言葉というものは、どの使い方が正しいかということに関して普遍ではありません。それは、使う人が多くなると、それが通称となっていくからです。しかし、時代によって使い方が変わってきても、その言葉の成り立ちは、その本来の言葉の意味を知る上でとても大切なことです。
よくアナウンサーなどが、すばらしいことをした人などを紹介するときに、若いのにすごいと言おうとして、「弱冠○○歳にして」というように「弱冠(じゃっかん)」という言葉を頭につけることがあります。しかし、もともと古代中国では男子のことを、しなやかで一人前の体格になった若者ということで「弱」といい、「冠」とは、成人になった祝いに着用する冠のことをいい、昔の中国で元服をした時にかぶったといわれています。ですから、「弱冠」とは「男子二十歳」のことをいい、先日のブログでも取り上げた「礼記」の中の「曲禮上」にこう書かれています。「人生十年曰幼,學。二十曰弱,冠。三十曰壯,有室。四十曰強,而仕。五十曰艾,服官政。六十曰耆,指使。七十曰老,而傳。八十、九十曰耄,七年曰悼,悼與耄雖有罪,不加刑焉。百年曰期,頤。」(人は生まれて10年したら、「幼」と言い、学問を始める。20年したら、「弱」と言い、冠を着ける。30年したら、「壮」と言い、妻を迎える。40年したら、「強」と言い、(父の職を継いで)仕官する。50年したら、「艾」(かい)と言い、重要な官職政務を扱う。60年したら、「耆」(き)と言い、多くの者を指揮する。70年すると、「老」と言い、地位を人に譲る。80年90年を「耄」(もう)と言い、生まれて7年までを「悼」と言い、耄と悼の者は、罪を犯しても、刑を加えない。100年の人を、「期」と言い、ねんごろに養う。」古代の士大夫級の長男を標準とした、人生区分です。ですから、「弱冠18歳にして」とか、「弱冠20歳にして彼女は」というように、二十歳より上にも下にも用いないし、女子には用いません。すなわち、今日、成人式を迎えた男子が「弱冠」なのです。しかし、誤って使われているうちに、「年若くして~」と言う意味にも使われるようになり、現在は定着しつつありますが、やはり、正しい使い方をしたほうがいいかもしれません。しかし、それ以上に使い方でおかしいのは、「若干19才」などと「若干」という誤記が多いことです。「若」という字には「~のごとし」と言う意味があり、若干に使われる「干」という字は「干す」と言う意味ではなく、「一」と「十」を合わせた字という意味のほうです。つまり「若干」とは「一のごとし、十のごとし」という事で、「採用者若干名」というのは、一人採用するかも知れないし、10人採用するかもしれない、という意味です。ですから、「弱冠」とは、まったく違う言葉です。
論語にしても、礼記にしても、人生の目安が書かれています。それは、目標でもあり、自分の振り返りでもあります。そして、それは特に人生の節目に行われます。そういう意味では、今日の成人式はとても意味のあることかもしれません。しかし、成人式をやる意味とか、そのやり方などいろいろと議論を生んでいるところですが、成人式をやることによって、成人を迎えた若者に振り返りを求めるよりも、さまざまな行動をする成人を見て、それまでの教育のあり方、社会のあり方などを、大人が振り返るきっかけの日にしなければいけないのだと思います。
成人の日が「それまでの教育のあり方、社会のあり方などを、大人が振り返るきっかけの日」との見解は大賛成です。「今時の若いものは」という言い方は古くからあるようですが、この表現が用いられた時、大人と呼ばれる人たちはその公的責任、すわなちより良い社会を形成するという役割を果たした上で言っているのだろうか、と疑問に思います。ニュースによれば、今日も新成人逮捕者が続出とか。保育園幼稚園小中高及び家庭と地域並びに日本社会がこの事実を厳粛に受け止めるべきだと思います。そうした上で「教育基本法」等を改定するというのなら多少の理解を示したいと思うのですが・・・。今日のブログの「弱冠」と「若干」は私自身無意識のうちに誤用していました。勉強不足を痛感します。『論語』「為政編」の「四十而不惑」「五十而知天命」は有名ですが、『礼記』の「曲禮上」の年代別指針は新鮮に心に響きます。寿命が100年というのはいいですね。私自身30代で家内を持ち、40代で「仕官」です。『礼記』「曲禮上」の如く生きたい、と思いました。
大人が振り返るきっかけの日にしなければいけないというのはその通りだと思いました。現在の成人式の様子からも私たちは学ぶ事ができます。自分の問題としてみたらすべき事がたくさん見えてきます。何事も自分の事、何事も自分次第と考えた方が、問題を見つけやすいように思います。今回も気づきがありました。
「弱冠」と「若干」を、違いがわからないまま使っていました。言葉が変わっていっても本来の意味や使い方は知っておいたほうがいいですね。