富太郎と栄一

 昨日18日は、私のブログによく登場する植物分類学者である「牧野富太郎」の没後50年の忌日でした。そのことに関して、 読売新聞の編集手帳にこんな記事が書かれていました。
「植物学者の牧野富太郎は小学校を中退したあと、学校と名のつく所では学んでない。49歳で東京帝大の講師となり、77歳で退職するまで肩書は講師だった。学識の世評は高くとも学歴のない老講師に、ひと恥かかせる魂胆だろう。野外観察の折、ひとりの学生が枯れ草の根を取り出し、牧野の前に黙って差し出した。名前を当てられるものなら当ててごらん。学生たちが好奇の目で見つめるなか、牧野は草の根をそっと口に含むと、関東地方では見られない南方種のヒルガオの名を静かに告げた。特徴として、その根にはサツマイモに似た甘味のあることを言い添えた。渋谷章著「牧野富太郎」に記された挿話である。生涯に50万点の標本を採集し、1000種の新種を発見した植物分類学の巨人が94歳で死去したのは1957年(昭和32年)の1月18日、きょうは没後50年の忌日にあたる。「学者には学問があれば何も要らない」。冷遇と貧窮の時代にも、そう語っていたという。学者の誇りを捨てた「論文捏造(ねつぞう)教授」や、欲に良心を売り渡した「研究費流用教授」が世を騒がす昨今、折に触れて思い出される人である。たわむれに詠んだ都々逸が残っている。「草を褥(しとね)に木の根を枕 花を恋して五十年」。教育というのも煎(せん)じ詰めれば、ひと筋に恋する人をつくることかも知れない。」
 彼については、時に触れこのブログに登場すると思いますので、特に今日はあまり触れませんが、同じようにあくまでも在野にこだわり、考古学を研究し続けた人がいます。以前にやはりブログで紹介をしたことがある「藤森栄一」です。「藤森栄一を読む 人間探究の考古学者」という昨年3月に発行された本の書評が 読売新聞に掲載されていました。「部数はともかく、著作が最も読まれた考古学者は、江上波夫でも佐原真でもなく、間違いなく藤森栄一(1911~73)であろう。本書を読めば、その理由がよくわかる。1978~86年にかけて学生社が刊行した『全集』(全15巻)に掲載された解説と、亡くなる5か月前に行われたインタビューを収録した1冊。戸沢充則・明治大名誉教授(編集代表)ら教え子を中心に11人が、師の学問や生き方を深い敬愛の念をこめてつづっている。松本清張の短編「断碑」で知られる夭折の考古学者、森本六爾を師と仰ぎ、信州・諏訪で在野を貫いた藤森には、縄文農耕や諏訪大社の研究など、今なお色あせることのない数多くの優れた業績がある。そして、激しい情念から生まれた「かもしかみち」「旧石器の狩人」「古道」など珠玉の作品たち。そこに共通するのは、古代に生きた人間の「心」をひたむきに追い求める、歴史探求のあるべき姿であると教えられる。一刻も早くじかに藤森に触れたくなって、放り投げてしまいそうになる皮肉な本である。」
 彼が小中学生向けに書いた「心の灯」という本のあとがきで本人がこういっています。「自叙伝を読んでいただくほど、私は豪傑でも、偉人でもありません。それどころか、学校はできない、学歴もない、財産も地位もない、それでいて執念ばかり強く、妄執は人一倍というぐあいで、本来なら、まるで他人につまはじきされて終わるべき、まったくの雑草でしかなかったのですが、ここまで来てみますと、すくなくともわたしひとりは、ああよかった、おれという人間は幸福だったと、すこしは誇らしく思っています。」他人の評価よりも、自分の人生が誇れるようになりたいものです。

富太郎と栄一” への2件のコメント

  1. 牧野富太郎博士のことについては藤森先生のブログによってこれまでと比較にならないほどの事績を知ることができました。今回の読売新聞「編集手帳」のコラムも博士に関してなかなか示唆に富む内容です。「小学校を中退したあと、学校と名のつく所では学んでない。49歳で東京帝大の講師となり、77歳で退職するまで肩書は講師だった。」・・・本物の学者を感じます。そして藤森栄一氏。藤森先生のご一族の方なのだろうか、と思いました。同氏はいわゆる「学界」からすれば「素人」のレッテルを貼られた学者の1人です。しかし、その研究成果は青森の三内丸山遺跡の発掘によってその正しさが証明されたのだそうです。かつて、私自身「学者」の道を求めたことがありました。その時よく言われたことは、「学者」になるには「運・鈍・根」の3要素が必要、ということでした。しかしながら、その3要素とも私には欠けていたので、結局「学者」の道を断念しました。ですから、今日のブログの内容からはその道の挫折者の1人として心にビンビンと響くものがありました。さらに締めくくりの「他人の評価よりも、自分の人生が誇れるようになりたいものです。」は自らのこれまでの生き様に照らした時そうなることは決

  2. 他人の評価を気にして、評価されるために行動し、それに振り回されている自分が恥ずかしくなりました。自分が本当に納得できる行動ができているかどうか。今回のブログは大切な事を考えさせてくれました。このブログから生き方を教えてもらっています。今は反省する事ばかりですが、少しずつでも前に進んでいきたいと思っています。

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