今日は、鏡開きです。餅を男性は具足にお供えしたので「具足餅」、女性は鏡台にお供えしたので「鏡餅」といい、それぞれ雑煮にして食べたことがこの行事のはじまりです。私は、昨日、鏡餅をお汁粉でいただきました。鏡に映る世界は、太古の昔から人類を魅了してきました。もちろん、人類が始めて使った鏡は「水の鏡」だったでしょう。ナルシスは、水に映った自分に恋したように、古代の人々は池や水たまりの水面に自分の姿形などを映して眺めていました。その後、石や金属を磨いて鏡として使用していたことが遺跡の発掘などから分かっています。現存する金属の鏡で最も古いものは、エジプトの第6王朝(紀元前2800年)の「銅の鏡」があります。そして、ガラスの鏡は14世紀始めにイタリアで初めて作られました。日本に初めてガラスの鏡を伝えたのは1549年、ポルトガルの宣教師フランシスコ・ザビエルだといわれています。鏡は、日本においては、日常的な道具だけでなく、三種の神器(鏡・玉・剣)の1つとして祭られていますし、西洋でも、「白雪姫」や「鏡の国のアリス」のように鏡が登場する童話がいろいろあります。そういえば、ロンパールームのお姉さんの定番の台詞で「鏡よ鏡よ鏡さん。」というのがありましたが、その原型は白雪姫の継母が所有していた魔法の鏡のようです。また、「鏡の問題」と呼ばれ、多くの人の頭を悩ませてきた問題があります。それは、「鏡の像は左右が逆になるが、どうして上下は逆にならないのか?」という問いです。これは、科学啓蒙書の名著として名高い「自然界における右と左」(マーチン・ガードナー著)の中で、はじめに問われています。
 鏡は、よく真実を映すといいます。それは、現実の姿をそのまま映すからです。しかし、その姿が真実でしょうか。私の好きなミュージカルに「ラ・マンチャの男(Man of La Mancha)」がありますが、これはセルバンテスの小説『ドン・キホーテ』をもとにしたミュージカル作品です。小説『ドン・キホーテ』は、騎士道物語を読み過ぎて妄想に陥った下級貴族の主人公が、みずからを伝説の騎士と思い込み、従者サンチョ・パンサを引きつれ遍歴の旅に出かける物語です。この作品は、旧態依然としたスペインなどへの批判精神に富んだ作品であり、また、主人公の自意識や人間的な成長などの「個」の視点を盛り込むなど、それまでの物語とは大きく異なる技法や視点が導入されていることから、最初の近代小説ともいわれています。その彼が、年老いてからも夢や希望、正義を胸に遍歴の旅を続ける姿がとても感動的なのですが、ミュージカルでは、鏡の盾を持った「鏡の騎士」を名乗る遍歴の騎士が、ドン・キホーテと一騎打ちをして遍歴を止めようと、「本当の自分の姿を直視せよ」と、夢を追っている姿を鏡に映し、追い詰めます。そして、その姿を見て、抜け殻のようになって自宅に戻っていくのです。しかし、正気には戻ったものの、彼の夢を追う姿を愛する周りの人によって再び夢を追いもとめ、死んでいきます。最後に歌う歌は、私の大好きな「見果てぬ夢」です。「夢は稔り難く 敵は数多なりとも 胸に悲しみを秘めて 我は勇みて行かん 道は極め難く 腕は疲れ果つとも 遠き星をめざして 我は歩み続けん これこそは我が宿命 汚れ果てし この世から 正しきを救うために 如何に望み薄く 遥かなりとも やがて いつの日か光満ちて 永遠の眠りに就く時来らん たとえ傷つくとも 力ふり絞りて 我は歩み続けん あの星の許へ」人の真実の生き方は、決して鏡に映る姿ではない気がします。

” への2件のコメント

  1. 「ラ・マンチャの男」、題名は知っていますが、ミュージカルを見たことはありません。セルバンテスの『ドン・キホーテ』もまともに読んだことがあったかどうか・・・疑わしい限りです。「見果てぬ夢」の詩、読んでいて感動してしまいました。特に「たとえ傷つくとも 力ふり絞りて 我は歩み続けん 」部分はなんとも勇気が湧いてきます。そうそう、今回のブログのタイトルは鏡でした。危なく壁に掛けられた「ドン・キホーテ」の絵に発展するところでした。「鏡」はよく観ます。鏡を見るというより、そこに映る己の顔を見ます。ナルシスのように自分の姿に惚れ込めればいいのですが、年々歳々、溜息ばかりです。鏡とは、過酷な現実を容赦なく突きつけてきます。昔はもう少しまともだったのに・・・と嘆かわしくなります。「ロンパールーム」・・・懐かしいですね。確か、うつみみどりさんがおねえさんでしたね。

  2. 「見果てぬ夢」の歌詞を初めて読みました。胸が熱くなる内容です。「ラ・マンチャの男」を観てみたくなりました。
    鏡に映る姿と鏡に映らない姿をいろいろ考えました。夢、志、思い。やはりそういった鏡には映らないものが大切なんだろうなあとぼんやり思っています。関係ありませんが、偶然「鏡の法則」という本を見つけたので、鏡つながりで読んでみました。

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