。実はこの「到達度」、あるいは今日のブログのテーマ「定着度」に対する教える側の過剰な意識化が教えられる側を学習内容はおろか、学習することそれ自体から遠ざけている、という気がしてなりません。その「意識化」はとても必要なことです。ところがその方向性を間違えると教えられる側は大変な迷惑を被る破目にもなるということです。学習の定着度の低下をどう判断するかにもよりますが、少なくとも言えると思われるのは、これまでの教授法がもしかしたら「時代遅れ」になっているのでないのか、ということです。習熟度別、少人数制クラス、等々さまざまな試みがなされています。しかは根本的なところは旧態依然、のような気がします。子どもたちが学びたくなる環境の構築、という問題意識は果たして存在するのか、はなはだ疑問です。

  4. 基礎、基本を確実に身につけるという確かな学力が必要ということであっても、実際は基礎、基本を理解できないままどんどん授業は進んで行く、学年は上がっていくという現場になってしまっているのですね。現場で実際の子どもたちと関わっている先生方の中にはこの窮屈さに疑問を感じておられる方も多いのかもしれませんね。大切なことは分かっていても実際に行える改善方法は狭い範囲だけのような気がします。教育の大切さは分かっているのかもしれませんが、それがまだまだ国として優先的な課題であるという認識も薄いのかもしれません。様々な人の意見を聞き、目先のことだではなく、将来を見据えた取り組みとは何かを実行できる改革も必要でしょうし、現場の意識を変えることで、もっと声もあげていかなければいけないのかもしれません。

  5. 『「授業は理解している」けれど「好き」「楽しみ」とは感じていない児童・生徒が多くいる』といった現実は、悲しいことですね。今の教育の問題点が、その部分に現れていると思います。「好き」や「楽しみ」が、将来の自分を作っていくと思います。あるお悩み相談で、自分の将来について悩んでいた人が、学校の先生に相談しました。すると、「これまで生きてきた中で、一番時間とお金を使ったことに、ヒントが隠れているかもしれない。」と返ってきたそうです。確かに、好きだったらお金を惜しまないだろうし、楽しかったら、時間も忘れて没頭するよなぁ…と思いました。また、「ステイ」と「落第」という言葉のニュアンスも、人に与える影響は大きく、「落第」とかではなく、一層「定着組」「追求組」などという名前に変更してみてもいいかもしれませんね。

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