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2007年02月08日 近頃思うこと

園前町

建物を設計するときに、いろいろなことを考えます。私は最近講演に行くことが多いのですが、初めて講演に行ったときの事をよく覚えています。対象者は、小学校事務職の人でした。テーマは、「事務職から教育がかえられる」というもので、事務用品を購入するときに、どんなものを選ぶかで子どもの動線をコントロールすることができ、それによっての教育的効果を意図することもできるといった内容でした。たとえば、廊下に設置する教材を入れる棚を購入しようとするときに、その棚の戸を引き戸にするか、右開きにするか、左開きにするかを検討することによって子どもの動きをコントロールすることができます。最近、家庭家具でも、たとえば冷蔵庫などはどちらに開くようにするかを選べるようになっています。これは、動きをコントロールするというよりも、置き場所によって使い勝手をよくするというものです。また、部屋の出入り口の戸を考えるときにも同様のことがいえます。引き戸にすると部屋や廊下の面積を取りません。ただ、引き戸を収納するスペースが必要になります。そこの壁は使えませんし、二枚引戸ですとどちらかが常に閉まった状態になってしまい、広く開放するためには戸をはずさないといけなくなります。開き戸ですとその開放部だけでよいので、戸の周りには、いろいろな装飾ができたり、物を壁につけておくことができますが、戸が開く部分には物が置けません。ですから、内開きか外開きかを考える必要があります。また、開けるときには戸の外側に人がいるのかわかりませんので、人が頻繁に通るであろう廊下側には開かないようにしないと、開けたときにぶつかって危険です。特に、子どもの場合は気をつける必要があります。トイレの戸などは、戸越には人が見えませんので、公共的なトイレでは内開きにすることが多いようです。まだまだ、戸をひとつ取り付けるだけでも、その用途、つける場所、使う人など様々な状況を想定しないといけないのです。これが、よく私がブログでも書く、人や乗り物などが動く道筋のことである「動線」を考えるということです。この動線を考えることによって、人の関係性を増幅したり、遮断したりします。ですから動線を遮断する壁とか仕切りを、関係性をスムーズに構築する役割として見直す必要が出てきます。建物を建てようとするときでも、その建物にどのように近づいていくのか、建物のどの場所から入るのか、そして中に入るとどのように動いてどこに行って何をするのか、というように人の動きを考える必要があります。しかもその動くものが園では、それぞれの年齢の子です。登園から降園まで、どのように子どもが生活をするかに関係します。そして職員がそれに対して、どのように動くか、また、最近は保護者だけでなく、地域の人も園の中に来ることが多くなるので、そういう人たちの動きも考えなければいけません。これらの動きを計画することは、その建物の中で、どのように保育をするのかということと大きな関係があります。地域に対しても同様なことがいえます。広い空間にひとつの突起物があると、人はそれをよけて通るか、飛び越えようとするか、違う道を選ぶかなど何かの行動を起こします。地域にある施設があることで、そこに住む住民は、その施設を利用するという接点だけでなく、その建物がないときと違う行動をすることがあります。かつて、「門前町」、「城下町」が形成されてきたということはそういうことです。これからは、「園前町」とか「園下町」が形成されるような園の活動が必要でしょう。

投稿者 fujimori : 2007年02月08日 19:28

コメント

藤森先生が提案される保育形態における「動線」という概念に触れるまで、実は建物や部屋空間、あるいは家具等の持つ意味をあまり真剣に考えたことがありませんでした。そして、「動線」ということを意識した途端に、なんと私たちは自分たちが動きにくい建物内部空間に無理やり自分を合わせる、という考えてみると空恐ろしい習性を身に着けていたことに気づきました。そして子どもが集う建物である園舎校舎が従来ほとんど子どもの「動線」など意識せず、むしろ規格にそったもの、最低基準面積をクリアーするもの、あるいはとにかく前例に倣う、お隣に合わせる、ことに終始してきたような気がします。「教育は国家100年の計」と言われる場合、この文章のなかに「人」の「動き」を読み取ることはできません。ましてや未来を真に担うであろう「子ども」のことが語られているとも思えません。少なくとも明治という時代以降今日にいたるまでそのことが感じられません。これから新しく造られる園舎や校舎、あるいは人が集う施設は、「人」の「動き」を意識したものになってほしい、と思います。そして、そうした場所が次々と連鎖的にできあがり、総体として、人が住みよい空間、子どもたちが未来を展望できる空間、になっていく、そんなことを今日のブログを読みながら考えました。

投稿者 toshi123 : 2007年02月08日 21:50

動線の重要性を理解したつもりでいたのですが、今回のブログを読んですっかり忘れていることに気づきました。知っただけで理解した気になっているようではいけないと反省しました。
建物だけでなく、地域に対しても動線を考えることが大切なんですね。動線ということから見ると、今まで見えていなかった地域との関わり方を見つけることができそうな気がします。地域の人々の動線もあらためて考えてみようと思います。

投稿者 あいやま9 : 2007年02月09日 22:12

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