2007年02月05日 [講演先にて]
小倉
先日の北九州小倉での講演の時の夕食は、もちろん以前のブログ(2006年2月21日)で書いた小倉発祥「焼きうどん」でした。そして、宿泊するホテルに向かったのですが、途中、機内でもらった小冊子に紹介されている「旦過市場」がありました。
折角なので、そこを歩いてみました。市民の日常の台所として親しまれているほか、北九州ならではの食材(この市場の中には「くじら」というのぼりが立っている店もありました。)や名物を求めて観光客を含めて、多くの人が訪れていました。しかし、なんといっても地域の商店街といったイメージで、夕方は地元のお年寄りが、店の人と会話しながら、安くなった品物をたくさん買い求めていました。入り口にあるスーパー「丸和」は日本初の24時間営業スーパーとして有名ですが、その他の店は、地元のお年寄り相手ということもあって早い時間で閉めていました。そのあとホテルに向かうと、その玄関の前にある石碑が建っていました。そこには、「無法松の碑」と書かれています。これは、小倉の作家岩下俊作が、小説「富島松五郎伝」のなかで創作した男の松五郎(無法松)の碑です。
この原作をもとに数々の映画、演劇で「無法松の一生」という題名で上演されています。若い人はたぶん知らないかもしれませんが、わたしはその何本かを見た記憶があります。この内容は、か弱い吉岡母子の将来を思い、(身分差による己の分を弁えながらも)無私の献身を行う無法松と、幼少時は無法松を慕うも長じて(自身と松五郎の社会的関係を外部の視点で認識するようになったことで)齟齬が生じ無法松と距離を置いてしまう敏雄、それでも無法松を見守り感謝の意を表し続けてきた良子との交流と運命的別離・悲しい大団円などが描かれています。したがって、この無法松という人物像は、北九州人の代表というより、情義に生きた、日本人のあこがれの庶民像として全国的に慕われています。この碑は、無法松を愛する土地の人びとによって、昭和34年、小説で彼が住んでいたと設定されていたこの古船場の地に建てられました。碑銘は岩下俊作の筆により、碑の下には昭和33年ベネチア映画祭でグランプリを受賞した稲垣浩監督の「無法松の一生」のシナリオが埋められています。そして、毎年3月4日には碑前で供養が行われ、小倉祗園太鼓をたたき、無法松の好物とされた酒をそそぐそうです。このベネチア映画祭で受賞したのは、1958年に公開された、三船敏郎主演の映画です。この映画は、実は1943年に阪東妻三郎が主演で、大映で作られ公開されたものを、そのときの監督であった稲垣浩が無念の想いを晴らすため、また、カラー、シネマスコープで松五郎を撮るために東宝でリメイクしたものです。最初の映画は戦争の配色が色濃くなったころに作られたということもあって、内務省による検閲で松五郎が未亡人に想いを打ち明けるシーンが10分カットされたそうです。それは、時局柄軍人の未亡人の恋愛は戦地の将兵の士気を挫くと考えられたからでした。この時、検閲官は「本当はこれをカットするのは惜しい。あと何年かすれば戦争も終わるだろうからそれまで保留という扱いにしたらどうだろう」と言ったようです。しかし、戦後もアメリカ占領軍の検閲によって封建的だとされたシーンが8分カットされました。軍国主義であろうと民主主義の名の下でも、同じようなことが行われるのですね。いまも、本当のことを私たちは知らせされているのでしょうか。情報から真実を見る目を養いたいと思います。
投稿者 fujimori : 2007年02月05日 23:20
コメント
今日のブログの最終文「いまも、本当のことを私たちは知らせされているのでしょうか。情報から真実を見る目を養いたいと思います。」このご指摘はまさにその通りでありまして、容易にマスコミを信用するわけにはいかない、と私は思っております。マスコミのパトロンにとって都合の悪いことは極力報道されない、ということがどやら実態のようです。さて「無法松」の小倉です。私は大学院の学生時代に一度小倉を訪ねました。結果としてはセンチメンタルジャーニーとなってしまいました。さらに「無法松」と言えば、村田英雄さんを思い出します。古賀政男さん作曲の「無法松の一生」、20歳の頃、亡き父が良く聞いていたので今でも覚えています。「泣くな嘆くな 男じゃないか どうせ実らぬ 恋じゃもの」というくだりは実感できました。小倉・・・また行ってみたいところです。
投稿者 toshi123 : 2007年02月05日 23:53
無法松を知りませんでしたが、いろんな事を思いながら読ませてもらいました。検閲っていうのは嫌ですね。検閲とは違いますが、知らないうちに情報が操作されているというのは今の時代でもたくさんあると思います。きちんと見極める目をもたないといけないと思いますし、そのためにもひとつの情報を様々な角度から調べる慎重さも必要だと思います。日本に関する情報が海外では正しく伝えられ国内では隠されていたという事もあるので気をつけなければいけません。本当にややこしいことになっています。
投稿者 あいやま8 : 2007年02月06日 13:00