賢母

 今日は、4月から開園する園の保護者説明会がありました。どの保護者も、子どものことを思い、一生懸命に説明を聞いていました。しかし、年々、一所懸命に子どものことを思い、心配するあまりに、逆に子どもに対して過剰に保護しようとする保護者が増えてきた気がします。怪我をさせないように、ストレスを感じさせないように、つらい目にあわせないようにと心配するあまりに、それらに対して自ら乗り越えようとする力を奪っていることがあるのです。我が子のために何をしてあげればよいかを考えるのは、よほど広い視野を持っていないと、逆効果になってしまいます。
 先日、佐賀に行った時に大隈重信の生家を訪れました。
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 佐賀大隈記念館前に保存されている生家は、父・信保が買い取り、居宅としていたもので、当時は藁葺きの平屋でしたが、のちに大隈重信の勉強部屋として、2階部分の八畳間などが建て増しされています。この家で大隈は、知行300石、物成(年貢高)120石を受ける佐賀藩の砲術長であった父と、慈愛にあふれた母の愛情をうけて幼年時代を過ごしました。ここで受けた母親の愛情を大熊は忘れることがなかったのでしょう。官僚として、政治家として東京で活躍するようになったからは、大熊は佐賀に帰る回数は多くありませんでしたが、ある時、生家の前で車をとめさせ、もはや人手にわたり貸家となっていた生家を感慨深げに眺めていたといいます。随行していた当時の佐賀市長は、それまで大隈の生誕地を放っておいたことにすっかり恐縮し、その生家を保存すべく「大隈候記念物保存会」を組織しました。大隈の父信保は、佐賀藩主鍋島家に仕えて石火矢頭人(砲台司令長官)を勤めていたため、わが子には早くから砲術の名手になることを望んでいましたが、不幸にして大隈12歳のときに病死してしまいます。その後、彼は母三井子の手で育てられることとなりました。その母は、几帳面で度量が広く、慈愛に満ちあふれた母でした。その母も、夫信保を失ってからは、八太郎らをかかえて家計のやりくりに苦労しましたが、自分は質素を旨としながら、子どもには不自由な思いをさせない良き母でした。大隈はその母を回想して、「わが輩は母一人の手で育てられたが、15、6歳の時分からすこぶる乱暴者で、まるでがき大将のようであったが、友人が盛んに遊びにきましたが、母は大層人を愛し客を好まれたから、友人が訪ねてくるのを非常に喜んで、手料理をこしらえて馳走してくれられた。」(「大隈伯百話」)と言っています。大隈の来客好きは、この母の影響によるものかも知れません。こんな逸話も残っています。大隈は子どもの頃、いたずら者で毎日毎日けんかばかり、生傷の絶える間がありませんでした。母は、非常に仏法の信仰が厚く、慈善を施すことを好みました。そんな息子を心配して、「お前、これから朝起きたら顔を洗ってすぐ手のひらへ「南無阿弥陀仏」と書きなさい。そしてけんかを始めるときには「南無阿弥陀仏」を十ぺん繰り返し唱えて、なおかつ敵愾心が消えないなら、そのとき、はじめてけんかをしなさい。」と教えます。また、大隈の厄年に何とか息子の安全を守りたいという一念から、自分で蓮の糸をつむいで一反の織物をつくり、それを四十八に切って、子安観音の絵を描き、全国の主な寺四十八寺へ納めます。大隈もこれにこたえて、孝養のかぎりをつくしました。こうして三井子は幸福な晩年を送り、90歳の天寿を全うしました。賢母になるのは、難しいですね。

賢母” への2件のコメント

  1. 親と子の距離感は難しいです。子どものためと思ってやっているつもりでも、よく考えると子どもの力を奪うことをしてしまっていることが自分でもあります。そうならないためにも広い視野がなければいけないと思うのですが、視野を広げるとそれだけ判断をすることが増えるので、簡単なことではないとも思っています。

  2. 「良妻賢母」はもう「死語」でしょうか?「良妻」はともかくとして、現在の「賢母」とはどのような姿なのでしょうか?大隈重信候のご母堂様は「几帳面で度量が広く、慈愛に満ちあふれ」「自分は質素を旨としながら、子どもには不自由な思いをさせな」かったことが今日のブログからわかります。喧嘩をするな、ではなく、念仏しても敵愾心がなくならないようであれば始めよ、とか息子の厄年の凶事を慮って子安観音四十八寺参りなどはこれぞ「子ども中心主義」の母親像。この2つのことからわかることは、どうやら「賢母」とは子どもに対して直接あれこれするのではなく、子どもにこうなってほしいという願いを環境や条件設定あるいは自らの行いを通して実現する母親のことなんだな、と理解しました。

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