支援

 テレビのプロフェッショナルの番組の中に、保育・教育のあり方のヒントとなる言葉が多くありました。生きている木などの生き物を相手にした関係は、生きている人間にも通じることや、学ぶべきことがたくさんあります。同じように参考になる言葉がちりばめられている本があります。『親と離れて「ひと」となる』(足立倫行著 NHK出版)という、不登校や引きこもりの青少年の共同生活を紹介した本です。この本の中の言葉は、今の教育・保育の問題点と共通します。「僕自身も含めて、トンネルの入り口や出口のあり方を性急に求めてしまうひとに問おう。いま、我々が立ちすくんでいる暗闇の深さはどのくらいなのか、トンネルの中のどの位置にいるのか、手を伸ばせば壁に届くのか届かないのか、足元はぬかるんでいるのかいないのか……まずはそこをしっかりと確かめなければ、出口に進むことも入り口に立ち戻ることもできないのではないか?長年、自立支援組織を運営してきた一人は言う。我々現場の実践者は、生きて変化する人間を毎日相手にしている。理論通りに行かないことなんてしょっちゅうなんだ。それでも言えることは何か。我々の言葉が大ざっぱだったり矛盾したりするのは、ある意味でしかたないんだよ。」
 今日、来年4月に開園する園の施設見学会がありました。まだ、家具などはそろっていませんが、とりあえず建物ができたので、入園希望の保護者と、今の仮園舎で保育をしている公立の職員に対して見学説明会をしたのです。まだ何もない環境の中で、こう説明をしました。それは、今の園を作ったときのコンセプトでもあります。「建物とか、壁とかを“ハード”といいます。それに対して、内容を“ソフト”といいます。建物をハードというのは動かないものだからです。その動かない空間にあわせて、保育内容を決めることになります。たとえば、教室という広さも形も変えられない空間に合わせてクラス集団の大きさを決め、教師が前にいて、一斉にその子どもたちに向かって、どんな内容のときも話をします。しかし、その子どもたちは生きています。生きて変化する人間を相手にしています。それを無理やりにある形に当てはめ、どんなときでも同じ集団で活動するのは無理があります。ですから、その生きている子どもたちや保育内容というソフトに対して、どれだけハードである空間を変化できるかが私たちの課題です。ですから、4月になって子どもたちが入園してから、その子どもをよく見て、地域を感じ、子どもたち個々の発達を理解し、その発達を援助するためには、助長するためにはどのような環境が必要であるかを考えたいと思います。ですから、今は、何もない空間のように見えますが、ここで子どもが活動し始めることによって、この空間も生きてくるのです。」また、壁というハードについては、こう考えています。「壁という動かないもので子どもを区切ることで、活動、音、視線をさえぎろうとします。しかし、子どもにとっての壁は、心の中に持つべきです。それは、規範であったり、決まりであったり、約束かもしれません。それらは、活動を制限するものではなく、お互いに共生し、より自由に活動するためのものであり、その自律していく力をつけていく環境を用意することで、その発達を支援することになるのです。」
重松清さんは最初に紹介した本の批評の中でこの本の内容をこう言っています。『この現場での実践は、「矯正」でも「治療」でもない「支援」で本質を示している。』

支援” への4件のコメント

  1. 私たち、子どもの力を引き出す役目を負った大人たちは、子どもそれ自体の本性に従った場合端的に「我々の言葉が大ざっぱだったり矛盾したりするのは、ある意味でしかたないんだよ。」と言うでしょう。なぜなら、こどもそれ自体、あるいは自らの中にある子供性に対峙するからです。そして、子どもが集う空間は、それを大人がこしらえたにせよ、結局のところ「子どもが活動し始めることによって、この空間も生きてくるのです。」ということになります。私たちは子どもを理解し、そしてその理解のもとに援助します。よって、私たちの子ども理解のベースは子どもそれ自体をそれとして捉えられるか否かに依ります。そして自らを子どもたちの発達を助長するための環境として客観化し同時に目の前にいる個別具体的な○○くんや△△ちゃんの先々を保障する主体としての自己認識が可能になる、そうした集団に私たちはなりたい。東京新宿に来年4月開園する保育園、本当に楽しみです。教条主義に陥らない、人と人との触れ合いが自然にできるミュージアムを創りあげていきたいと思います。

  2. いつも聞いていることですが、いつも新鮮な感じがします。ソフトにあわせてハードを変化させなければいけないことを再確認できました。新宿の保育園がどんな保育園になっていくか、とても楽しみです。
    『親と離れて「ひと」となる』の言葉からいろいろ考えさせられました。人を相手にすることの難しさを感じています。現状把握をきちんと行うところからもう一度はじめてみようと思っています。迷ったときは「答えは子どもに聞け」ですね。

  3. 子どもたちの姿を見て、ちょっと課題があるかなと思う場合、目が向くのはやはり環境のことです。もっとこうすればじっくり遊ぶことができるんじゃないか、関わりがうまれるんじゃないかと考えて、室内の環境や保育者としての関わり方という大人の環境は十分なのかを考えて、実践していかなければと思っています。目の前の子どもたちの姿に嘆くのではなく、その子どもたちを取り巻く環境はどうなのかということをまずしっかり考えられるようになることが大切なのかもしれません。うまくいかないこと、もどかしいこと、もっとこうならないかなという思いを、うまく実際の行動や変化という実践につなげていきたいなと思いました。行動を制限することではない、本当の目的を忘れない姿勢はまず大切にしなければいけませんね。

  4. ハード面は、「動かない」だけであって、決して「変えられない」ということではないということを深く認識しなくてはなりません。その柔軟性が、ソフト面でできることの幅を広げてくれるようにも感じます。そのような空間を保育室にも「フレキシブルゾーン」として用意してます。子どもの活動に合わせて柔軟に対応できるようなハード面を構築しなくてはいけないのですね。「理論通りに行かないことなんてしょっちゅうなんだ。」という言葉のように、人と関わる仕事の宿命とも言えるそのような機会であっても、こちらがいかに柔軟な対応をするかで、宿命が使命に変わったりもします。考え方次第で、本質すら変わるということを学びました。

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